会社の忘年会や友人との飲み会など繁華街を利用する人も増えてくるなか、その繁華街で横行しているのが客に声を掛け自分たちの店に勧誘する違法な「客引き行為」だ。
街の治安を守るために捜査を進める新潟県警の取り締まりに密着した。
にぎわい戻る繁華街で横行する“客引き”
新型コロナウイルスの影響も収まり、にぎわいが戻りつつある新潟駅前の繁華街。多くの人が行き交う駅前を歩くと、近づいてくるのは黒いスーツに身を包んだ男たち。
「お探しは?キャバクラとか?」「何かお探しは?」
この記事の画像(14枚)いま、横行しているのが、こうした特定の店に客を呼び込むいわゆる「客引き行為」だ。
新潟警察署の清野純一生活安全課長は、こうした客引きの取締りについて「うちの店に来てくれということで歓楽的な雰囲気を醸し出すような客引き行為、これは皆さんが迷惑しているので“新潟県迷惑行為等防止条例”という形で規制させてもらっている」と話す。
県内では2008年4月から執拗な客引きやキャバクラなどの歓楽的な雰囲気を醸し出すような客引きなど、不当な客引き行為の禁止が条例に追加されている。
しかし、街の人からは「キャバクラの客引きだったら『かわいい子いるよ』みたいな感じで」「友達から東京でぼったくりに引っかかったという話を聞いて怖いなと思った。できればやっぱり関わりたくない。やめてほしい」など、いまも客引きが横行している現状が聞かれた。
さらに、まだ飲酒すらできない10代女性からは「『キャバクラやらない?』と声をかけられることもあった。女の子に対して」と、耳を疑うような誘いを受けた現場を目撃したという話もあった。
パトロールで客引き防止を呼びかけるも…
新潟駅前では、地元や学生ボランティア・新潟市・県警などが「公共の場所における不当な客引き、執拗・強引な客引きは条例により禁止されている」などと客引き防止を呼びかけながら繁華街を練り歩く。
月に3回行われているこの活動は10数年前から続けられていて、ピンクチラシの削減には効果があったとする一方で、客引きの撲滅に対してはまだ目に見えた効果は出ていないばかりか、最近はこうしたパトロールを悪びれる様子もなく無視している現状があった。
新潟駅の再開発が進み、県外から訪れる観光客の増加に期待がかかる中、パトロールに従事するボランティアは、この客引き行為がその足を引っ張りかねない行為にもなっている。
新潟駅前地区セーフティゾーン活動委員会の中西康之委員は「パトロールしていると、たまに県外の方だと思うが、私たちに『しつこく客引きされて困る』と訴えられることは何回かあった」と話す。
警戒中の捜査員に「お探しは?」
こうした被害を抑えるため、取り締まりに力を入れているのが県警生活安全課だ。
10月某日の午後8時、新潟警察署の生活安全課の部屋に捜査員20人弱が集まり、次々に捜査車両に乗り込んだ。
向かったのは、新潟駅前の繁華街。繁華街を管轄する新潟署では、県警本部と連携して違法な客引きの警戒にあたっている。
この日、スーツに身を包んだ男性捜査員たちが駅前の繁華街に足を踏み入れると、さっそく一人の男が近づいてきた。
「何かお探しは?」
客引きとみられる男が声をかけてきたものの、状況的に県の条例違反に該当はしなかった。
そのまま10数mほど歩くと、今度は別の男も…「お探しは?」と、近づきながら声をかけてきたが、警察の取り締まりを警戒してか、何の勧誘かはっきり口に出さなかった。
繁華街を回った捜査員たちは、こうした現状を伝えるため、他の捜査員などが待つ待機所へと戻り「そこの角にいる男が客を選んでいる、完全に選んでいる」と報告。
その後、再び繁華街を練り歩くも、この日は人通りが少なく、違法な客引きの検挙には至らないかと思われたその時…
逮捕されたのは18歳の自称高校生…
「初めて?逮捕されるのは?」
捜査員2人に両脇を抱えられ、男が現行犯逮捕されていた。
逮捕容疑は、県迷惑行為等防止条例違反。捜査員2人はすぐに電話で近くに待機していた捜査員たちを現場に集めた。捜査員10人ほどが集まると本格的な捜査が始まる。
「『お探しは?ガールズバー・キャバクラどうですか?』それは言ったよね?」
こう問われた男は「はい」と犯行について素直に認め、当時の状況について警察の捜査に協力した。
さらに調べを進めると驚きの事実が…
「おいくつ?」「年齢ですか?いまが18歳です」
逮捕されたのは自称高校生、18歳の少年だったのだ。
県内では今年10月末までに違法な客引き行為によって8人が逮捕されている。
さらに少年の逮捕も増加傾向にあると捜査員は話す。
「成人だけじゃなくて、少年にもこういう犯罪が浸透しているというところがあると思う。簡単にできると思って、こういう客引きだとか犯罪に手を染めてしまうことがあると思うが、やっぱり犯罪なので、やめていただきたい」
新潟署管内には今年9月末時点で、220件以上の通報が寄せられるなど客引きをめぐるトラブルが後を絶たない。
忘年会や新年会など飲み会の機会が増える年末年始。トラブルに巻き込まれないためにも客引きにはきっぱり断りを入れることが重要だ。
(NST新潟総合テレビ)