カナダ・モントリオールで行われた世界フィギュアスケート選手権。
“りくりゅう”こと、三浦璃来&木原龍一組は銀メダルを獲得。
連覇を逃す形になった2人だが、困難を乗り越え、ここまであがってきた。

今季の“りくりゅう”は、木原の腰のケガで前半戦を欠場。
2月の四大陸選手権で復帰し、2位表彰台で世界選手権に乗り込んだ。
戦いを終えた後、2人に今シーズンを振り返ってもらうと、木原は「いつもは引っ張っているけど、今シーズンは助けてもらった」と支えてくれた三浦に感謝の言葉を述べた。
フリーは思い入れのあるプログラムに
ペアショートは「緊張していた」と振り返る2人。
鮮やかに技の数々を決めていき、難しい入りからのデススパイラルでは会場が沸いた。

演技直後にガッツポーズが飛び出したショートは、シーズンベストとなる73.53点をマークし、ショート2位スタートとなった。

フリーでは演目を北京五輪シーズンに使用した、思い入れのあるプログラム『Woman』に変更して勝負に出る。
最終滑走となった、“りくりゅう”に必要なのは、暫定トップのディアナ・ステラート デュデク&マキシム・デジャン組(カナダ)の得点を上回る148.03点以上だった。

そのフリーでは、演技冒頭から“りくりゅう”らしさ全開の滑りと技術で会場を包みこむ。
リフトは全て最高評価のレベル4を獲得した。

ミスはあったものの強い“りくりゅう”が帰ってきた瞬間だった。

フリーの得点は144.35点。
フリーではトップの得点を獲得したものの、逆転の連覇とはならなかったが、2人には会場から温かい拍手が送られた。
木原「ご心配をおかけしました」
だが表彰式直前、木原がメディカルトラブルで立ち上がれないほどの状態となり、表彰式を欠席した。

その2日後、元気な姿でインタビューに応じてくれた“りくりゅう”。
「もう回復しています。ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」と木原は自身の体調について触れた。

「運動誘発性のぜんそくだったと思います。試合後に咳が止まらなくなってしまい、そこから少し呼吸をするのが難しくなり、立てない状態になってしまいました。
以前からこういった症状が出ることはあったのですが、今回の試合は少し症状がひどく、ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。薬で今は楽になっています」

表彰式に出られなかった三浦と木原だが、男子フリー後に改めて表彰式が執り行われた。
苦難のシーズンでも自信に
2月に行われた四大陸選手権が138日ぶりの復帰となり、それから世界選手権の舞台に立ち、2位表彰台にのぼった2人。
この順位について2人は、今シーズンの大変さもありながら自信を持てて、満足できた結果だったと語る。

「今シーズンは龍一くんのケガがあり、難しいシーズンでした。四大陸選手権が終わってからの6週間、悔いのない練習を積み重ねてきた。6週間の練習でもここまで納得のいく演技ができるんだという、今後の自信につながりました」(三浦)
「僕のケガで迷惑をかけてしまって、なかなか練習時間が取れずに、“試合勘”もなかなか取り戻すことができずに苦労したシーズンでした。
四大陸からの6週間は、本当に悔いのない練習をやってきて、もちろんベストではありませんが、自分たちができる最高なものに近い演技ができたかなと思う。
やってきたことをしっかり出せていたという面では、満足しています」(木原)

2シーズンぶりの、北京五輪シーズンのフリーを披露した“りくりゅう”。
会場も盛り上がりを見せていたが、改めてこのプログラムの思いを聞くと、三浦は「自信を持てるものだった」と話す。
「オリンピックシーズンにすごく練習を重ねてきたプログラムでした。滑りやすいプログラムになっていますし、演技自体も、すごく自信を持っていたので、『あとはやるだけだ』って会話がありましたね、演技前」

そのフリーは今シーズンの世界最高得点だった。それでも木原は、悔しい気持ちもあるという。
「自分たちでは、『まだまだ、もっと出せたのに』という思いがあります。その悔しさの方が。終わってみれば確かにパーソナルベストでしたが、終わった直後はそれに気づいてなくて、『もっと出せたのに』という思いの方が強かった。
ただ、このプログラムは2年前の世界選手権であまりいい終わり方ができなかった。もう滑ることはないと思っていましたが、こうしてまた最後の最後、世界選手権でしっかりいい演技ができたので、よかったかなと思います」
三浦の「絶対、大丈夫」に感謝
続けて木原は、三浦への感謝を口にする。
「今シーズンは僕のケガで迷惑をかけてしまいました。
普段は僕の方が引っ張っているし、しっかりしている部分が多いんですけど、今シーズンは、璃来ちゃんに助けていただく機会が多かった。
ジャンプで僕が、自信がなくなってしまう時もあったんですけど、そういった時も『絶対、大丈夫』と、常にサポートしてくれたので、心から感謝しています」

すると、三浦も木原にかけたい言葉があったようで「龍一くんもすごく苦しい思いをしたと思いますが、にもかかわらず、今回のフリー前に私がすごく緊張していたんですけど、たくさん声をかけてくれてありがとうございました」とお礼をする。

その中で「積み重ねてきたものがあるから、それを信じれば大丈夫だよ」という木原からの言葉が印象に残っているという三浦。
普段の試合前とは違う三浦の緊張の高まりを感じ、何度もこの言葉を言っていたという木原は「5回くらい言っていて、3、4回くらいスーッと抜けていった」と笑った。

今シーズンは苦難のシーズンだったが、より信頼関係が増したという“りくりゅう”。
五輪まで2年、パワーアップした来季が楽しみだ。