全日本バレーボール高等学校選手権「春の高校バレー」で、長崎県勢からは男子・大村工業が2023年に続きベスト16で試合を終えた。絶対的エースを擁する大村工業だったが、激戦続きの代償はチームに大きくのしかかっていた。大会の舞台裏に迫る。
3年の土井 世代別日本代表の経験も
2012年以来、3度目の選手権制覇を目指し長崎を出発した大村工業。1月2日に他校と練習試合を行い、仕上がりを確かめた。
この記事の画像(19枚)大村工業の土井優太選手は、高い打点から放つ、力強く、そして重いスパイクが武器の絶対的エース。世代別日本代表の経験もあり、バレー界の名門に久しぶりに現れた本格派のアタッカーだ。
大村工業 エース・土井優太選手:
インターハイ、国体と違って、自分が小さい頃から憧れていた舞台なので、誰もが憧れている舞台だと思う。絶対に日本一でいろんな方々に恩返しができるようやっていきたい
2023年度、2つの九州大会を制した大村工業は「日本一を狙える世代」とされながら、インターハイ・国体でトーナメント初戦負け…最後の春高に向け、3年間チームのエースとして引っ張ってきた土井選手に最後のボールを託す戦術へと変更した。
初戦(1回戦)の山形中央戦は、セッターの富永選手(3年)がアタッカーに満遍なくトスを上げ「全員バレー」を印象付けた。土井選手頼みを封印し、危なげなくストレート勝ち。すべては、翌日への布石だった。
土井の攻撃をすべて解禁
2回戦に待ち構えるのは、京都の名門・洛南(5年ぶり24回目)。2度の選手権日本一の経験がある優勝候補だ。
洛南・細田哲也監督:
大村工業はきちっとしたバレーをやってくるところなので、こっちのイケイケの雰囲気だけではうまくいかないと思う。ミスがなければ、いい結果はついてくると思う
2回戦は大会の大きな山場「名門対決」となった。セッターの富永選手は、初戦であまり使わなかった土井選手の攻撃を全て解禁。試合は中盤にかけ、エース同士が名勝負を演出した。
実況:
エース同士の打ち合い、ここは強烈なスパイクだ。洛南コートに叩き込みました。どうだ!とばかりに吠えた長崎の名門のエース土井優太!
実況:
バックで待っています、バックで待っていた中上!京都の名門、「NEXT 石川祐希」は俺だ!
1セットずつ取り合い、勝負の行方は第3セットへ。激闘の最後を決めたのは、大村工業エース土井選手だった。
大きなヤマを越え、選手はもちろん、監督からも感情があふれ出た。
大村工業・朝長孝介監督:
きょうの試合は、土井の成長を1番感じた。自分がなかなか成長させてあげることができずに、何度も失敗してばかりで。そこを子どもたちと一緒に1つクリアできた
大村工業 エース・土井優太選手:
相手の2年生エース中上烈くんが本当にすごくて、自分も3年生でエースをやらせてもらっている分、この戦いは負けられないと思った。エース勝負を挑んで勝ち切れたのはうれしい
3回戦 工大福井の2枚看板に苦しむ
ところが、フルセットの激闘の代償は決して小さくはなかった。
翌日、笑顔でアップを行う土井選手だが、右足の太ももにはテーピングが…肉離れを起こしていたのだ。
3回戦はインターハイベスト4の実力校、福井工大福井との一戦。前日と打って変わってピリッとしない展開が続く。
大村工業はエース土井選手の1枚看板なのに対し、福井工大福井は2枚看板のエースが強力なスパイクを放つ。
大村工業は第1セットを落としたあとの第2セット、土井選手は随所で踏ん張る。しかし、悪い流れを断ち切ることはできない。
最後は、目の前に落ちるボールに土井選手が反応できず…大村工業は2024年も、前回大会に続き、3回戦で姿を消した。
大村工業 エース・土井優太選手:
きのうの激闘で勝ったのはよかったが、かぶとの緒を締めきれずきょうの試合に臨んでしまったのが敗因だと思う。足が自分が思うような万全の状態で臨めず、足が限界で、とにかく自分が拾って打ちたかったけど、思いが届かなかった
監督が見た今後の課題
仲間や指揮官は、満身創痍(そうい)で戦ったエースに今後へのエールを送った。
大村工業 セッター・富永誠心選手(3年):
頼りになるエースというのはずっと自分の中で変わらないので、土井選手が今後オリンピックに出てくれれば自分も誇らしく思う
大村工業・朝長孝介監督:
今後に向けて言うと、184cmで小さくて、ジャンプはするがレシーブ力が必要。きょうも相手がディフェンスで下がっているところもあったので、前に落としたり、もう少し発想力を持って打てる決める、そういう選手になってほしい
名門を背負い、高校最後の大会で強烈な印象を残した大村工業のエースは、次のステップでの活躍を誓い、オレンジコートを去った。
(テレビ長崎)