被爆地ヒロシマに核保有国3カ国を含むG7の首脳らが集まった、2023年5月のサミットの成果と核廃絶への課題について、テレビ新広島の若木記者が、改めて岸田首相に聞いた。
スケジュールの最初に資料館で「被爆の実相」を知ってもらった
若木憲子記者:
サミットの主要日程を組むにあたって、原爆資料館の見学を1番最初の行事に組み込まれたのには、非常に首相の強い思いがあったと伺っています
岸田文雄首相:
ありのままの心で、実相に触れてもらった上で議論をしてもらう。やはり議論の中身にも、そして思いにも大きな意味があるのではないか、これが私の強い思いでありました
若木記者:
アメリカを始めとする核保有国の現職のリーダーたちに見てもらう上で、苦労された点などあれば教えていただけますか
岸田首相:
ありのままの心で被爆の実相に向き合ってもらう、そのためにどうしたらいいのか。色々と考えを巡らした点でありました。結果として訪問の内容とか、やり取りについては非公開ということにした
岸田首相:
しかしそのことによって静かな雰囲気で、各国のリーダーには、資料館の展示に向き合ってもらえることができたのではないか
カナダのトルドー首相は、公式日程とは別に、サミット閉幕後に再び原爆資料館を訪れていた。
カナダ イアン・マッケイ駐日大使:
どれだけスケジュールがいっぱいになっても、本人が行きたいと、はっきり言いましたので、私も一緒に行きましたが、非常に感情を揺さぶられる時間を過ごしたと思います
また、サミットで各国首脳やウクライナのゼレンスキー大統領に被爆証言をした小倉桂子さんはテレビ新広島の取材に、最終日に再びトルドー首相に原爆資料館に呼ばれ、同行した政府関係者に被爆証言をしたことを明らかにした。
岸田首相:
このことは、やはり被爆地ヒロシマが核兵器のない世界を発信する強い力を持っていることの証ではないか。サミットが終わった直後、会った際にトルドー首相には私から直接御礼を申し上げました
核抑止を肯定の「広島ビジョン」への批判に対して
若木記者:
サミットでは初の核軍縮に特化した文書「広島ビジョン」が発出されました。核抑止を事実上肯定するという点で被爆地からは落胆の声も聞かれたが、この点について、どのような議論があって盛り込まれたのか、また、首相自身の見解もお聞かせください
岸田首相:
日本周辺において、核や弾道ミサイルの開発が続けられている。こういった厳しい現実の中で国民の命、暮らしを守ることは、政治にとって最も重要であると思っています
岸田首相:
今、厳しい現実の前にありますが、未来に向けて核兵器のない世界という理想、これを決してあきらめることなく努力を続けていきたい
G7広島サミットの成果について、国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソンさんは、テレビ新広島の番組で次のようにコメントしている。
国際ジャーナリスト モーリー・ロバートソンさん:
これまでずっと声を出し続けてきた被爆者の努力は決して無駄にはなってないということを実感した。なぜならば、アメリカの現職大統領が被爆者と向き合う原爆資料館に長い間滞在するというのは、非常に大きな政治的なリスクを伴う。つまり、バイデン大統領としても、後で国内で批判されるということを覚悟しての賭けに出たわけだ。加害国であるアメリカの大統領が認めたというのは大きな前進だったと思う
モーリー・ロバートソンさん:
核軍縮、核廃絶に向けたこの動きというのは、根気よくやっていく必要がある。主役になるのは最終的には広島の皆さんではないか。先進国、民主主義の国から一人でも多くの人が広島を訪れ、原爆の実相に触れ、その気持ち、印象やものの見方が変わったという体験を持ち帰ること。そして、これが最終的に選挙などに反映され、将来の軍人、将来のリーダー、政治家、そういう人たちが、若い間に広島を訪れたという事実を重ねていくことがとても重要だ
(テレビ新広島)