子どもの命を守るために重要な「災害への備え」。3人の子どもを育てながら「防災士」としても地域のイベントで積極的に活動している母親は、「子どもの命を守り、子どもに防災への高い意識を持たせるのは親の責任」と語る。

家に「安全地帯」 きっかけは熊本地震

福岡市中央区で暮らすしらいえこさん。自宅を訪ねると、まずは息子が使っているという部屋を案内された。
たんすなどの大きな家具が全くない“子ども部屋”は、家族の中で「安全地帯」と呼ばれている。

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3児のママで防災士 しらいえこさん:
倒れてくる物がない、飛んでくる物がないという場所を畳一畳でも、ベッド1つ分でもいいから作ること。「安全地帯」になります。うちの家では緊急地震速報が鳴ったら、ダッシュでここに来るというのを教えています。家族みんながここに来る。ここにいたら飛んでくる物は何もない

4歳から10歳まで、3人の子育て真っ最中のしらいさんの自宅は、国が、今後30年以内に大地震が発生する確率が最も高い「Sランク」に位置づけている「警固断層」のすぐそばに位置している。

3児のママで防災士 しらいえこさん:
この部屋にたんすを置くのは本当に危険。地震で直後に亡くなっている人のほとんどが圧死といって、物が倒れてきてということで亡くなってる人がかなり多い

日頃から試食して非常食への抵抗感をなくす

しらいさんが「防災意識」を高めるきっかけになったのは、2016年の熊本地震だった。
当時、避難所には乳飲み子の姿も見られ、とても「人ごと」とは思えなかったという。

3児のママで防災士 しらいえこさん:
普段、完全母乳の方でもおっぱいが出なくなるというのを本当によく聞いた。母乳だからミルクは要らない、ということもない。両方を飲めた方が何かあった時に、その子にとってもいい

能登半島地震でも母乳に代わるミルクへのニーズは高く、江崎グリコは、被災地に常温で9カ月保存できる乳児用液体ミルク2万本を提供したという。

江崎グリコ 乳業事業部・横山桃子さん:
「災害弱者」である赤ちゃん、まさにミルクを飲んでいる乳児のみなさん、0歳児のみなさんに関しては、本当に命の危機かなと思っておりますので、できる限り支援をしていくというのが食品メーカーの務めだと思っております

しらいさんはその後、福岡県内の母親たちで作る「備災ママスターズ」のメンバーとなり、さらに防災士の資格も取得して、子どもの命を守るために必要な備えについて各地で講演をしてきた。

非常事態に備えるために、しらいさんが普段の生活の中に取り入れていることがある。
それは日々の食事の中で、「非常食」を少しずつ子どもたちに試食させて、非常食への抵抗感をなくすことだ。

3児のママで防災士 しらいえこさん:
(Q. 子どもはどんな非常事態でも、食べたくないものは食べない?)子どもは食べません。「おなかがすいたから食べる」は、(子どもには)ないです!

また、何らかの食物アレルギーを持っている子どもの親は、非常食についてより早めの準備が必要だという。

3児のママで防災士 しらいえこさん:
うちは一番上の子が、魚が食べられないので。ツナとかはストックしやすいし、おいしいし料理にも使えるから非常食としていいんですけど、うちは子どもがツナを食べられないので鶏肉です。チキンの水煮です

“お金をかけずに”防災グッズを

しらいさんはこのほかにも、5年間の長期保存ができる飲料水や、お湯でゆでることなく水に数時間浸すだけでもちもちになるパスタ。さらに子どもの小腹を満たし、しっかり糖分も補給できるようかんなど、30種類以上の非常食を常備している。
だが、これだけの食品を揃えるのに、実質的にほとんどお金はかかっていないという。

その理由について、しらいさんは「『ふるさと納税』で全部、防災グッズ買ってます」と語った。

3児のママで防災士 しらいえこさん:
「ふるさと納税」のサイトで防災って入れたら、かなり出てきます。だから充電池とかも買ったことあるし、おすすめです

ふるさと納税を活用すれば、ほとんどお金をかけずに防災グッズが揃えられる。
まず、簡易トイレ。非常事態に陥って精神的に余裕のない状態で、初めて簡易トイレを使うのは抵抗を感じるかもしれないが、しらいさんはキャンプなどで一度、使ってみることを薦めている。
そして、保存水のほか、テントや発電機などがある。

3児のママで防災士 しらいえこさん:
日本は1日何十回も地震が起きるって言われてる地震大国なので、自分たちが感じないだけで、ずっと地震が起きている国で、それがボンってくるのはきょうかもしれないっていう気持ちを持って。お家の中の防災もそうですし、備えていただけたらなと思って、この活動をしています

防災士で3人の子どもを育てるしらいさんは、「子どもの命を守り、子どもに、防災への高い意識を持たせるのは親の責任」と力を込めて語った。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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