カナダ・モントリオールで行われた世界フィギュアスケート選手権が閉幕した。

異例の代表選出を経て出場したアイスダンスの“チームココ”こと、小松原美里・尊組は総合18位でシーズン最終戦を終えた。

世界選手権を18位で終えた小松原美里・尊組(2024年世界選手権)
世界選手権を18位で終えた小松原美里・尊組(2024年世界選手権)
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一夜明けて2人に話を聞くと、若手の台頭によって悔しさを味わったり、刺激を受けたりしたシーズンでもあったと振り返る。

来季に向けては、まずはしっかりと休んで、考えていきたいと語った。

フリーダンスではじけた笑顔

年末の全日本選手権では、異例の世界選手権代表“保留”となったアイスダンス。

3組による代表争いは四大陸選手権まで持ち込み、ベテランの小松原組が代表権を勝ち取った。

今回の世界選手権の舞台は、2人の拠点であるカナダ・モントリオール。

2020年、モントリオールで行われるはずだった世界選手権は新型コロナウイルスの影響で中止となった。

4年越しの思いを抱き、“地元”開催で胸を躍らす小松原組。

世界選手権を観戦した田村篤彦、岸本彩良、西山真瑚
世界選手権を観戦した田村篤彦、岸本彩良、西山真瑚

世界ジュニアに出場し、同じ拠点で練習をする、“さらあつ”こと岸本彩良&田村篤彦組も会場に駆けつけた。

最後の1組に食い込んだリズムダンス(2024年世界選手権)
最後の1組に食い込んだリズムダンス(2024年世界選手権)

リズムダンス『ゴーストバスターズ』では「磨いてきたスケーティングが良かった」と振り返るも、ツイズルでのミスが響き20位。

最後の1組に食い込む形で、フリーダンスに出場した。

演技後、「後輩たちにもっとかっこいい姿をみせたかった」と、小松原組は悔しさをにじませた。

会場を魅了したフリーダンス(2024年世界選手権)
会場を魅了したフリーダンス(2024年世界選手権)

フリーダンスでは、リズムダンスでミスのあったツイズルを息ぴったりで合わせる。

アイスダンス特有の2人で行うスピンやステップで会場を魅了すると、感情を揺さぶる表現からのリフトでは会場を大いに沸かした。

リフトでは会場を沸かした(2024年世界選手権)
リフトでは会場を沸かした(2024年世界選手権)

「今シーズン、一番いいフリーダンスを滑ることができたと思う」と、演技直後には氷上でハイタッチを見せるなど、笑顔がはじけた。

演技後、笑顔でハイタッチする小松原組(2024年世界選手権)
演技後、笑顔でハイタッチする小松原組(2024年世界選手権)

小松原組はノーミスで順位をあげ、全体18位で世界選手権を終えた。

“チームココ”の色を出すことが目標だった

試合を終えた2人は世界選手権をこう振り返る。

「この温かい会場で、モントリオールで一緒に練習している子や、家族も見に来ました。先生たち、ファンの方々からとてもいい力をもらいました。本当に楽しかったです。

今シーズンのパーソナルベストが出ませんでしたが、昨日(フリーダンス)は1番ベストな演技だと思っています」(尊)

「自分の狙っていた順位は、もっと上にと思っていました。過去の世界選手権で、ミスをしないで完璧な演技でフリー通過ギリギリだったところが、ミスをしても、今までで1番いい順位というのは、ちょっとつらい形ですが、成長や評価が上がったんだなと実感を得られました」(美里)

一夜明けて心境を語る小松原美里・尊組
一夜明けて心境を語る小松原美里・尊組

今シーズンは2人にとっても、アイスダンス界にとっても、大きな“変化”があった。

“かなだい”こと村元哉中&高橋大輔組が5月に引退。

“かなだい”の遺産ともいわれる新カップルが登場し、ベテランの小松原組との熾烈な代表レースが繰り広げられた。

シーズン前に曲を選ぶときにも若手の台頭について考えたり、尊いわく「チームココの色を出す」という目標を掲げることにつながったという。

まずは休んで来季を考える

「オフシーズンに、曲を選ぶ時点で“若いスケーターたちが大会に出てくる”と聞いていたので、どうやって自分たちの良さや違いを見せられるのかを、ローマン先生としっかり話し合って、曲決めから挑んでいました。

曲選びの時は、自分自身ではよくわかってなかったんですけど、シーズン終わってみると、フリーダンスは、自分たちの得意とするドラマ的な演技だけど、4年前よりは大人らしい、という、すごく素敵なことを外から見つけていただいたなと思います」(美里)

大人らしさを出す曲を選んだというフリー(2024年世界選手権)
大人らしさを出す曲を選んだというフリー(2024年世界選手権)

若いカップルに刺激を受けているという小松原組。フリー後に後輩に声をかけられて、うれしかったと美里は話す。

「リズムダンスの終わった時に『後輩が見に来てくれているので、いいところを見せたいです。フリーでは見せたい』と言いました。

で、昨日のフリー終わってからお会いすることができて。『かっこよかったですよ!』と言ってくれて『ああ、よかった』って(笑)。

世界選手権に出られるのも、まだ1組しかないので、自分の仕事をしたいというプレッシャーに勝てたかな」

フリー演技後、笑顔でインタビューに応じてくれた
フリー演技後、笑顔でインタビューに応じてくれた

シーズン最終戦を終えて、まずは「お疲れ、と言って休憩する」という2人。

来季、そして来たるミラノ・コルティナ五輪に向けての思いもあるという。

「前回オリンピックが終わった後に、『行けなかったとしても続けたい。ミラノまで』と思って毎年頑張っています。

ただ、最近はちょっと体も痛かったり、若手が出てきてへこんだこともあり、かなりしんどい。

今になって、大ちゃん(高橋大輔)が『毎年毎年、1年ずつ頑張る』と言っていたことが本当に理解できるようになっています。しっかり休憩して、一度考えたい」(美里)

「自分の心の中でその夢は、まだあります。美里も言いましたけど、1年1年やってきて、もう32歳になりました。ちゃんと考えないといい作戦ができないから、まずは一緒に休憩してから、考えていきたい」

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班