静岡県浜松市の女子高生が、少林寺拳法の世界大会でチャンピオンに輝いた。競技を始めてからわずか1年半での快挙だ。少林寺拳法を「いろいろな人に知ってほしい」と願う。少林寺拳法の何が彼女を魅了したのだろうか、そして なぜ短期間で世界一になれたのだろうか。
監督が認める気迫やスピード感

浜松市内の聖隷クリストファー高校2年生の松谷咲歩さん(17)。少林寺拳法部のキャプテンだ。2023年10月に東京で開かれた少林寺拳法世界大会で1位になった、いま注目の武道家だ。
「部の仲間や先輩方がすごく喜んでくれて、努力してきた分が報われたと感じた瞬間だった」
松谷さんは世界一に輝いた時のことを振り返る。

「少林寺」と聞くと、映画「少林サッカー」など中国武術を思い浮かべる方もいるかもしれないが、少林寺拳法は全く別物で日本発祥の武道だ。
松谷さんは3人兄弟の末っ子に生まれ、幼稚園の年長から空手を始めた。

高校に入学して少林寺拳法に出会うと わずか1年後の2023年3月の全国選抜大会で2位、さらに2年生で出場した2023年10月の世界大会では、女子の「単独演武」で1位(最優秀賞)に輝いた。競技歴わずか1年半の快挙だ。この世界大会には24カ国から約1500人が参加した。

創部30年の歴史で初の世界チャンピオン誕生に、師匠でもある太田司監督は「最初に入部してきた時から、『この子はちょっと動きが良いな』というのがあった。気合、気迫、冴え、スピード感も含めて、技の正確さがだんだんと良くなってきた」と素質や成長ぶりを認める。
得意は「単独演武」 難しさも

少林寺拳法の「組演武」は2人1組となって互いの攻防を披露するが、松谷さんが得意とするのは、1人で行う「単独演武」だ。

松谷さんが演じる「単独演武」の流れを説明してくれた。
相手につかまれた時に、相手に負けない態勢を作って倒す。そのあとに、相手の動けない位置に入って関節を固めて、もう一回蹴りを入れてから離れる。

蹴りの時には相手が横たわっているので、高く蹴りすぎると相手の頭がないところを蹴ってしまうことになる。そのため他の部員と確認しながら、蹴る位置を体に刷り込ませていく。
演武の相手がいない分、1つ1つの動きの意味や対峙した際のイメージを大切にして、反復練習を繰り返していく。彼女の強さは、地道な反復練習によって磨かれてきた。
武術と母から学んだ「思いやり」

道場では凛々しい顔つきの松谷さんも、家に帰れば普通の17歳の高校生に戻る。
ただ、少林寺拳法を始めキャプテンも任されたことで、家族はある変化を感じていた。
母・幸さんは、「普段の生活は変わらないけど、いろいろ気配りができるようになったと思う。何かをする時に準備段階から段取りを追ってできるようになったかな」と話す。

少林寺拳法では「思いやり」を養うことが大切とされている。
母・幸さんはママさんバレーのチームでキャプテンの経験があるだけに、松谷さんは母の背中からも学んでいた。
松谷さんは母親について、「周りに気を配るのがうまいので、そういう部分は真似している。『これこうなんだけど、どう思う?』と聞くことはあります。そういうところは頼りにしています」と、母に信頼を寄せる。
「力と愛の調和」の精神で
松谷さんの当面の目標は3月に行われる選抜大会の制覇だ。2年前の大会で2位だっただけにリベンジを誓う。そして3年生最後の大会での有終の美をめざす。

聖隷クリストファー高校 少林寺拳法部
松谷咲歩主将:
1年の時の選抜大会で惜しくも2位だったので、(2024年3月の)選抜大会は1位をとって、3年生の最後の大会となるインターハイでも1位をとって、友達や家族などいろいろな人に少林寺拳法を知ってもらえるようにがんばりたい

思いやりを育み、力を蓄えて。
松谷さんは少林寺拳法の教えでもある 力と愛の調和「力愛不二」の精神を心に刻み、これからも鍛錬を続ける。
(テレビ静岡)