賑わいの創出や交流人口の増加に向けて、福島の「陸の玄関口」で進められているのが「駅前再開発」 過ごしやすい気候を売りに観光誘客に力を入れるいわき市。人口は県内最多、経済活動が活発な商業都市・郡山市。そして県庁所在地の福島市。それぞれが青写真を描き計画を進めるなか、社会情勢や生活環境に変化が起きている。この3市の現状を深掘りする。

福島市 規模縮小と遅れ

2月2日に福島市が示したのが、駅前再開発計画の規模縮小と遅れ。8日に初めて開かれたまちづくりに関する検討会で、大学教授や大学生など11人が市側と意見を交わした。

まちづくりに関する検討会 福島市民にとって大きな関心事に
まちづくりに関する検討会 福島市民にとって大きな関心事に
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「スピード感を持って進める」とした市に対して、県庁通商店街振興組合理事長・中野義久委員は「市場がないところに無理やり商業を作っても、人が来ると考える方が無理がある」、追分代表取締役会長・追分拓哉委員は「ダウンサイジング、非常にコンパクトにしていいのだが、コンパクトにしたおかげで、その特色性がなくなって、ある意味 魅力ないビルになるのは困ると」と委員が求めたのが「市民に寄り添った、行きたくなる場所」だった。

JR福島駅前の再開発 規模縮小と遅れ
JR福島駅前の再開発 規模縮小と遅れ

施設をどう使うかが大事

福島駅周辺まちづくり検討会の小林敬一委員長は「箱モノを作って、町がどうにかなるという時代ではないと思う。施設をどう使っていくのかが大事なわけだから、使いこなされる しかも波及効果を持っている、影響を及ぼしていくということが大事だと思う」と話した。
福島市では、2月17日に市民100人ほどとタウンミーティングを開き、広く意見を聞くことにしている。

小林敬一委員長「使いこなされ波及効果を持った施設を」
小林敬一委員長「使いこなされ波及効果を持った施設を」

福島市の計画見直し案

これまでは、官民一体でホテルやオフィス、テナントなどが入る12階建ての複合ビルを建設する予定だったが、大きく変更された。

これまでの計画 12階建ての複合ビル
これまでの計画 12階建ての複合ビル

一つは「建物自体を行政と民間で分けて建設する」という点。イベントを行えるホールまたはコンサートなどを行える舞台などが入る予定の行政棟の「建物の規模が縮小」 これは、膨れ上がった資材などの高騰による価格を抑える狙いがある。ただ、これから計画を再構築するためオープンは早くて3年後となる。
一方でテナントなどが入る商業棟は、入居はまだ1つも決まっておらず先行きが見えない状況。福島県のホテル稼働率は東北地方で最下位。商業面で「仙台以外は商圏にならない」というシビアな声もあがっている。スピード感と外さないコンセプト、この両輪が求められる。

官民を分け 建物規模も縮小 テナントも決まらず…
官民を分け 建物規模も縮小 テナントも決まらず…

郡山市 民間主導の再開発

郡山市は、事業所の数が福島県内で最も多く“経済県都”とも呼ばれる。その中心部の“街なか”に住む人を増やす動きが進められている。
2008年。丸井郡山店も閉店するなど、中心部の空洞化が進んだ郡山市。丸井の跡地には、新たなビルが整備されるなど民間主導で再開発が進められてきた。

JR郡山駅の目の前 2008年閉店の丸井跡地には新たなビルが整備
JR郡山駅の目の前 2008年閉店の丸井跡地には新たなビルが整備

事業継続と賑わい創出の両立

駅から200メートルほど離れた、旧寿泉堂綜合病院の跡地で進む再開発事業。クリニックやマンションが入る地上21階建ての複合施設を、98億円余りの費用をかけて建設している。

旧寿泉堂病院跡地にはクリニックやマンションが入る地上21階建ての複合施設を建設中
旧寿泉堂病院跡地にはクリニックやマンションが入る地上21階建ての複合施設を建設中

郡山駅前一丁目第二地区の田中豊事業部長は「長くこの地にお世話になっていたというところもあって、この地を離れるわけにはいかない。そこにプラスにぎわいを創出すると。ここにお住いの方々を迎えるマンションを併設することによって、事業の継続と街中のにぎわいの創出の両立をしようと」と話す。

