5000人超にプレゼン指導をした現役コンサルタントのしゅうマナビジネスさんは、ビジネスのコミュニケーションでは、伝えたいメッセージを一つに絞りこむことを意識するべきだと言う。
そのうえで必要なのは、シンプルに伝える言葉選びだ。
『3秒で伝える コンサルが使う「シンプルな言葉で相手を動かす」会話術』(扶桑社)から、一部抜粋・再編集して紹介していく。
せっかくメッセージを一つに絞っても、その内容が冗長だと、メッセージにキレがなく相手に刺さらない場合があります。
例えば、「話し方がうまくなる練習方法」を伝えるにしても、
「伝える力を上げるには、話す時間を決めずに一つひとつ丁寧に練習をするのではなく、最初から『3秒・30秒・3分』と話す時間を決めておいて、その時間内に話せるよう何度も何度も繰り返し練習するといいですよ」
という言い方をされたら、相手はどう思うでしょうか?
確かにメッセージは一つになっていますが、回りくどい言い方なのでポイントがうまく伝わりません。
むしろこういった場合は、
「時間を区切った練習をすると、伝える力が上がります」
と簡潔にまとめたほうが、相手に刺さるはずです。冗長な表現は、メッセージをあいまいにし、伝わりにくくするだけ。
メッセージを引き立てるシンプルな言葉を使うために、冗長な表現は削っていきます。
そこで、私が普段から使っている「シンプル化」のコツを紹介します。
【1】ノイズになる表現を削ぎ落とす
まず意識してほしいのは、コアメッセージとは関係のない、ノイズとなる情報を削ぎ落とすことです。
説明なら伝えたい言葉だけ、資料を作るなら強調したい表現だけを残し、それ以外の部分はノイズ扱いにして、省略できないかどうか考えていきます。
例えば、先ほどの例だと「話す時間を決めずに一つひとつ丁寧に練習をする」という表現がありました。
この場合、「一つひとつ」や「丁寧に」はなくしてもいいのではないか?と考え、ノイズとして省いていきます。
また、「何度も何度も繰り返し練習する」という表現も冗長なので、「練習する」という言葉だけで十分に伝わります。
単語を修飾するフレーズは物事を強調したりするには便利ですが、短くシンプルに伝えたいときには邪魔になることも多いのです。
伝えたいメッセージと直接の関係がない部分はスパッと省くことを考えましょう。
【2】長い表現を「一言で伝わる単語」に置き換える
次に意識するのは、回りくどい表現を「一言で伝わる単語」に置き換えていくということです。
先ほどの例では、「『3秒・30秒・3分』と話す時間を決めておいて」というフレーズがありますが、この内容は「時間を区切る」という一言でも伝えられます。
このように「表現が回りくどい、表現が長い」と感じたら、「どこか省けないだろうか?」「何か別の言い回しはないか?」と、瞬時に反応するくせをつけてください。
すると、口頭で伝えるシーン以外でも、長いメッセージ文章が短くなったり何ページにもわたる資料が少なくなったり、作業がどんどん効率化されるはずです。
【3】二項対立は「主張したい側」だけを残す
よく表現として「AではなくB」「AよりもB」といった具合に、2つのものを対立軸として比較したものを表現する場合があります。
「A案よりもB案」や「ウェブ会議より対面での会議」といったように、対立軸が単語で収まる場合はいいのですが、「伝える力を上げるには、話す時間を決めずに練習をするのではなく、時間を区切って練習するほうがいいですよ」のように比較対象が長いと、どうしても冗長な印象が出てしまいます。
そこで、比較対象を省いて「主張したいほう」だけを残すことで、メッセージがシンプルになります。
この例だと「話す時間を決めずに練習」という部分を省いて、
「伝える力を上げるには、時間を区切って練習するのが有効です」
と、主張を理解しやすい文章になりました。
【4】重複表現は一つにまとめる
説明したい文章を見たときに、表現こそ違っていても、同じことを繰り返し伝えている場合があります。
例えば、仕事上のあるシーンで、
「先方からの発言で『〇〇のほうがいい』という意見が出ました」
という報告をしたとします。
一見するとこのメッセージに重複はなさそうですが、実は「先方からの発言」とは「意見」のことなので、まとめることができます。すると、
「先方から『〇〇のほうがいい』という意見が出ました」
といった感じで重複表現が省かれ、言葉がわかりやすくなります。
また、先ほどの伝え方の練習方法の例でも、
「伝える力を上げるには、時間を区切って練習するのが有効です」
という言葉にある「有効」とは「伝える力を上げる」と同じ意味です。
言い換えれば、「伝える力を上げるには、時間を区切って練習することで伝える力が上がります」となるので、同じ表現が二度登場しているわけです。
それならば、
「時間を区切った練習をすると、伝える力が上がります」
と、片方を省くことでさらにシンプルになります。
お気づきかと思いますが、ここまでの1〜4の「シンプル化」をすることで、ようやく「3秒の一言」になりました。
あくまで相手目線を忘れずに
このようなテクニックを用いれば、メッセージはかなりシンプルにできますが、ひとつ注意点があります。
それは「相手目線を忘れず、相手が理解できる表現を使う」ということです。目的はあくまで「相手に伝わるメッセージを考えること」であり、表現を短くすることではありません。
業界や組織ごとに専門用語や意味を知らないと理解できない英語の略語(ミーティングをMTGと表現するなど)があったりします。
確かに一言で表現できるのは便利ですが、かえって相手に伝わらない状況になってしまったら本末転倒です。
冗長な表現を削る意識は大切ですが、あくまで「相手にとってわかりやすいか」という目線を忘れないようにしてください。
【POINT】
言葉を短くしても、「相手がわからない表現」ではダメ
しゅうマナビジネス
大阪府出身。ITソフトウェア企業を経て、総合系コンサルティングファームに転職。現在は経営管理・IT領域を中心としたコンサルティング業務に従事。コンサル業と並行してプレゼンや思考法の専門家としてセミナー講師などで活動。YouTubeチャンネル『マナビジネス』では「学び」+「ビジネス」をテーマに仕事術についての情報を発信している。