コロナ禍で66%超の病院が赤字に

新型コロナウイルスの影響で、病院経営が苦境に陥っている。
日本病院会などの3団体が行った「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査」によると、全国約1200の病院の4月の医業収入はマイナス10.5%(2019年4月比)。
全体の3分の2にあたる66.7%の病院は赤字で、特にコロナ患者を受け入れた病院は8割近く(78.2%)が赤字となった。
感染リスクを恐れて利用者が通院を控えたり、病院側も感染防止で入院患者を減らしたりしたことなどから経営が圧迫された形だ。

この記事の画像(5枚)

こうした状況を受けて、政府は第2次補正予算で、新型コロナウイルスの重点医療機関では入院患者がいない空床の状態でも収入を保障するほか、医療機関への無利子・無担保の融資制度の拡充、医療従事者に対する1人あたり最大20万円の慰労金の支給などといった支援を盛り込んだ。

銀行系リース会社など支援も「下半期は…」

また、銀行系リース会社が設ける専門の投資ファンドも病院経営を支えている。

三菱UFJリースは、日本政策投資銀行と2016年10月に国内最大規模の医療・介護特化型の投資ファンドを設立。
子会社のヘルスケアマネジメントパートナーズを通じて、総額250億円のファンドを運営し、返済の優先順位が低い「劣後ローン」の提供や不動産の買い取りなどで資金繰りを支援している。

三井住友ファイナンス&リースも、2019年7月に医療・介護専門のファンドを設立。
医療コンサルティングの日本経営グループや日本政策投資銀行と共同で、資金提供のみならず経営課題を支援する経営コンサルタント機能も提供している。

イメージ
イメージ

こうした行政や民間の支援もあり、帝国データバンクの調査によると、医療機関(病院、診療所、歯科医院)の倒産状況は、2020年上半期(1~6月)で12件と、倒産が相次ぐような事態には至っておらず、なにより新型コロナウイルス関連の倒産も確認されていないという。

(帝国データバンク調べ)
(帝国データバンク調べ)

こうした状況について、帝国データバンクは、
「医療機関は公共性が高いことから金融機関や行政からの支援体制も整っており、従前から倒産に至るケースは少ない」との見方を示す一方、下半期の倒産については
「一般企業の倒産増加率よりも緩やかな傾向ではあるが、増加する可能性が高い」と指摘している。

ついにコロナ関連倒産が…地域で医療崩壊も

この帝国データバンクの分析通り、下半期に入った7月27日、ついに医療機関として全国初となる新型コロナウイルス関連倒産が確認された。
1965年創業の岡山の診療所で、外来患者の減少により4月以降の収入が約20%ダウン(2019年同月比)し、経営が行き詰まった。
コロナ関連倒産は医療機関にも着実に忍び寄っている。

また、倒産までは至らなくても、適切な医療の実施という面での問題は大きい。
日本病院会などの3団体は、「病院への緊急的な助成がなければ、今後の新型コロナウイルス感染症への適切な対応は不可能となり、地域での医療崩壊が強く危惧される」とコメント、危機感を露わにしている。

新型コロナウイルスの克服には、持続的な医療提供体制の確保が必要不可欠となる。
経営状況の悪化による医療現場の負担を軽減するためにも、さらなる官民をあげた支援が求められる。

(フジテレビ報道局経済部 土門健太郎記者)

土門 健太郎
土門 健太郎

フジテレビ報道局経済部 記者