能登半島地震で、石川・輪島市の伝統工芸「輪島塗」の工房も甚大な被害を受けた。「億単位の損失」と職人が落胆する中、隣県福井では、同じ漆器の産地を助けようと、組合が職人家族の受け入れ準備を進めている。その背景には「20年前の恩返し」があった。

日本を代表する漆器「輪島塗」

福井・鯖江市にある1,500年続く越前漆器の歴史や技術を紹介する「うるしの里会館」の入り口には、被災地への義援金を呼び掛ける募金箱が置かれている。箱には「うるしの絆、がんばろう輪島!」のメッセージが記されている。

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募金を呼び掛けるのは、越前漆器協同組合の土田直理事長だ。日本漆器協同組合連合会の理事長も務めている。

日本漆器協同組合連合会・土田直理事長:
輪島の組合から「これから再建していくのは難しい…」と聞いた。そこで義援金の募集を始めた。

「輪島塗」は、職人たちが数百年受け継いできた日本を代表する漆器だ。絵柄を彫り込んだ溝に金箔(きんぱく)などを埋めて模様を描き出す「沈金」や、漆を何度も磨き上げ、鏡のような艶を出す「呂色(ろいろ)」など日本伝統の技が詰め込まれている。

多数の漆器が散乱…「残念の一言」

能登半島地震では、多くの輪島塗工房が壊滅的な被害を受けた。江戸時代後期、1813年創業の「輪島屋善仁」も作品の多くに被害が出た。

散乱した漆器
散乱した漆器

工房の川越康さんは「商品のおわんなんかも散乱している状態で…」と肩を落とした。散乱していたのは最終工程に入っていた漆器だという。

輪島塗「輪島屋善仁」・川越康さん:
これはおわんなんですけど、落ちて欠けちゃったり。(おわん)1客で20万円くらいすると思います。

10カ月かけて手がけた蒔絵(まきえ)の漆器は、一度壊れると絵柄を合わせることが困難で、復元が難しいという。この他、輪島塗の完成品や資材などを保管していた蔵も倒壊した。

倒壊した蔵
倒壊した蔵

輪島塗「輪島屋善仁」・川越康さん:
衝撃でした。痛恨の極みというか残念の一言ですね。被害額は、億はいっていると思います。

“20年前の恩返し”長期的な支援も

輪島塗の産地に壊滅的な被害が出ていることを受け、全国の漆器産地が支援に立ち上がった。福井の越前漆器協同組合・土田理事長は、輪島については特に強い思い入れがある。その背景には、20年前に福井を襲った豪雨の経験があった。

日本漆器協同組合連合会・土田直理事長:
水害の時は石川からもボランティアが来ていたと思うが、とても助かった。

2004年7月に起きた福井豪雨の様子
2004年7月に起きた福井豪雨の様子

2004年7月に福井北部に甚大な被害を及ぼした福井豪雨が発生し、越前漆器の産地、鯖江市河和田地区でも大規模な浸水被害を受けた。その復旧作業では、石川からも多くのボランティアが駆けつけた。

20年前の恩返しをしたいという土田理事長は、職人には家族経営が多く、仕事場を兼ねた住宅が被害を受けるという産地共通する実情も理解している。

能登半島地震 被災地
能登半島地震 被災地

職人は高齢化し、今回の地震で多くが廃業するのではないかという懸念もある。土田理事長は、数百年受け継がれてきた技術を絶やさないためにも、復興の見通しが立つまでの二次避難先として、福井で輪島塗の職人を受け入れたいと話す。

日本漆器協同組合連合会・土田直理事長:
越前漆器の産地にある空き家に一家で来てもらうなどして、輪島塗が途切れることなく、全国の産地が応援して復興してもらいたい。

越前漆器協同組合では、輪島塗の職人に工房の貸し出しや、必要な道具・材料の提供といった長期的な支援も考えている。

(福井テレビ)

福井テレビ
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