20歳の門出を迎えた東京大学野球部・酒井捷(さかい・すぐる)選手(2年生・仙台二高出身)。彼の夢、それは2025年のドラフト指名だ。実現すれば東大野球部では野手として初のプロ入りとなる。2023年シーズンでは、東京六大学野球でベストナインも獲得。「侍ジャパン大学日本代表候補」の合宿にも参加し実績を残した。前例なき挑戦へ 酒井選手が思い描く夢へのプロセスとは。

東大から6年ぶりベストナイン 侍J候補にも

 2023年は飛躍の一年だった。打撃センスの良さと50メートル6秒の俊足を持ち味に春には1軍昇格。「不動の一番」としてレギュラーに定着した。

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 さらに全国レベルの選手がひしめく「東京六大学野球」秋季リーグ戦で3割1分6厘の好打率をマーク。東京大学から6年ぶりとなるベストナインに選ばれた。

 また、大学2年生の外野手としては唯一「侍ジャパン大学代表候補選手」の合宿にも参加した。一方、“自身の現在地”も冷静に見極めている。

「ある程度、自分の野球の実力に自信がある部分もあったが、基礎的な肩や脚の強さが、全体的に見て野球選手としてはまだまだだと感じさせられた」                  酒井捷選手(合宿に参加して)

「野球エリートと戦いたい」東北屈指の進学校から現役合格

小学生時代の酒井さん
小学生時代の酒井さん

 仙台市出身の酒井選手。小学2年生の時、野球経験者の父親と3歳年上の兄の影響で地元の少年野球チームの門をたたいた。その後、寺岡中学校(仙台・泉区)、東北屈指の進学校・仙台二高でも野球部に入った。そして東京大学・文科2類に現役合格を果たした。

高校時代の酒井さん
高校時代の酒井さん

 「高校時代の野球の実力はあんまりだった」と話す酒井選手が、進学先に東大を選んだ理由は明快だ。

「一番は六大学野球に属しているというのが一番の理由で(六大学野球の中の東大は)仙台育英(宮城)とか東北高校(宮城)の間にちょっとだけ進学校が混ざっているみたいな感じで、自分はあまり高校(仙台二高)の時、野球の実力に関してはあれだったので、勉強で東大目指して六大学で野球のエリートと戦いたいなと思って」
酒井捷選手(東大への進学理由)

 東大野球部は、東京六大学の中で唯一、野球推薦がない。高校時代、甲子園に出場した強豪高の出身者から硬式野球未経験まで様々なメンバーがそろう。

 その中でチーム全員が「神宮での勝利」という一つの目標に向かっていける環境に、酒井選手は居心地の良さを感じている。だからこそ、多様性が生きるこの東大野球部で、勝利をつかみたいと強く思っている。

仲間認める“スター性”バッティングは“理論的”

 「侍ジャパン大学日本代表候補」の合宿に参加したあと、より力を入れるのはウエイトトレーニングだ。トレーナーも「跳躍力は断トツに高いが、左右差がある。左バッターというところに関わりがあるかもしれないが、右が使えていない」と指摘。右脚を重点的に鍛えている。

 ひとつひとつ課題を理論的に見極めて克服していく様子は受験勉強にも重なるように見える。チームメイトも「才能豊かで手本になるような存在」「ミート力が東大の水準ではなく、一人だけ六大学の水準に持っていけている」と、その姿に信頼をおいている様子だ。

「文武両道」学ぶのは経済学

 野球漬けの日々を送るが「東大生」の本分もおろそかにしていない。学ぶのは経済学だ。
「人の購買意欲を数式で表すことができる経済学は、勉強していて面白い」と楽しそうに話す。

 一方「野球のために勉強を頑張って東大に入ったからには卒業しないと」とも話し、文武両道に励む。そんな酒井選手にとって、多くの部員と暮らす寮での生活が一息つける時間だという。東大野球部は上下関係が無く「仲の良さ」が魅力だ。

藤田峻也主将(3年)
藤田峻也主将(3年)

「野球の時はすごく真面目でチームの雰囲気を良くしてくれているが、私生活はちゃらんぽらんで『先輩これ食いたいっすね』っておごってほしそうな目で見てくる。かわいい後輩」    藤田峻也主将(3年)

前例なき挑戦へ…2024年勝負の年始まる 

1月、仙台市の実家に帰省し、初詣に訪れた酒井選手。自身が抱く理想像ははっきりしている。

「イチローさんが一番の憧れ。何でもできるプレーヤーというのが、個人的に目指すところなのでそういった面ではイチローさんはそこに近い」
酒井捷選手(理想像は)

「宮城が好き」と話す酒井選手、地元への思いも語ってくれた。

「楽天イーグルスは初めて日本一になった時からずっと見ている印象の強い球団なので、希望はある。リーグ戦でベストナインをとって、もうワンランク上の選手になり、プロ入りに向けて近づけるよう頑張りたい」
酒井捷選手(地元への思い)

絵馬に込めた2つの願い。

『リーグ戦首位打者』『プロに注目される』

2024年、夢をかなえるための「勝負の1年」が始まった。

(仙台放送)

仙台放送
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