佳子さまは29歳の誕生日を迎えられた。

赤坂御用地にて 宮内庁提供
赤坂御用地にて 宮内庁提供
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コロナ禍を経て外国訪問が再開したほか、姉の小室眞子さんから引き継いだ行事に加え、佳子さまの強い思いをきっかけとした新たな行事への出席も増えた。

活動の幅を広げられた1年を印象的なおことばと共に振り返る。

「誰もがより幅広い選択肢を持てる社会になることを」

2023年10月、佳子さまはガールスカウトの行事に出席し、「今後、ジェンダー平等が達成されて、誰もが安心して暮らせる社会になることを、誰もがより幅広い選択肢を持てる社会になることを、そしてこれらがあたりまえの社会になることを心から願っております」と述べられた。

ガールズメッセ2023に出席された 2023年10月
ガールズメッセ2023に出席された 2023年10月

2020年以降、様々な行事で繰り返し語ってきたこの言葉に、さらにこう付け加えられた。

「社会の中では、大人から子どもへ、無意識なものも含め、かたよった思い込みが伝わっていることが多々あると感じます」

「偏見が作り出す社会の雰囲気」

9月には、東北大学が初めて女子大学生の入学を認めてから110年となることを記念した「女子大生誕生110周年」の式典に出席された。

東北大学“女子大学生誕生110周年”式典にご出席 2023年10月
東北大学“女子大学生誕生110周年”式典にご出席 2023年10月

佳子さまは、日本の大学の理工系分野で女性の占める割合が各国と比べて低いことなどを例に挙げながら「偏見が作り出す社会の雰囲気や圧力は、あらゆる状況で数多く存在します。理系に関するものや、女性に対するものだけではありません。そして、そうした雰囲気や圧力が、社会が個人の可能性や選択肢を制限したり、個人が自分自身の可能性や選択肢を制限したりすることにもつながっていると感じます」と述べられた。

東京ドームで女子高校野球選抜大会の決勝戦を観戦された 2023年4月
東京ドームで女子高校野球選抜大会の決勝戦を観戦された 2023年4月

また、4月には東京ドームで女子高校野球選抜大会の決勝戦を観戦された。女子の硬式野球の観戦は皇室で初めて。男子に比べてまだ環境が整っていない中、硬式野球に打ち込む女子選手は近年増えている。全日本女子野球連盟には、そうした若い女子選手たちの笑顔のプレーを佳子さまにご覧いただきたい、という思いがあったという。

「隔たり無くテニスを」

「幅広い選択肢」を願う思いはジェンダーに限られない。眞子さんから名誉総裁を引き継いだ日本テニス協会の式典では、高価なラケットを買わずにテニスを楽しむ方法に触れ「すべての人が、様々な制約を超えて、あらゆる方法で、隔たりなくテニスを楽しめるよう」と述べられた。

日本テニス協会名誉総裁として 2023年1月
日本テニス協会名誉総裁として 2023年1月

児童文学の表彰式では、経済状況や障害によって読書に困難を感じる人が読書を楽しめるようにするための取り組みにも言及された。

「全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」声を出さず手話だけでスピーチされた 2023年8月 
「全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」声を出さず手話だけでスピーチされた 2023年8月 

さらに、以前から出席を重ねる「全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」では、声を交えず手話のみで挨拶される場面もあった。佳子さまはこれまで、こうした式典では手話と声を同時に使って挨拶していたが、文法や表現が異なる手話言語と音声言語を同時に用いる難しさに加え、手話を知らない人に「手話は声と同時に使う」という印象を持たせないように、という配慮があったという。

「おことば」ににじむ思いに共感 広がる活動

側近によると、様々な制約や困難を抱える人に寄り添いたい、という佳子さまの思いに共感した団体などから「是非いらしていただきたい」という依頼が増えているという。2023年は、女子高校野球をはじめとする新たな行事に出席し、活動の幅が広がる1年だった。

