2024年最初の「BSフジLIVEプライムニュース」には岸田文雄首相が生出演。能登半島地震への政府の対応、そして年末から続く政治とカネの問題など、重要なテーマに取り組む上での総理大臣としての覚悟を田﨑史郎氏とともに伺った。

能登半島地震の復旧・復興には1兆円規模を確保する考え

長野美郷キャスター:
令和6年能登半島地震は、震度4以上の地震が続き依然として予断を許さない状況。今いちばん苦慮している点は?

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岸田文雄 首相:
被災地が半島であり、陸上からの支援を考えた場合に南から押し上げていくしかない。その中で、断続的に大きな地震が続き道路が寸断されている。大変な努力で輸送路を確保しており、また海上輸送や空輸も総動員して物資を送らなければならない。この難しさは過去になかったものだと思う。一つ一つの避難所に丁寧に向き合うため、例えば1月3日から自衛隊の現地への動員を4600名に増やし、それぞれを小さなグループに分けて避難所を担当してもらい、ニーズを踏まえた上で物資を運んでもらうようにした。これは東日本大震災時に岩手県で評価された方式での対応だが、このように様々な工夫をしている。

反町理キャスター:
記者会見で、予備費の使用について話が出た。40億円規模の予備費が能登半島に投入されるという数字が出ているが。

岸田文雄 首相:
発災後のこの状況の中、プッシュ型で必要な物資を送り込む費用として予備費を確保したいということ。復旧・復興には、令和5年度の当初予算の予備費のうち残っている4600億円ほどをまず使う。これから審議をお願いする令和6年度の予算でも、5000億円の予備費をしっかり使うことを考えている。復旧・復興において、予算の制限で躊躇することは絶対にない。

長野美郷キャスター:
会見で出た言葉、被災自治体に派遣した「リエゾン」とは。

岸田文雄 首相:
先ほどの自衛隊の動員に加え、消防関係で全国から2000人、警察も800人以上の応援を集めている。それ以外に、石川県庁に中央省庁から幹部級の職員を送り込み、「ミニ霞が関」を県庁に作ってしまう。それを東京としっかり連絡させることで現地のニーズを把握し、判断も的確・迅速にできる体制を作ること。市や町に対しても出向などの経験を持つ人を優先的に送り込む。県や市町に対し、それぞれ必要とされるクラスの職員を送り込んでいるということを述べた。

反町理キャスター:
総理は「聞く耳」と言うが、被災地に行くことについてはどう考えるか。

岸田文雄 首相:
できるだけ早いタイミングで足を運びたい。現地は今大変な状況であり、現地の体制もしっかり確認した上で適切な時期を考えて行きたい。

自民党の「政治刷新本部」 最高顧問には元首相の麻生氏・菅氏

長野美郷キャスター:
自民党の派閥で起きている政治とカネの問題について。岸田総理の年頭会見では、政治刷新本部(仮称)を来週立ち上げ、1月中に中間取りまとめを行い自民党のガバナンスに反映させる。外部有識者の参加も得て透明性の高い形で検討していき、必要があれば関連法案を提出するということだが、このメンバーや規模感は。

岸田文雄 首相:
まず政治刷新本部については総裁直属の機関とし、本部長は私が務めることを考えている。それを党四役や参議院の幹部等にしっかり支えていただく。加えて、青年局や女性局を中心に事務局・事務総長以下の組織を作り幹部を支えてもらう。外部有識者にも議論に参加してもらい、より幅広い国民の声を吸い上げることを考えている。党の内外のさまざまな声を聞きながら方針を取りまとめる体制を考えている。

反町理キャスター:
フジテレビでは、最高顧問に菅義偉前総理の名前が出ていると報じた。

岸田文雄 首相:
はい。総理経験者である菅前総理と麻生太郎副総裁の2人には最高顧問をお願いしたいと思っている。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
岸田さんは「派閥」ではなく「政策集団」と言われる。政策を研鑽し若手を育成することが政策集団の狙いであると言われるが、その点は私たちの認識とちょっと違うのでは。派閥とはやはり、総裁選を戦うための権力闘争の集団だと思う。派閥そのものを否定されたりするのかという点、確認しておきたいが。

