2021年、福岡・宗像市の東海大学付属福岡高校で当時2年生の男子生徒、侑大さんが自殺した問題について学校が記者会見を開いた。「いじめは、あった」と認定されたものの、男子生徒の遺族は納得していない。

「いじめ」被害訴える遺書を残し…

2月20日に会見を開いた東海大学付属福岡高校。

会見で謝罪する東海大福岡高校・津山憲司校長
会見で謝罪する東海大福岡高校・津山憲司校長
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津山憲司校長は、「ご遺族をはじめ、関係各位の方々に深くおわび申し上げます」と深々と頭を下げ謝罪し、2021年3月に当時2年生の男子生徒の侑大さん(当時17)が「いじめ被害」を訴える遺書を残して自殺したことを明らかにした。

学校が設置した第三者委員会の調査報告書によると、侑大さんは、1年生の時に所属していた剣道部の部室で上級生数人から畳に粘着テープで貼り付けられ、下着を脱がされるなどの性的被害を受けていた。

さらにその様子を撮影した動画をSNSを通じてほかの生徒に拡散するなど、上級生達による10件の行為を「いじめ」と認定した。

第三者調査委員会 宇加治恭子委員長(2024年2月20日):
この生徒さんは、剣道は本当に大好きで、とても一生懸命取り組んでいたようなので、そういう状況で追い込まれていたというのは、きついところだったのでは…

侑大さんの母親から相談を受けた30代の剣道部顧問の対応にも問題があったとみられている。

顧問は学校へ報告せず 大量の課題も

第三者調査委員会 宇加治恭子委員長:
この話は、「剣道部内で収まる」という話になってしまいまして、学校にいじめの事実自体が上がっていなかった

侑大さんが自殺するまで、剣道部顧問はいじめについて学校側へ報告せず、侑大さんのテスト結果を勘違いして大量の課題を与えるなどしていたとされている。

その顧問について、津山憲司校長は会見で「現在も顧問として続けています。ただし指導方針は改善、強い圧をかけるような指導は一切しておらず、寄り添う、考えさせる指導に転換させています」と語った。

母親「いじめと言えないくらいひどい」

報告書は、いじめや学校側の対応などが自殺の一因になったとしたうえで、自殺の直接的な原因に関しては特定できないと結論付けている。
これに対して侑大さんの母親は、高校の会見の翌21日に会見を開き、「原因は特定できない」と結論付けた調査報告に対して再調査を訴えた。

侑大さんの母親(2024年2月21日):
侑大が死を選ばざるを得なかった原因について、明らかにしていただきたいと思っています。亡くなった後にひどい性被害が分かり、がく然としました。いじめ自体は、いじめと言えないくらいひどいものだと思っています。侑大がされたことについては、絶対許せない。何も知らなかった自分が辛いです

母親は、自ら命を絶った息子の侑大さんの写真と共に、言葉を震わせながら、無念の思いを絞り出していた。

侑大さんの母親:
侑大が抱えていた苦しみや悔しさに、正面から目を向けてくれないと残念に感じています。1年生の6月、学校から寮に戻らず突然、自宅に戻って来ました。侑大は「死のうと思ったけど死ねなかった」と泣き出し、「高校をやめたい」と言いました

その翌日、母親は侑大さんと2人で学校を訪れ、剣道部の男性顧問に「いじめ被害」を相談。その結果、剣道部の寮で生活していた侑大さんは寮を出て、自宅から学校に通いながら剣道部にとどまることになった。

しかし、それから1年半余り…。侑大さんは自ら命を絶ってしまったのだ。

侑大さんの母親は、「男性顧問がいじめを把握しながら侑大さんが亡くなるまで学校側に報告しなかったことは、どう受け止めている?」と問われ、「学校の中での共有があれば、変わっていたんじゃないか。私自身はいじめだけでなく、顧問、学校が原因だと思ってます」と語った。

県は約1年かけて再調査へ

遺族側は、「いじめ」に関する調査や自殺に与えた影響の考察などが不十分として、福岡県に再調査を依頼した。依頼を受けて再調査委員会は、「再調査の必要がある」と県に返答、県は再調査を決めた。
県は、認定済みのこと以外にもいじめがあったかなどを約1年かけて再調査する方針だ。

(テレビ西日本)

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