2019年以降、フランスでは司法の場において付添犬の同伴が認められており、被害者の不安を和らげる役割を担っている。2023年までの5年間で13頭の付添犬が活躍し、1000人を超える被害者が利用。日本でも採用されているが、付添犬を含めた総合的な支援制度とその認知度向上などが今後の課題だという。

性的暴行被害者14歳のレアさん(仮名)の場合

事件捜査で行われる被害者への取り調べ。その不安を和らげる取り組みが広がっている。

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フランス・オルレアン大学医療センターで、捜査員が被害者のレアさん(仮名・14)に、「カメラとマイクで、会話は収録しています。あなたのことを知りたいから、好きなことを教えて」と話しかける。
それに対してレアさん(仮名)は、「動物が好き。前は犬を飼っていたんだけど、両親が離婚して、今はいないの」と返答する。

14歳のレアさん(仮名)は、性的暴行の被害を受けた。

病院で行われる聴取では、捜査員に当時の状況を事細かに話さなければいけない。隣の部屋では心理学者や医師たちが見守っているものの、取調室では、捜査員と2人きり。

極度の緊張がレアさんを襲う中、ぴったりと寄り添っているのは、5歳のゴールデンレトリバー・オルコだ。

フランスには、2019年以降、司法の場において、付添犬の同伴が認められていて、被害者の不安を和らげる役割を担っている。取り調べが終わってからも、レアさんはオルコのそばから離れなかった。

オルコはこの日、性的暴行や強盗などの被害を受けた3人の子どもたちに付き添った。

サラさん(仮名)は、「聴取中、オルコがおならしたの!緊張がほぐれたから心の支えになるわ」と話す。

2年の特別訓練で子犬250頭から付添犬は7頭

被害者とコミュニケーションをとるきっかけを作る付添犬は、捜査員にとって、重要な証言を引き出す、大きな助けとなっている。

捜査員は、「誰かに面と向かって話すのは彼女たちにとって、とても難しいことだ。もしオルコがいなければもっと大変だった」と振り返る。

当時のことを話すのは、被害の追体験に繋がる。子どもたちは、捜査員ではなく、オルコに話しかけるのだそうだ。

付添犬になるには、2年にわたる特別な訓練が施される。
訪ねたのは、フランス・クナイム市にあるアンディ・シアンという、障害のある人を手助けする介助犬や、司法の場で被害者に寄り添う付添犬などを育成し、貸与する協会だ。

この日は、デビューを前にした4頭の付添犬が訓練に臨んでいた。

アンディ・シアンの訓練の講師は、「5歳の子どもが横に座っている時にタンデム(付添犬)が立ち上がると、驚かせてしまうかもしれません。なので、犬がすぐに(ソファから)下りるのが大事です」と話す。

司法の付添犬は、50を超えるコマンドをマスターしていて、数時間もの間、じっと動かずに留まることもできる。アンディ・シアンでは、毎年、250頭ほどの子犬が加わるが、2023年、司法の付添犬になったのは、わずか7頭だった。

アンディ・シアンの職員は、「(司法の付添犬は)特に共感力に優れた犬。感受性が高く、人・特に子どもに寄り添う性格を持つ。人が感情的な時に、自然に寄り添う能力を兼ね備えている」と指摘する。

人の感情に寄り添い、不安を和らげる犬たち。その活躍の場は、さらに広がりを見せている。

日本では2020年に初めて裁判所での証言に同伴

ここからは、取材をしたFNNパリ支局記者・森元愛がお伝えする。

付添犬の更なる広がりとは何なのだろうか。

事情聴取などの場面だけでなく、裁判所でも、付添犬が導入されている。
導入から2023年までの5年間で13頭の付添犬が活躍し、大人も含め、1000人を超える被害者が利用してきた。

ただ、「付添犬」を知らない、と言う人も多く、認知度の向上が課題だという。

付添犬は、ほかの国、そして日本でも広がるのだろうか。

既にアメリカで300頭以上が活躍しているほか、日本にも存在している。虐待や性暴力を受けた子どもを支援するNPO法人「子ども支援センターつなっぐ」が付添犬の普及に携わっていて、2020年に初めて、裁判所での証言に付添犬が同伴した。

これまでに、20頭の付添犬が活躍しているのだが、裁判所での証言への付添は3回、事情聴取などでは23回にとどまっている。

被害者や子どもたちにとって、被害を証言するということは、当時のことがよみがえるため、非常に勇気のいることだ。こうした被害者たちを精神的にサポートするために、付添犬を含めた、支援体制をしっかりと整え、周知していく必要がある。
(「イット!」 3月14日放送より)

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