「物価目標の実現への総仕上げを果たすべく全力で取り組む」
日銀の黒田総裁は、再任を受けての4月9日の会見でこう強調した。

長期戦の覚悟で景気の好循環に挑む構えだが、「黒田日銀」2期目に、課題は重くのしかかる。

「異次元緩和」「マイナス金利」 そして「長短金利操作」へ

1期目の就任直後、黒田総裁が、2年で2%のインフレを実現するとして、「異次元緩和」と銘打ち、大量の資金供給に乗り出したのがちょうど5年前の2013年4月だ。

円安効果から企業収益は向上し、株高を実現して景気を下支えする効果はあったが、物価上昇予想を高めて、期待インフレ率を引き上げ、デフレ心理の転換を図ろうとした当初の見立ては、不首尾に終わった。

国債買い入れの増額など追加緩和に動いたものの、限界を指摘する声も強く、2016年2月には、マイナス金利政策を導入し、その後、金融緩和の軸足を「お金の量」から「金利」へと移した。

現在、長期金利(10年物国債利回り)を0%程度、短期金利(日銀当座預金の一部金利)をマイナス0.1%に誘導して、長短金利を低位安定させる政策を続けている。

遠い物価目標2% 強まる「財政ファイナンス」の構図

この間、2%目標の達成時期の先延ばしは実に6回に及んだが、実際の物価上昇の勢いは依然として鈍い。

直近の2018年2月の物価上昇率は、日銀が重視する、生鮮食品を除く数字で1%、エネルギーも除いた「実力」とされるベースでは、0.5%にとどまっている。

目標の2%がはるかに遠いなか、超低金利の継続による副作用の懸念は、強まりつつある。

金融機関が十分な金利収入を得られず、収益が悪化していけば、かえってお金を貸し出す機能が低下するほか、年金や保険などの資産運用でもマイナス面が大きい。

緩和効果が負のコストを上回る状況が継続する保証はない。

さらに、問題なのは、日銀による「財政ファイナンス」の様相が強まっていることだ。

大量の買い入れにより、日銀が保有する国債は、いまやおよそ450兆円に達し、発行残高の4割を超えるまでになった。

長期金利が0%程度に抑え込まれているおかげで、政府は低金利で国債を発行することができる。

政府による歳出拡大を、日銀が支える構図は色濃くなってきている。

施行から20年 「新日銀法」の柱は「独立性」

折しも、新日銀法が1998年4月に施行されてから、20年の節目を迎えた。新日銀法では、旧法での国家統制色の強い規定が廃され、日銀の中央銀行としての「独立性」が大きな柱として打ち出された。第3条にはこうある。「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は尊重されなければならない」日銀の政府からの「独立」を重んじたとされる一文だ。

政府・日銀は、2013年1月に、デフレの早期脱却実現に向けて、共同声明をとりまとめているが、この中では、「日銀は、物価安定の目標を2%とする」とうたう一方で、「政府は、日銀との連携強化にあたり、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進する」と明記されている。

日銀が金融緩和を推し進める前提として、政府に「財政運営に対する信認の確保」を求めたものだといえ、黒田総裁は、9日の会見で、共同声明には、「日銀と政府の役割がかなり詳細に記されている」との認識を示している。

「出口」へ向け金利政策の自由度を高められるか

2%の物価目標を掲げ続けるかどうかの議論は別として、いずれ、いまの大規模な金融緩和を縮小する「出口」戦略を、日銀が探らなくてはならない時期がやって来る。

日銀が、国債の大量購入などをやめ、緩和の手じまいへと進むには、「金利政策の自由度」が高められていることが前提となる。

そのためには、政府が、共同声明に沿った形で「持続的な財政構造」への取り組みを進め、日銀に頼って財政規律を緩める誘因を排除しておくことが不可欠だ。

「日銀は目標についても手段についても、独立性を維持している」と強調する黒田総裁だが、財政に従属しない形で「独立性」を確保していけるのか。

「黒田日銀」2期目は、政策運営の真価が一段と問われる5年間になる。