緊張や葛藤がなくなり“当たり前”に
ーー痴漢をする多くの方が「認知の歪み」を隠し持っていると本で書かれていました。具体的にはどんな歪みなんですか?
痴漢をし続けていると、痴漢をすることへの緊張とか葛藤とかがなくなり、やることが当たり前になってきます。また、行為中の高揚感、行為終了後の罪悪感も薄らいできます。ドーパミンに耐性が出来るイメージです。そうすると人によっては、痴漢をやって腕を掴まれて引きずり出されたときに、その瞬間はなんで引きずり出されたかわからない人もいるんです。毎日の当たり前の習慣になっているんで。

痴漢を繰り返す中で、女性専用車両に乗ってない人は痴漢していいと本気で思っていた人もいました。その人は、女性専用車両じゃない車両で痴漢をして、捕まった時に彼が思ったのは「え?なんで?」だったそうです。「女性専用車両に乗ってないじゃん」と。
治療を受けて「認知の歪み」に気がついた例としては、女子高生7〜8人が喋りながらスマホを皆見ていて、電車内に立っているという良くある風景の中で、ある痴漢常習者はジロジロと見ていたそうです。その見てる行為に女子高生が気がつき車両を変えたのを見て「俺がいやらしい目でジロジロ見ていたから車両を変えたんだ」と思ったそうなんです。それは間違ってないですよね。
でも1人だけ気づかずにずっとスマホを操作していた子がいて「あ、この子は痴漢されたいんだ」と思ったそうです。
こういう現実の歪んだ捉え方をしてしまっているんです。我々から聞くと馬鹿らしいと思ってしまいますが、彼が見ている現実はまさにそういう現実なんです。これはいわゆる普通のサラリーマンの方ですよ。
他にも多いのが、上司から叱責されたり、部下から爪弾きにされたり、グループから排除されたり、長時間労働もありますし、残業代が払われないとか、色んなストレスを電車の中で発散してしまう人です。仕事がらみの認知の歪みは、「今週も仕事を頑張ったから俺は痴漢をしてもいい」とか。仕事関連のストレスが引き金になっている例は結構あります。
お笑い芸人の『どぶろっく』がよくやっていた、「もしかしてだけど〜♪」というネタをちゃんと「認知の歪み」で検証すると、男の勘違いというふうに思われるのかもしれませんが、あれこそまさに痴漢の人が思っている認知と同様の、認知の枠組みなんです。
つまり痴漢をしてしまう人にとって、自分が痴漢行為を継続するために本人にとって都合のいい認知の枠組みが、「認知の歪み」なんです。

