福岡・春日市の中学校教師・村下さんは、3年前に出産し、1年の育児休暇を経て、仕事に復帰した。母親となり、「時短」を心がけながらも、家事や育児、仕事などをこなしながら、保護者や生徒とのコミュニケーションを大切にする日々を送る“お母さん教師”に密着した。

家事に子育て 分刻みの忙しい日常

福岡・春日市の中学校に教師として勤める村下佑里さん。3年前に出産し、1年の育児休暇を経て、仕事に復帰した。現在はクラス担任も務めている。

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中学校教師・村下佑里さん:
「もっともっと英語を教えたい」というところもあるし、「いろんな生徒と関わっていきたいな」って(思います)

出産後も大好きな教師の仕事を続ける選択をしたが、多忙な仕事と育児の両立に、この2年は試行錯誤の繰り返しだったと話す。

中学校教師・村下佑里さん:
仕事を頑張れば頑張るほど、(自分の)子どもには寂しい思いをさせるし、子どもを優先すればするほど、教師として自信を失くすこともあるから。そこのバランスが難しいなって日々思いながら…。

村下さんの1日は、まだ日が昇らないうちから始まる。起床は朝の5時半。洗濯機をまわしている間に、娘の保育園の準備を済ませる。

そして15分後には、机へ―。学校から持ち帰った仕事を始めるのだ。宿題のチェックや書類の作成などの仕事は自宅に持ち帰り、ほぼ毎日、娘が寝ている早朝か深夜に進めている。

起きてから家を出るまで1時間半、分刻みで動き続ける村下さん。出勤するための準備は家事の合間にこなすとういう。「適当にシミとかだけ隠して(笑)」とお化粧も「あっ」という間に済ます。

午前6時30分。朝ご飯作り、そして食器のあと片付け。おかずをつまんで小腹を満たしつつ娘と夫の朝ご飯を準備。

そして、午前6時50分。家を出る前には必ず「行ってくるね」と娘にハグ。愛する我が子の存在が何よりの原動力となっている。

中学校教師・村下佑里さん:
この子を迎えにくるために、「早く仕事終わらせよう」って(思います)

職員室に戻る時間も“もったいない”

学校に到着すると、朝礼や授業の準備を行い、息つく間もなく教室へと向かう。多いときには、1日5時間の授業を担当する。

その合間にも提出物のチェックや行事の準備など、仕事が山積みだ。娘の保育園の迎えがあり、夕方は残業できないため1分1秒も無駄にできない。

「時間との勝負なので隙間時間があったらすぐに」。職員室に移動する時間すらももったいないと、作業はもっぱら、教室前の廊下で行う。

母親となり、「時短」を心がける日々だが、逆に時間をかけるようになったこともある。

そのひとつが、保護者への連絡業務だ。通常、生徒が欠席した場合や問題が起きたときに電話するのだが、「実は、休み時間とかすごく勉強してたんですよ。『50点とりました』って言ってて、『すごいやん』って、めっちゃ褒めました」などと、生徒の成長など、うれしい出来事も保護者に伝えるようになった。

中学校教師・村下佑里さん:
自分が保育園に娘を預けるようになって、うれしい報告を聞いたら、さらに娘がいとおしくなるので…

また生徒や保護者とのコミュニケーションツールとなっている学級通信は毎日出している。

中学校教師・村下佑里さん:
今年度は始業式から始まって、いまのところ毎日、(学級通信は)出していて。自分のなかで「そこは時短の対象にはなってないな」と思うんですよね。生徒たちが笑顔になるときが、この仕事の一番好きな瞬間でもあるので、「生徒と触れ合う時間を大事にしたいな」と思っています。

精力的に仕事に取り組む村下さんだが、学校行事が続くなど忙しい時期には、仕事と育児の両立に、体力の限界を感じることもあるという。

中学校教師・村下佑里さん:
前は、仕事への情熱で乗り切れてたんですけど、最近きつくて。そういうときに限って娘がご飯を食べないとか、おもらしをしたりとか、心に余裕があれば寄り添えるんですけど、子どもに当たってしまうときがあるからそこは日々反省をしています。

そんなときに元気をくれるお守りがある。卒業生や生徒たちからもらった色紙や手紙だ。

中学校教師・村下佑里さん:
これが教師になって初めて担任したクラスの子たちからもらった色紙。気持ちが沈んだ時の励みにしています

育児を理解してくれる環境も大切

さらに、職員室に連れて来たのは娘だった。

放課後、学校でしかできない作業があるときや土日の部活動の指導と保育園の休みが重なったときには、娘を学校に連れて来ることもあるという。

ともに働く教師からは、「家のこともして、仕事もされてるんで、尊敬してます。『ちゃんと家のことをしないといけないな』と日々、(私も)反省しています」、「大変ななかで頑張ってくださっているので、『手伝えるところがあったらな』っていうのと、単純に(子どもは)かわいいので、一緒に楽しませてもらってます」など、子育てしながら働くことに対し、職場で理解を得られていることが、仕事を続けられている大きな理由でもあるのだ。

この学校では、村下さん以外にも子どもを連れてくる教師が多いという。

春日南中学校・山崎朋彦校長:
学校としては「ウェルカム!」です。おそらく彼女は僕にも伝えていない大変さが絶対にあると思うんですよ。周囲がどれだけ理解できるか。家庭があるから辞めざるをえない、そんな不幸な悲しいことをつくってはならない。

出産後も働く女性が増えるなか、仕事を続けていくには環境と周囲の理解が不可欠だと、村下さんは話す。

中学校教師・村下佑里さん:
“働くママ”っていうのを認めてくれる雰囲気じゃなかったら子どもも連れてきづらいし、好きな仕事だけど「諦めないといけないのかな」と思います。子育てをしながら働くお母さんへの「サポートは広がっていけばいいのかな」と思います。

働き方の多様化、そして職場の理解、どちらか一方ではなく、両方を推し進めていくことが大切だといえる。

(テレビ西日本)

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