アマゾンが「ふるさと納税」の仲介事業への参入を検討中だ。実現すれば、アマゾンの物流網を活用し、返礼品の配送効率の向上、自治体の負担軽減、返礼品の増量などメリットが見込まれる一方、ふるさと納税の趣旨から外れると、懸念も指摘されている。

「アマゾン」が参入を検討

「ふるさと納税」の仲介事業に、海外企業として初めてネット通販大手「アマゾン」が参入を検討している。

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実現した場合、利用者にどんなメリットがあるのか、詳しくみていく。

そもそも、アマゾンが参入を検討している、「ふるさと納税」の仲介事業は、専用のサイトを通じて「寄付の受け付け」や「返礼品の発送支援」をして自治体から手数料を受け取っている。

ただ、様々な仲介業者が競合しているため、激しい顧客の囲い込みが行われている。

老舗の「ふるさとチョイス」はサイト限定の返礼品が多いことで知られる。「ふるなび」は、最大30%相当の“ふるなびコイン”というものを還元。「さとふる」は、オリジナルの“大容量”の返礼品があるなど特徴をいかしてアピールしている。

他にも、「ヤフーのふるさと納税」や「楽天ふるさと納税」など独自のポイントを付与しているところもある。世はまさに「ふるさと納税戦国時代」となっている。そこに黒船のように、アマゾンがやってくるかもしれない。

では、「アマゾン」は、なぜいま参入を検討しているのだろうか。

「ふるさと納税ガイド」の飛田啓介編集長に聞いた。
「アマゾン」の狙いは「1兆円以上のふるさと納税市場」だという。2023年、全国の寄付額は1兆円を超え、今後も増える見通しだ。

日本のアマゾンユーザーの多さや、ふるさと納税の市場拡大の背景から、参入に乗り出したのではないかと予想される。

では、アマゾン参入でどう変わるのか。
まずは「みんな助かる巨大倉庫」。アマゾンは全国各地に巨大倉庫を持っている。たくさんの在庫を持ち、すぐに届けることが強みだ。

ふるさと納税は、返礼品がいつ届くのかなかなか把握しづらい部分があるが、「アマゾン」が参入したら、自治体から多くの返礼品を巨大倉庫に持っておき、「翌日配送」なんてサービスもあるかもしれない。
倉庫の利用は自治体側にも、“送る労力”も“配送料”も少なくて済むというメリットがありそうだ。

ネット上では批判の声も

そして、自治体の負担が減れば、「返礼品が増える」可能性がある。

例えば、東京に住む人が北海道の自治体に1万5000円寄付をして、返礼品が「鮭 3kg」だったとする。

この1万5000円には送料も含まれているが、先ほどの巨大倉庫を使って配送料が抑えられるとすると、その分、返礼品の量が増えるかもしれない。

「3kg」のはずの鮭が「3.5kg」になるなど配送料が減った分、ボリュームアップの可能性がある。

また、独自のお得サービス、「アマゾン」の「プライムセール」でもお得になるかもしれない、などが展開される可能性もあると飛田氏はいう。
ただ、一方で、ネット上では「税制上の事が外資系の企業に委ねられる心配」「ふるさと納税がネットショッピング感覚になりつつある」などの声もある。

ふるさと納税の本来の目的は、そもそも税収の少ない地域を助けるものだった。お得だけにとらわれず、本来の意味を考えることも大切だ。
(「イット!」 3月12日放送より)

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