さて、最近本を買っただろうか?いまや書籍の購入はネットが定番になっていて、全国ではこの10年で4千を超える書店が閉店しているが、福島県いわき市中心部で長年愛されてきた店舗も6月30日、あと数時間で閉店する店舗から伝える。
■いわきの老舗書店が6月30日閉店
いわき市出身の記者も学生時代に通っていたヤマニ書房本店。閉店まで約2時間、まだまだ店内には別れを惜しむたくさんの人が訪れている。
75年前にJRいわき駅前で創業したヤマニ書房は、1991年にこのビルが建ち、文化の発信拠点として街のシンボル的な存在を果たしてきた。6階建てのビルの3階までに専門書や参考書などが数多く取り揃えられていたが、ここ数年は規模を縮小し、1階のみで営業していた。記者も閉店の知らせを聞いて驚いたが、地元の皆さんも寂しさ、そして感謝の気持ちを寄せている。
■閉店を惜しむ市民
「来店が多いですね、そうなんですね。惜しむ声を頂いちゃって本当に有難いことに」とヤマニ書房本店の高橋宏行店長が電話越しに話す。
閉店の知らせを聞き、多くの常連客が訪れたいわき市平の「ヤマニ書房本店」。
来店客は「本との新しい出会いが拓けるって感じですかね。自分では興味なかったようなものも、実際手に取って見てみたら、面白いと思って買ってみたりとか、ありますよね」と話す。
また、「無くなっちゃうと聞いたので、今までお世話になりました。ラトブとかも行くので」と店員と話す人も。
店が紡いできた歴史は、来店者の青春の1ページでもある。
「2階で参考書とか漫画とか結構売っていたんですけど、その参考書、高校生の時とか、英語のとかを結構調べて見に来て、何がいいかなって睨めっこして買ってたのがすごい印象的だったので、それが一番思い出ですね」と閉店を惜しむ来店客。
■人生のオアシス
「お待たせしました~3月号でお間違いございませんか?」
近所に住む三浦貞典さんは、愛読している月刊誌から必要な専門書まで揃うこの店舗に大きな信頼を寄せていた。「まあね。高校生時代も半世紀以上も前からお世話になっていたので、こういう老舗みたいなところが無くなるって非常に寂しいですよね。高校時学校終わるとみんなと遊びに来たりとかね、1つのオアシス的な感じでしたよね。」と話す。
受験勉強に疲れた時も、仕事でくたくたになった時も、いつもそこに当たり前に寄り添ってくれた人生のオアシスだ。「昔のことは思い出されますよね。何の違和感もなく、ここに通えたのでありがたかったですね」と三浦さんはしみじみと振り返った。
■閉店の背景
ヤマニ書房専務の山田幸夫さんにお話を伺う。
◇別れを惜しむ声が多く聞かれたが、反響は?
「ここ最近の月末は、昔からお客さんや遠方からお客さんも見えた。これは改めて月並みなんですが、お客さんに愛されてやってきたことを実感している」
◇あらためて閉店に至った経緯・これからについて?
「売上げが1番大きい。近いところに同じくらいの規模でお店があるので、残ったテナントの2店舗に集中しようと数ヶ月前に決まった。通販とか、電子書籍の波やコロナ化を経て、高齢の方もネットでの買い物に慣れてしまったように感じる。元々文化の発信地という貢献できる事業者を目指していたので、学童的なものをやって地域貢献できるようにしていく」
ヤマニ書房本店は、地域の皆さんにとって本との出会いの場になり、広い世界を教えてくれた場所でもある。今後もいわきの文化の中心となってくれることを期待したい。