岸田文雄 首相:
派閥を政策集団と呼ぶ意味合いは何だったか、という原点に戻ることを考えなければいけないと私は思っている。派閥には政策集団としての役割があると思っているが、カネ集めとかポストを取るために集まっているのではないかと国民の皆さんに見られ、疑念を持たれている。このことは深刻に受け止めなければならない。

反町理キャスター:
例えば、ポストにつけることは政策の研鑽や育成でもある。政治にお金がかかる部分も一定程度否定はできない。選挙や勉強のため、講演会活動のためなどに使う場合など、全て否定するのかどうか。

岸田文雄 首相:
政策を磨き人材を育成するために何が必要なのかという議論は当然ある。だが、お金やポストが先に出てしまっては本末転倒ではないかと考えてみる必要がある。いろんな議論をしなければならないが、自民党として対応すべきことの一つが政治資金パーティーにおける透明化。この振込や監査の問題であり、そして政策集団のありようについての議論。一方、より法律的にも政治資金の透明度を上げるべきという議論もある。これは議員活動全体に関わる話であり、各党と議論しなければならない。これらを整理しながら議論することは大事だと思っている。

反町理キャスター:
岸田さんが総裁選に出たときに比べて発言に迫力がなく、守りに入っているような印象を僕は受ける。政治部記者的な下世話な話を言うと、派閥に支えられた総理だから派閥にメスを入れられないのでは、と思ってしまう。

岸田文雄 首相:
総裁選挙に出るときには私は候補者として発言しており、思いをしっかり申し上げた。今回はこれから本部を立ち上げて、私が本部長の役割を果たしたいと思っている。これから議論をお願いするわけで、ここではっきり「私はこう思います」と結論を全部言ってしまうわけにはいかないことはご理解いただきたい。ただ、問題意識はしっかり持っていると申し上げた上で、国民の皆さんから見て理解していただけるような議論を行い、結論を出していきたいという思いはしっかり主張したい。

「まずは政治の信頼回復」9月に迫る総裁選まで岸田首相はもつのか

長野美郷キャスター:
今後の主な政治日程。1月下旬には通常国会が召集され、3月には2024年度予算が成立予定。4月の衆議院補欠選挙の結果によってその後が左右される可能性がある。通常国会が会期末を迎え、7月には東京都知事選、9月には自民党総裁選。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
来週から再来週にかけて東京地検特捜部の捜査がかなり進むだろうと想定され、その結果が政局に大きな影響を与える。3月末までの来年度予算の成立、減税に関する所得税・住民税の法案成立までは岸田さんがやり遂げるだろうと思う。だが支持率が低迷を続ける中、総裁選にたどり着けるか。その後も続けるなら、4月以降に何をやるか明確にされた方がいい。

反町理キャスター:
今の話をどう聞くか。政権を取ったとき、デジタル田園都市構想や憲法改正、他の細かい政策を含めていろいろおっしゃっていた。

岸田文雄 首相:
2年間、新しい資本主義やデジタル田園都市構想の議論を進め、エネルギー政策の転換、様々な安全保障の改革、子供・子育て政策も行った。これらを形にする1年にしたいということは申し上げている。まずは政治の信頼回復に取り組み、その上で政策の成果を具体的な形にし、国民の皆さんに実感してもらう1年にしたい。

反町理キャスター:
総裁を続けることによって、まだ途中である政策の完成度が高まるという認識は当然お持ちですよね。そのために総裁を続けたいという気持ちも当然あるだろう、9月で辞めたいと思うわけがないと僕らは思うが。

岸田文雄 首相:
ただ、現状は大変厳しい目が注がれている。まずは全ての土台である政治に対する信頼の回復に努めたい。その上で、賃上げや新しい資本主義をはじめとする様々な政策を結果に繋げ、30年ぶりに日本の経済を好循環に持っていきたい。それをしっかりと示すことによってその先も考えることができるかもしれないが、今の時点においてはそれに尽きると思っている。

(「BSフジLIVEプライムニュース」1月4日放送)