郡山駅前一丁目第二地区・田中豊事業部長「事業継続とにぎわい創出の両立を」
郡山駅前一丁目第二地区・田中豊事業部長「事業継続とにぎわい創出の両立を」

行政もバックアップ

民間主導の再開発が進む背景にあるのは、福島県内で最も多くの事業所や従業員を抱え“経済県都”とも呼ばれる活発な経済活動。ただ、戦争や円安などの影響で資材の価格は当初から3割以上アップしていて、事業者の負担が増している。

経済県都・郡山市でも価格高騰の打撃を受ける
経済県都・郡山市でも価格高騰の打撃を受ける

そこで郡山市は、国の補助金を活用して事業者をバックアップし、駅前に住む人を増やしてにぎわいを生み出そうとしている。郡山市・都市構想部都市政策課の吉澤信之課長は「人が集まれるだけの素地がある。駅前広場も含めて使っていけるような検討ができないかと思っている」と話す。

郡山市は国の補助金を活用して事業者をバックアップ
郡山市は国の補助金を活用して事業者をバックアップ

暮らしやすく訪れやすい街に

郡山駅前の再開発は、ビルの整備だけではない。地域の団体や住民が中心になって、歩いて暮らせる街づくりに向けて、電動キックボードを使った実証実験などの計画を練っている。

ビル建設だけでなく暮らしやすいまちづくりも
ビル建設だけでなく暮らしやすいまちづくりも

駅周辺では古い建物が解体されて、駐車場が目立つようになっている。こうした土地の、より効果的な利用方法についても検討を進めて、住む人を増やすだけでなく、訪れる人も増やして街の活性化を図る計画だ。

駅周辺では古い建物が解体され駐車場に 訪れる人も増やす
駅周辺では古い建物が解体され駐車場に 訪れる人も増やす

いわき市 県内最大級タワマン

JRいわき駅の周辺で進む再開発。商業施設に加えて、21階建て・216部屋を備えた福島県内最大級のタワーマンションが建設される。資材の高騰や文化財の調査の影響で工期に遅れも出たが、2024年12月にも完成する見込み。

JRいわき駅周辺 県内最大級のタワマン建設
JRいわき駅周辺 県内最大級のタワマン建設

エキナカ商業施設も賑わい実感

2023年1月に再開発事業の第一弾としてオープンした、エスパルいわき。駅直結のホテルも開業し、中心部に賑わいを取り戻す一歩を踏み出した。オープンから1年、テナントは8店舗から15店舗に増えた。

エキナカの商業施設も一年で店舗数が増える
エキナカの商業施設も一年で店舗数が増える

出店する店舗からは「オープンしたての頃は客足もまばらで、落ち着いてしまう時もあった。徐々にエスパルとしての認知度も上がり、地元をはじめ、県外からの観光客、サラリーマンにも多くご来店いただいて賑わいを感じている」という声や「サッカーやコンサートを見に来る方々がいらっしゃって、活気のある一年だった」との声が聞かれた。

店舗も利用者の増加を実感
店舗も利用者の増加を実感

いわき市民からも期待の声

ただ、課題もある。仙台ターミナルビルいわき支店の武内裕文支店長は「若者がここに滞在して遊べる場というものを、もうちょっと増やしていかないといけないと感じている」と話す。

仙台ターミナルビルいわき支店・武内裕文支店長 若者がさらに集まるように
仙台ターミナルビルいわき支店・武内裕文支店長 若者がさらに集まるように

しかし「課題」があるということは、「改善する余地」があるということ。再開発が進んで、駅周辺が賑わうことが期待されている。地元の高校生は「来る人が増えて、もっと大きな建物どんどん作って、ゆくゆくは日本一大きな町にしていってほしい」と話す。仙台ターミナルビルの武内裕文支店長は「マンションができて、病院ができて、商店街の皆様とも一緒に、民間一緒になってやっていきたい」と話した。

様々な世代が集まる街に
様々な世代が集まる街に

福島県3市の特徴が、再開発にも表れているように感じる。福島市は、県庁や国の出先機関もある行政の街、人口が多く経済活動が活発な郡山市。観光や漁業が盛んないわき市…福島県は、他県と違って一つの市に集中するのではなく各地に核となる市がある。分散してしまう側面もあるが、地域の特徴を保ちつつ、一体となって前に進む必要がありそうだ。

(福島テレビ)

福島テレビ
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