カナダ・モントリオールで行われた世界フィギュアスケート選手権。

“りくりゅう”こと、三浦璃来&木原龍一組は銀メダルを獲得。

連覇を逃す形になった2人だが、困難を乗り越え、ここまであがってきた。

2024年の世界選手権で銀メダルを獲得した“りくりゅう”
2024年の世界選手権で銀メダルを獲得した“りくりゅう”
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今季の“りくりゅう”は、木原の腰のケガで前半戦を欠場。

2月の四大陸選手権で復帰し、2位表彰台で世界選手権に乗り込んだ。

戦いを終えた後、2人に今シーズンを振り返ってもらうと、木原は「いつもは引っ張っているけど、今シーズンは助けてもらった」と支えてくれた三浦に感謝の言葉を述べた。

フリーは思い入れのあるプログラムに

ペアショートは「緊張していた」と振り返る2人。

鮮やかに技の数々を決めていき、難しい入りからのデススパイラルでは会場が沸いた。

ショートで披露したデススパイラル(2024年世界選手権)
ショートで披露したデススパイラル(2024年世界選手権)

演技直後にガッツポーズが飛び出したショートは、シーズンベストとなる73.53点をマークし、ショート2位スタートとなった。

ショート演技後にはガッツポーズと笑顔も(2024年世界選手権)
ショート演技後にはガッツポーズと笑顔も(2024年世界選手権)

フリーでは演目を北京五輪シーズンに使用した、思い入れのあるプログラム『Woman』に変更して勝負に出る。

最終滑走となった、“りくりゅう”に必要なのは、暫定トップのディアナ・ステラート デュデク&マキシム・デジャン組(カナダ)の得点を上回る148.03点以上だった。

フリーは北京五輪シーズンのプログラムで(2024年世界選手権)
フリーは北京五輪シーズンのプログラムで(2024年世界選手権)

そのフリーでは、演技冒頭から“りくりゅう”らしさ全開の滑りと技術で会場を包みこむ。

リフトは全て最高評価のレベル4を獲得した。

フリー演技後に握手を交わす2人(2024年世界選手権)
フリー演技後に握手を交わす2人(2024年世界選手権)

ミスはあったものの強い“りくりゅう”が帰ってきた瞬間だった。

キスクラでは悔しさをにじませた
キスクラでは悔しさをにじませた

フリーの得点は144.35点。

フリーではトップの得点を獲得したものの、逆転の連覇とはならなかったが、2人には会場から温かい拍手が送られた。

木原「ご心配をおかけしました」

だが表彰式直前、木原がメディカルトラブルで立ち上がれないほどの状態となり、表彰式を欠席した。

“りくりゅう”不在となったペアの表彰式(2024年世界選手権)
“りくりゅう”不在となったペアの表彰式(2024年世界選手権)

その2日後、元気な姿でインタビューに応じてくれた“りくりゅう”。

「もう回復しています。ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」と木原は自身の体調について触れた。

一夜明けて、木原は「今は楽になりました」
一夜明けて、木原は「今は楽になりました」

「運動誘発性のぜんそくだったと思います。試合後に咳が止まらなくなってしまい、そこから少し呼吸をするのが難しくなり、立てない状態になってしまいました。

以前からこういった症状が出ることはあったのですが、今回の試合は少し症状がひどく、ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。薬で今は楽になっています」

男子フリー後に行われた“りくりゅう”表彰式、鍵山優真も一緒に
男子フリー後に行われた“りくりゅう”表彰式、鍵山優真も一緒に

表彰式に出られなかった三浦と木原だが、男子フリー後に改めて表彰式が執り行われた。

苦難のシーズンでも自信に

2月に行われた四大陸選手権が138日ぶりの復帰となり、それから世界選手権の舞台に立ち、2位表彰台にのぼった2人。

この順位について2人は、今シーズンの大変さもありながら自信を持てて、満足できた結果だったと語る。

銀メダルを掲げて笑顔を見せる“りくりゅう”
銀メダルを掲げて笑顔を見せる“りくりゅう”

「今シーズンは龍一くんのケガがあり、難しいシーズンでした。四大陸選手権が終わってからの6週間、悔いのない練習を積み重ねてきた。6週間の練習でもここまで納得のいく演技ができるんだという、今後の自信につながりました」(三浦)

「僕のケガで迷惑をかけてしまって、なかなか練習時間が取れずに、“試合勘”もなかなか取り戻すことができずに苦労したシーズンでした。

四大陸からの6週間は、本当に悔いのない練習をやってきて、もちろんベストではありませんが、自分たちができる最高なものに近い演技ができたかなと思う。

やってきたことをしっかり出せていたという面では、満足しています」(木原)

フリーのデススパイラル(2024年世界選手権)
フリーのデススパイラル(2024年世界選手権)

2シーズンぶりの、北京五輪シーズンのフリーを披露した“りくりゅう”。

会場も盛り上がりを見せていたが、改めてこのプログラムの思いを聞くと、三浦は「自信を持てるものだった」と話す。

「オリンピックシーズンにすごく練習を重ねてきたプログラムでした。滑りやすいプログラムになっていますし、演技自体も、すごく自信を持っていたので、『あとはやるだけだ』って会話がありましたね、演技前」

今シーズンの世界最高得点を出したフリー(2024年世界選手権)
今シーズンの世界最高得点を出したフリー(2024年世界選手権)

そのフリーは今シーズンの世界最高得点だった。それでも木原は、悔しい気持ちもあるという。

「自分たちでは、『まだまだ、もっと出せたのに』という思いがあります。その悔しさの方が。終わってみれば確かにパーソナルベストでしたが、終わった直後はそれに気づいてなくて、『もっと出せたのに』という思いの方が強かった。

ただ、このプログラムは2年前の世界選手権であまりいい終わり方ができなかった。もう滑ることはないと思っていましたが、こうしてまた最後の最後、世界選手権でしっかりいい演技ができたので、よかったかなと思います」

三浦の「絶対、大丈夫」に感謝

続けて木原は、三浦への感謝を口にする。

「今シーズンは僕のケガで迷惑をかけてしまいました。

普段は僕の方が引っ張っているし、しっかりしている部分が多いんですけど、今シーズンは、璃来ちゃんに助けていただく機会が多かった。

ジャンプで僕が、自信がなくなってしまう時もあったんですけど、そういった時も『絶対、大丈夫』と、常にサポートしてくれたので、心から感謝しています」

一夜明けて、互いに感謝の言葉を口にした“りくりゅう”
一夜明けて、互いに感謝の言葉を口にした“りくりゅう”

すると、三浦も木原にかけたい言葉があったようで「龍一くんもすごく苦しい思いをしたと思いますが、にもかかわらず、今回のフリー前に私がすごく緊張していたんですけど、たくさん声をかけてくれてありがとうございました」とお礼をする。

フリー前に三浦に声をかけ続けたという木原
フリー前に三浦に声をかけ続けたという木原

その中で「積み重ねてきたものがあるから、それを信じれば大丈夫だよ」という木原からの言葉が印象に残っているという三浦。

普段の試合前とは違う三浦の緊張の高まりを感じ、何度もこの言葉を言っていたという木原は「5回くらい言っていて、3、4回くらいスーッと抜けていった」と笑った。

ショート演技後に満面の笑みを見せる“りくりゅう”
ショート演技後に満面の笑みを見せる“りくりゅう”

今シーズンは苦難のシーズンだったが、より信頼関係が増したという“りくりゅう”。

五輪まで2年、パワーアップした来季が楽しみだ。

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班