3月8日は「国際女性デー」。愛媛・松山市でガーデンショップを経営する女性に密着した。子供と一緒に「ある大きな困難」に立ち向かった彼女が黄色いミモザに託す思いとは。

「胆道閉鎖症」の息子のドナーに

松山市内でガーデンショップを経営する村上真由さん(37)。

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オープンしてこの春で丸5年、従業員3人を抱える経営者としての顔を持ちながら、家庭では11歳の女の子の双子と9歳の男の子、3人の子供を育てるママでもある。

そんなパワフルな村上さんは、7年前にある大きな決断をした。当時1歳半の息子・永吉くんに自分の肝臓の一部を移植する「生体肝移植」をしたのだ。

永吉くんは生後2カ月で「胆道閉鎖症」が原因の脳出血を起こし、生死の境をさまよった。

村上真由さん:
状態がすごく悪くて、2~3日で山場という感じで、祈るばっかり。一命を取り留めて。その時「ご飯を食べることもできないかもしれない」「立つこともできないかもしれない」って言われてたんですよ。もうかなり、落ち込みました

「胆道閉鎖症」とは、肝臓と腸をつなぐ胆管が何らかの理由で詰まってしまう病気だ。腸に流れるはずの胆汁が肝臓に留まり続けることで肝機能の悪化を引き起こす。新生児期に1万人に1人の確率で発症し、脳出血など様々な合併症を引き起こす命に関わる難病だ。

身長が伸びない、体重が増えないなどの成長障害も出た。さらに、目が真っ黄色になる「黄疸」の症状も見られた。

手術したものの、劇的な改善は見られず、約1年、入退院を繰り返す中、「肝硬変」を発症。村上さんは自分が息子のドナーとなり、肝臓の一部を移植する「生体肝移植」を決心した。移植することは「あまり迷わなかった」という。

村上真由さん:
肝硬変って言われた時点でもう良くないし。もう息子が元気になるんやったら全然いい。もう何も思わなかったですね

術後、回復へ「普通の生活が一番幸せ」

東京の国立成育医療研究センターで行われた移植手術は8時間に及んだものの、無事に成功。手術翌日、車いすで永吉くんのもとへ駆けつけた。

村上真由さん:
ずっと旦那さんがついてくれていたんですけど、意識はあったけど無表情で、全く笑わなくて。私の顔を見たら息子が泣いたんですよ。ママってわかってくれてるっていう

永吉くんは術後、医療スタッフも驚くほどの回復ぶりを見せた。移植手術から7年、この春、小学4年生になる。小学校2年生から始めた空手は県大会で優勝するほどの腕前だ。

「なんかもう、何も求めなくていいかな。普通の生活が一番幸せ」と真由さんは笑顔で語る。

先の見えない闘病生活に移植手術。永吉君と乗り越えてきた日々の中で村上さんが強くした思い。それは「自分を好きでいられるように、毎日を大切に生きること」。

永吉君の看病の息抜きに訪れたガーデンショップに魅せられ、5年前には自分の店をオープン。何もないところから店を立ち上げ、今は装飾や植栽など、さまざまな仕事をしている。

村上真由さん:
普段は土掘ってます。自分のお店はすごく好き。接客も大好きだし、バタバタしながらもお客さんに会えるのはめっちゃ楽しみにしてます

黄色いミモザが空港を彩る

3月2日、早朝の松山空港に村上さんの姿があった。8日の「国際女性デー」をPRするための装飾を依頼されたのだ。

飾るのは、「国際女性デー」を象徴する「ミモザ」。伊予市の黄色い丘で育った「イヨミモザ」だ。空港利用者からも「華やかで明るくなる」と好評だ。

Xなどで「#国際女性デー」を見たことがあるという女性は「子供を産んだり、育てなきゃいけないというのがありつつも、仕事でバリバリ活躍できたらいいなと思う」と話した。

「自分を好きでいるために」

仕事をしていく中で、村上さんは「やはり、女性が働くというのはなかなか大変」だと感じたという。

子育てに家事、100%仕事に向き合えない時もある。向き合いたいが「今、絶対仕事したい」という時もある。その時に“周りの理解はすごく大事”だと村上さんは語る。

村上真由さん:
でもやっぱり少ないですよね。女性がトップでやってる人って私の知り合いにもあんまりいないし。だからそういう人たちがもっとこれからいっぱい出てきてほしいなって思います

村上さんは、自分らしく生きようとする人たちと自分自身へのエールを、黄色いミモザに託す。

村上真由さん:
いろんなことにこれからも挑戦して年を重ねるけど、40代になったら40代でできることをどんどんやっていきたい。常に家庭とのバランスも見ながらなんですけどね。自分が年をとりながらも仕事はすごく楽しいので、続けたい

“自分を好きでいたいから、毎日を頑張って生きる”
あなたはどんな自分を生きていたいだろうか。

(テレビ愛媛)

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