プロボクシングの兄弟世界チャンピオン、重岡優大と重岡銀次朗。世界タイトルの防衛戦を3月に控え、トレーニングは激しさを増している。

弟の重岡銀次朗(左)と兄の重岡優大(右)
弟の重岡銀次朗(左)と兄の重岡優大(右)
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頂点に立ってなお未知の強豪と戦い続けるそのわけとは。熊本が生んだ最強兄弟の飽くなき情熱に迫った。

「熊本が生んだ最強兄弟」重岡優大と重岡銀次朗

熊本市生まれ、開新高校卒業の重岡兄弟。兄・優大、そして弟の銀次朗。ともにインターハイで優勝し高校時代からその実力が高く評価されてきた。幾多の世界チャンピオンを生んだ東京の名門、ワタナベボクシングジムでその腕を磨いている。

優大選手は「観てるお客さんとか(ボクシングを)好きな人はみんな目が肥えてるんで、その人たちから見ても『成長してるな』ってところを見せないと。みんなに納得してもらえるボクサーじゃないとダメだと思うんで」と話す。

史上初、兄弟で同日同階級の世界王者に

2023年10月、東京で開かれた世界タイトルマッチ。銀次朗、優大ともにアグレッシブなファイトで相手を圧倒して勝利。同じ日に同じ階級で兄弟が世界のベルトを統一したのはプロボクシング史上初の快挙だ。

2人が戦うのはミニマム級。体重47.6キロ以下と男子の最軽量級だが、こだわるのは「倒すボクシング」。2人とも高いKO率を誇り、世界チャンピオンとなったいまも自身の理想形を追求し続ける。

IBF世界ミニマム級王者 重岡銀次朗選手:
「被弾というかパンチをもらうこともありますし、攻めきれない時もありますし」「仕留めきれるようなボクシングはまだ全然できてないです」

タイトルは渡さない 2人そろっての防衛戦へ

2月6日、試合まで2カ月を切ったこの日。所属する東京のワタナベボクシングジムで実戦形式のスパーリングに臨む2人。兄・優大は丁寧に相手との距離を測りつつ、的確なパンチを打ち込むタイミングを見極める。

弟・銀次朗は課題の「仕留める」ボクシングを追求。チャンスと見るや、パンチをまとめて畳みかける。2人とも10キロ近くの減量をしながらのハードなトレーニングだが、仕上がりには手ごたえを感じている。

WBC世界ミニマム級王者 重岡優大選手:
「だんだん形作っていくっていう感じですね。体重落として動きのキレも上がっていって、パンチ力も上がってプランも固まって。試合までの2カ月間の練習への向き合い方というか自分との向き合い方、取り組み方ですね」

試合まで約1カ月となった2月26日。重岡兄弟は熊本へと戻り熊本県庁を訪問。2人ともが大好きと語るくまモンとともに世界タイトルの防衛戦をPRした。

銀次朗選手は、「馬刺しをいっぱい食べるし、いきなり団子をめっちゃ食べますね。いまは食べられないですけど。減量中なんで食べられないんですけど、帰ってきたらいつもいきなり団子。いろんな方がくれるんですよ。一回僕が好きって言っちゃったら」と話していた。

兄弟の夢「日本のボクシング界を変える」

世界の頂点を極めてもなお戦い続ける2人。その裏には、いまのボクシング界を変えていきたいという思いがあるという。

優大選手は「時代は変わってきてるし、これから僕たちはボクシングでチャンピオンでありつづけると同時に子供たちに『ボクシングかっこいい』って夢見てもらわないとダメなんで」と話す。

プロボクサーが命を懸けてリングに上がり、手にするファイトマネーは新人の場合で約5万円。日本やアジアのチャンピオンクラスでも、普段は仕事をしながら競技に向き合っているのが現状だ。

WBC世界ミニマム級王者 重岡優大選手:
「現実的に世界チャンピオンにならないとボクシングだけで飯を食っていけないっていう状態だと思うんですよ。日本のボクシング界って。それじゃ寂しいし、これからのボクシングの世界チャンピオンに夢見る子たちのためにも、ボクシングで食っていける環境というかシステムの第一人者に僕たちがならないといけないし、なれると思うんで」

兄弟で勝ち続けて人気を得ることでチケット収入や有料放送の売り上げをアップさせ、ボクサーの地位向上へつなげるという使命感を抱く。重岡兄弟のW(ダブル)世界戦は3月31日に名古屋国際会議場でゴング。挑戦者はともにフィリピン出身の世界ランカーだ。

兄・優大は世界ランク6位のメルビン・ジェルサレムと。弟・銀次朗は世界9位のアルアル・アンダレスとベルトをかけて対戦する。試合はABEMA(アベマ)でネット配信され、兄弟の世界戦を含む興行の全試合が3150円で視聴できる。

「熊本で育って熊本でボクシング始めてみんなに応援してもらって今があるんで。そういう意味でこれからも(ふるさとに)元気を送り続けたいです」と話す銀次朗選手。そして兄・優大選手は「近い将来必ず、熊本で大きい大会、大きい試合をして、喜んでいただける日が来るといいなと思います」と語った。

優大と銀次朗、2人の夢。ふるさと熊本での世界戦実現に向け、兄弟は絶対に負けられない戦いの日々へ挑み続ける。

(テレビ熊本)

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