時代劇に出てきそうな橋…洪水の時には橋そのものが沈んでしまう橋、それが「沈み橋」だ。“おそらく”日本で一番多いのが大分県だという。その理由などを取材した。

洪水時には橋が沈む…「沈み橋」

大分県杵築市山香町、八坂川上流「龍頭橋」は、明治45年に作られた日本最古の石造りの沈み橋だ。
流木などが流れてきても引っかからずに壊れないように工夫されている。

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長年沈み橋の研究を続けている、立正大学の河野教授は次のように話す。

「例えば柳が風にしなやかになびくようなもので、川の洪水に対して無理に抗おうとすると橋は流されてしまうんですけど、それをうまく受け止めて流してしまうような橋という言い方ができるかなと思います」

日本で一番「沈み橋」が多いのは?

沈み橋に関する調査は今までほとんど無く過去に一度、1級河川だけを対象に高知県が調べたことがある。
全国で407か所。1番多かったのは高知県で、大分県は2番目だったそうだ。
その後、河野教授は大分県の沈み橋を調査。
2008年の時点で212か所あり、断定はできないが…
「おそらく9割がた、今でも日本で一番多いのが大分県ではないかなと思っています」と河野教授は言う。

世界でここだけ?T字型の珍しい橋

宇佐市院内町にある「新洞橋」。恵良川、津房川が合流して駅館川になるポイント。

「ちょうど橋の真ん中に中州があるので、その中州に向かってT字路に、T字型に橋が伸びているような橋になっているので形としては多分世界中にあの橋しかないんじゃないかと思うぐらい珍しい橋になっていますね」(河野教授)

掛けやすい橋ゆえに、人々の生活に寄り添えるのが沈み橋なのだ。

大分県に沈み橋が多いのはなぜ?

ところで…なぜ大分県に沈み橋が多いのか?
ひとつは地形的な要因。
9万年前の阿蘇山の大噴火で大分県には溶結凝灰岩が幅広く広がっている。

「それが非常に広くてなだらかな盆地を形成するんですね。そうすると沈み橋がちょうどうまく作りやすいような状態の地形を作るので、それが非常に大きいと思います」と河野教授は話す。

川との高低差が少なく、沈み橋を造りやすかった。
また、沈み橋は普通の橋と比べ十分の一の予算で作れたので地形的な条件がいいのであれば広く普及したのは自然なことと言える。

自然の厳しさ優しさを伝える橋

最後に紹介するのは本耶馬渓町の「神迎橋」。
山国川の支流、屋形川にかかる見落としそうな小さな橋だが、このあたりは中津から宇佐に繋がるところ。
橋の名前からも宇佐神宮との結びつきが考えられそうなロマンあふれる沈み橋。

時代と共に数も減り、忘れ去られつつある沈み橋だが、私たちに教えてくれるものがあると河野教授は言う。

「はっきり言ってしまえばもう絶滅危惧種みたいな橋だろうと言わざるを得ないと思うんですね。まあ確かに、ある一面、危険な橋には違いないんですけれども、やっぱりそこは自然の非常に厳しい部分と、やっぱり自然の優しい部分を教えてくれる存在が沈み橋ではないかなというふうに思います」

(テレビ大分)