SNSで興味深い生物を見る機会が増えたと思うが、今、一風変わったカニの仲間がX(旧Twitter)で話題になっている。
ドット模様が可愛い
マルソデカラッパさんの…
ぴゅ〜!
ぴゅ〜〜!
ぴゅ〜!ぴゅ〜!
たまらんです!!!
こんなコメントとともに、和歌山県にある「すさみ町立エビとカニの水族館」(@ebikaniaquarium)がXに投稿した動画に映っていたのは、なんとも不思議な生物。

ラグビーボールのような楕円形の、つるんとしたフォルム。体に赤紫色っぽい水玉模様がある。「マルソデカラッパ」という種類の生物らしい。

水の中でじっとしていると思ったら、次の瞬間、目と目の間のような部分から「ぴゅ~っ」と水を噴き出した。その様子はまるで公園の水飲み場の蛇口から出る水のようだ。

その後、水族館の職員がマルソデカラッパを持ち上げると、楕円の体にフィットするように折りたたまれたハサミが見えた。この姿を見ると、やはりカニの仲間のようだ。
動画を見た人たちからは、「ずっと見ちゃいますね 水玉柄水着で水鉄砲遊びか~ 赤飯にも見えます」「神様が余程楽しんで造形したんだろうなーっていうデザイン」などのコメントが寄せられ、3万7000のいいねを集めている(11月22日現在)。
「カラッパ」は「ヤシの実」の意味
可愛らしい姿だったが「マルソデカラッパ」とは一体どんな生物なのだろうか。「ぴゅ~」っと水を噴き出す行動は何をしているところなのだろうか。「すさみ町立エビとカニの水族館」の担当者に聞いてみた。
――「すさみ町立エビとカニの水族館」ではマルソデカラッパを何匹飼育しているの?
現在1個体だけ飼育しています。
――マルソデカラッパとはどんな生き物なの?
丸い甲が特徴のカラッパというカニの仲間です。カラッパとはインドネシア語でヤシの実という意味で、丸い体が名前の由来です。相模湾以南の沿岸の砂地に生息するカニで、明るいときは砂に潜って眼だけを出して隠れており、夜になると餌を求めて動き回る夜行性のカニです。

――見た目の特徴は?
ツルっとした丸い体と、動かなければカニに見えない姿が特徴です。甲は同じ種でもドット(水玉)模様や模様の無い個体がいます。

――水を「ぴゅ~っ」と噴き出していたのは、何をしていたの?
呼吸をしているところです。カニは眼の下にある口の近くに「出水孔」という穴があり、歩脚の付け根から水を吸い込んで鰓(えら)を通り出水孔から水を出します。

水中の岩場に住むカニや陸生のカニなどは出水孔から水を出すときは下や前方向に水を出します。カラッパの仲間などは全身が砂に潜り眼だけを出して動かないという習性があり、呼吸のために水を少し上方向に出すものと考えられています。そのため水深の浅いところにいると、水を上に吐いて噴出したように見えます。
ハサミを缶切りのように使う!?
――ほかにどんな行動をするの?
特徴的な行動として、砂に潜って眼だけを出す行動や、巻貝などの貝を突起のある特徴的なハサミで缶切りのように割って食べる行動があります。
――マルソデカラッパを観察する際に注目してほしいポイントは?
体に不釣り合いな細い脚(美脚です)が特徴です。砂地をステップを踏むように動く様子がおもしろいのでぜひ見てもらいたいですね。

――投稿が注目されたことについてどう思う?
食用種以外にも好奇心をそそるとてもおもしろいカニがいることを知ってもらえて嬉しく思います。
――「すさみ町立エビとカニの水族館」はどんな水族館?どのように楽しんでほしい?
世界中から集めた150種以上の甲殻類を常時生態展示しているかなりマニアックな水族館です。
多種多様なエビやカニが日本を含めて世界中にたくさんいることを知ってもらい、自然や生物に興味を持つきっかけづくりになればと思っています。食べるだけではないエビやカニの魅力を知って欲しいです。
ドット模様が可愛い
— すさみ町立エビとカニの水族館 (@ebikaniaquarium) November 16, 2023
マルソデカラッパさんの…
ぴゅ〜!
ぴゅ〜〜!
ぴゅ〜!
ぴゅ〜!
たまらんです!!! pic.twitter.com/WKbfEcqvs8
ツルッとしたフォルムがかわいいマルソデカラッパは、水を「ぴゅ~っ」と噴き出す鰓呼吸以外にも、ハサミで貝を缶切りのように割って食べるという興味深い行動をするようだ。
興味が湧いた人は水族館で生態を観察してみてはいかがだろうか。
(画像提供:すさみ町立エビとカニの水族館)