4年ぶりの外国公式訪問 ペルーで見せた2枚の写真

コロナ禍で途絶えていた皇室の外国訪問も再開し、佳子さまは11月、外交関係樹立150周年を迎えた南米・ペルーを公式訪問された。佳子さまが国際親善のため外国を訪問するのは2019年以来4年ぶり、2度目のこと。

特別支援学校ではペルーの手話で話しかけられた 2023年11月
特別支援学校ではペルーの手話で話しかけられた 2023年11月

聴覚に障害をもつ子どもたちが通う特別支援学校を訪れると、1カ月半の練習を重ねた現地の手話を駆使して直接交流され、子どもたちを「どうしてプリンセスはこんなにペルーの手話ができるの!」と驚かせた。一つ一つの行事に緻密な準備を重ねて臨まれていたことがうかがえる。

外交関係樹立150周年記念コンサートでルーチョ・ケケサーナさんの演奏をご鑑賞 ペルー 2023年11月
外交関係樹立150周年記念コンサートでルーチョ・ケケサーナさんの演奏をご鑑賞 ペルー 2023年11月

滞在中には、外交関係150周年の記念コンサートに足を運び、ペルーを代表するミュージシャンのルーチョ・ケケサーナさんの演奏を鑑賞された。

ルーチョ・ケケサーナさん
ルーチョ・ケケサーナさん

FNNのインタビューに応じたケケサーナさんは、「言語の違いにもかかわらず二つの文化は音楽を通して一つになり、ペルーの観客は、佳子さまを友人として温かく迎えました」「佳子さまは、この国で居心地がよかったのではないかと思う」と話す。

FNNのインタビューに応じるケケサーナさん
FNNのインタビューに応じるケケサーナさん

秋篠宮家とケケサーナさんとの親交は、秋篠宮ご夫妻がペルーを訪問された2014年に遡る。大使公邸で演奏を披露し、その席で秋篠宮さまはケケサーナさんから弦楽器・チャランゴを贈られ、演奏にも挑戦された。

ルーチョ・ケケサーナさんの来日公演を家族でご鑑賞 2014年
ルーチョ・ケケサーナさんの来日公演を家族でご鑑賞 2014年

お住まいや車の中でもCDを聴くほどケケサーナさんの演奏を気に入った秋篠宮さまはその夏、「娘達にも聴かせたい」と東京で行われたコンサートにご家族そろって足を運ばれた。

それから9年後、久しぶりの再会となったコンサートの後、佳子さまは「楽しかったです」と感想を伝え、2枚の写真を見せられた。

ルーチョ・ケケサーナさんのInstagramより
ルーチョ・ケケサーナさんのInstagramより

ケケサーナさんが秋篠宮さまに贈ったチャランゴを佳子さまが演奏するようなポーズで撮影されたもので、「家族の誰かが撮ったようなアットホームな写真」だったという。「音楽には文化を結びつける強い力があると、とても感動した」とケケサーナさんは笑顔で振り返っていた。家族の中でも大切にされてきたペルーとの絆を紡ぐ旅となった。

日系1世の新垣カマドさん(104)とご面会 ペルー 2023年11月
日系1世の新垣カマドさん(104)とご面会 ペルー 2023年11月

度重なる飛行機のトラブルでペルー到着が1日遅れたものの、日程を調整し、予定されていた全ての行事に臨まれた佳子さま。おことばを1日に2回述べたり、行事の内容に合わせ振り袖などに3回着替えたりと、忙しいスケジュールとなったが、側近は「全ての行事をこなされたことは佳子さまの自信にも繋がったのではないか」と推察する。

ペルーのボルアルテ大統領を表敬訪問された 2023年11月
ペルーのボルアルテ大統領を表敬訪問された 2023年11月

困難や制約のもとにある人々に寄り添う強い思い。成年皇族となって10年を迎える20代最後の年にどのような活動に取り組まれるのか、注目したいと思う。
【執筆:フジテレビ社会部宮内庁担当 髙澤真澄】

髙澤 真澄
髙澤 真澄

フジテレビ報道局社会部記者。
警視庁クラブなどを経て2019年から宮内庁を担当。