3月18日、富山県内のほとんどの小学校で卒業式が行われた。多くの思い出を胸に卒業した児童たち。その中に、新型コロナに感染し、命を落とした男の子がいる。大切な仲間と一緒に、学び舎を巣立った。

コロナ陽性が判明した日に突然…

県内で約8000人の児童が学び舎を巣立った2024年の春。富山市の杉原小学校でも、49人の児童が卒業式に臨んだ。式では、クマのぬいぐるみと遺影が車いすに乗り参列していた。

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遺影に写るのは新木彩矢くん。1年半前、コロナに感染し、10歳で命を落とした。

小学1年生のとき、筋肉が壊れやすくなる難病「進行性筋ジストロフィー」と診断された彩矢くん。第7波が猛威をふるっていた2022年10月、コロナの陽性が判明した日の夜に、突然、亡くなった。

卒業式には、両親の姿もあった。父親の新木彰人さんは「うれしい反面、複雑な気持ちでもある。自分の息子がいない。悔しい。コロナが憎い…」と心境を語る。

彩矢くんにも卒業証書を授与

彩矢くんが亡くなってから1年半、同級生はどんな学校行事でも彩矢くんと一緒だった。

6年生48人が卒業証書を受け取ったあと、49人目の新木彩矢くんの名前が呼ばれた。卒業証書は、同級生が受け取った。

式では、卒業生から「10月、みんなの大切な仲間を失いました。けれど、心は49人でどんな行事も乗り越えてきました」と彩矢くんを思う門出の言葉が贈られた。

彩矢くんの母・新木幸枝さん:
学ランも着させてあげたかった。みんなと一緒に本人が出席する卒業式にしてあげたかった。親としては、彩矢の卒業証書をもらう務めは果たせた

彩矢くんの父・新木彰人さん:
きょうの卒業式を迎えて、僕が彩矢から卒業する、ひとつのけじめの日になった

「彩矢の分も幸せな人生を歩みたい」

卒業式の伴奏をやりたいと、ピアノを頑張っていた彩矢くん。5年生の夏ごろにピアノ教室の先生から楽譜をもらい、亡くなる1カ月前もピアノを練習していたという。

曲は「旅立ちの日に」。卒業式では、同じピアノ教室に通っていた同級生が伴奏した。母・幸枝さんは「彩矢も一緒に歌っているのだろうな」と思いをはせた。

彩矢くんの同級生:
彩矢と一緒に卒業式に出られてすごくうれしかった。彩矢の分もいろんな行事を楽しんで幸せな人生を歩みたい。将来の夢は警察官。彩矢が検察官になりたくて、私もそういう仕事になろうかなと思った

彩矢くんの卒業証書は両親に手渡された。

記念撮影をする同級生 ぬいぐるみの学生服は母・幸枝さんの手作りだという
記念撮影をする同級生 ぬいぐるみの学生服は母・幸枝さんの手作りだという

新木彩矢くん10歳。学び舎を巣立った。
新木彩矢くん、卒業おめでとう。

(富山テレビ)

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