ドライバー不足により懸念される「物流の2024年問題」の解決を目指して、愛媛・今治市の島でとれた魚を、ドローンを使って新鮮なまま、東京に輸送する実験が行われた。

2024年問題…漁師からも不安の声が

今治市沖の大島から来島海峡を越え1機のドローンが飛んできた。
届いたのは島でとれた新鮮な魚介類。このあとバスや飛行機を使って東京の飲食店まで、その日のうちに運ぶというプロジェクトの実証実験だ。

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このプロジェクトは伊予銀行や今治市などが国の補助金を活用して進めている。背景にあるのはトラックドライバーの人員不足や時間外規制の強化により懸念される「物流の2024年問題」だ。

島しょ部を多く抱える今治市にとっても、物流の停滞は地域の産業に直結する大きな課題だ。

今回、実験に協力した今治市宮窪町の漁師藤本純一さんも「前は都内だとヤマト運輸さんで翌日の14時から16時の間に届いていたのが、今は働き方改革で翌々日の午前中が最短になってしまった。そうすると、全然品物が変わってくるので」と不安を抱えている。

料理人が全幅の信頼を寄せる漁師

夜明け前の午前5時、港には藤本さんの姿があった。

全国の飲食店と契約し、直接出荷するスタイルの藤本さん。自ら漁でとった魚を「神経締め」して、この日の出荷に備える。

今治市宮窪町の漁師藤本純一さん:
昨日の朝、漁に出てとって一晩ここで休ませてそれから締めてます。こうやって落ち着かせて漁獲時に暴れたストレスを抜いてやることで、魚本来の味に戻してあげる。身のうまさや身の張りが変わってくる。今日のはタイが2枚とコウイカが3匹なので。

今回ドローンで運ぶのは天然のタイとコウイカ。約7.5kg。氷水で冷やし、十分に体温を下げたあと、丁寧に箱詰めしていく。

今治市宮窪町の漁師藤本純一さん:
(タイは)一つ1万8,000円。1箱全部で3万8,070円です。

実は、藤本さんは全国の有名シェフから注文が相次ぐ漁師。
価格はかなり高額だが、藤本さんが扱う魚介類に、全国のミシュラン掲載店などの料理人が全幅の信頼を置いている。

今治市宮窪町の漁師藤本純一さん:
今日の午後6時に無事にお客さんの元に届いて、お客さんにその価値が伝わればいいですね。

鮮度を保ったまま東京のすし店へ

午前7時すぎ、大島の道の駅で藤本さんの魚がドローンにセットされた。そして午前8時12分、いよいよドローンが飛び立った。

船に乗った関係者が見守る中、ドローンは海上を自動飛行。来島海峡を行き交う多くの船を邪魔しないよう時折、ホバリングしながら到着地点の今治港を目指す。

今治港では関係者がドローンの到着を待つ。
魚は今治港を午前8時28分に出発する松山行きの路線バスに載せる必要があるのだ。

大島を出発してから約10分、午前8時25分に到着。

荷物を抱えた操縦士がバスの停留所へ急ぐ。バスに積み込まれた魚は松山に向け出発。
松山空港で飛行機に積み替えられ、この日の午後、東京のすし店に無事届けられた。

伊予銀行 地域創生部・五十嵐修参与:
実際に飛行している姿をみて、物流でドローンを使っていくのは夢物語じゃない。今日は魚が入った箱、1個だけを片道で飛ばしてきましたけど、将来的には1日に何往復もさせて費用対効果が出せるんじゃないかと思っています。

「物流の2024年問題」の解決を目指して―。
ドローンを使った輸送は3年以内の実用化を目指している。

(テレビ愛媛)

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