ライドシェアの議論がいよいよ来年の通常国会で本格的に始まる見通しだ。小泉進次郎元環境相が代表を務める超党派・ライドシェア勉強会では、政府に対してライドシェア導入を加速させるよう提言。一方ライドシェア導入には根強い懸念や反発の声も上がる。
自民党のタクシー・ハイヤー議員連盟会長を務める渡辺博道元復興相に、ライドシェアの課題について取材した。
安全面でライドシェアには課題が
――まずライドシェアについての基本的なお考えを聞かせてください
渡辺博道氏:
日本のタクシー業界はこれまで、安全安心な乗り物であることに全力で取り組んできたと思います。しかしライドシェアの中心地、アメリカのタクシーではこれがあまり提供されていないのではないでしょうか。コロナの3年間にドライバーが約2割減り、この解決のためにライドシェアの議論が出てきました。ライドシェアは移動の自由を確保するための手段の1つであるかもしれませんが、重要なのはライドシェアが安全安心な乗り物であり得るのかということです

――ドライバーによる犯罪や事故に懸念の声もあります
渡辺博道氏:
国土交通省によると、ウーバーでは身体的暴行による死亡事故11件、衝突など交通事故による死者数42人、性的暴行は998件でした(2020年6月30日公表の報告書)。対して日本のタクシーは、車内の殺人件数はゼロ、交通事故による死者数は16人、性的暴行は16件です。利用者の安全面でライドシェアにはやはり課題があるのではないかと認識しています
ドライバーは不安定な労働環境に
――ライドシェアにおけるドライバーの労働環境についてはどうお考えですか?
渡辺博道氏:
ライドシェアは大体業務委託で、ドライバーが自由な時間に好きなだけ働くかたちになります。しかし収入が安定的にあるのか、その実態がよくわからず、労働者としては極めて不安定な環境になると思います。ヨーロッパでは、EUの労働基本条約によって「ウーバーのドライバーは従業員」だとする判決があります。委託契約になればドライバーの自己責任になるので、少なくとも雇用契約を結ぶのは当たり前のことです。この視点からの議論はまだまだ不十分だと思います

――超党派ライドシェア勉強会では、各自治体の首長から道路運送法の見直しを求める声があがりました
渡辺博道氏:
タクシーやバスもいない交通困難地域では、移動の足を確保するために道路運送法第78条第2項を適用して、地域で協議しながら白ナンバー(自家用自動車)による対応がすでに行われています。だから法改正よりもまず実際にやることが大事で、そこで何が課題なのか明らかにすることが一番大事です
女性や若者が安心して働ける職場に
――全国ハイヤー・タクシー連合会の川鍋会長は、「ライブシェア導入にはまずタクシー業界の規制緩和を」と
渡辺博道氏:
それはその通りですよ。時代とともに規制の内容は変えていく必要があります。地理試験は今のようにナビで把握できる時代では必要無いのでは。また2種免許の取得期間も短縮できると思いますね
――あらためてドライバー不足についての解決策を教えてください
渡辺博道氏:
タクシー業界の働き方改革が必要です。いま一般的な働き方は隔日の勤務で、朝出庫したら夜中の2時頃に帰ってきて翌日休みです。それをもう少し短時間でも働ける環境を作る。例えば朝9時から午後5時までとか午後6時から夜中の2時までというかたちに分けていくなど、業界として検討する必要がありますね。また短時間勤務も推進していくべきだと考えます。特にドライバーの確保として、女性や若い世代が安心して働ける職場であってほしいと思います

――最後に推進派とは今後どのように議論を進めていきますか?
渡辺博道氏:
私の一丁目一番地は、利用者の安全安心なのです。これが担保できる仕組みなのかどうかを見定めていきたいと思います
――ありがとうございました
(聞き手:フジテレビ解説委員 鈴木款)