熱戦が繰り広げられている日本シリーズ。2日の甲子園での第5戦では、阪神が劇的な逆転勝ちを収め、38年ぶりの日本一に王手を掛けた。 第5戦のポイントや、第6戦の展望、そして日本一はどうなるのか。阪神OBでメジャーリーグでも活躍された福留孝介さんに聞いた。

「両チーム“らしくない”ミスをしている」と福留さん

まずはここまで第5戦を終えて、阪神タイガース3勝、オリックス・バファローズが2勝となっている。両チームの戦いぶりを見て、福留さんは「両チーム“らしくない”」と印象を語った。

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福留孝介さん:
シーズン戦ってきて、両チームともミスの少ないチームですが、5戦目の全ての点に絡んでいるのがミスなんです。なぜミスが起こるのかというと、やっぱり普段と違う雰囲気。僕も解説の仕事で行きましたけど、“甲子園”は異様ですね。1試合はプライベートで客席で見ましたけど、応援がすごかったです。声が聞こえないんです。慣れないオリックスの選手は大変だと思います。オリックスの声援も聞こえるんですけど、ほとんどかき消されます。ちょっと怖いですもん

第5戦 7回オリックスの気が緩み、8回湯浅が阪神に流れを引き寄せた

2日の第5戦を振り返る。4回にゴンザレス選手のホームランでオリックスが先制。7回には阪神・森下選手と中野選手の痛いエラーがあって、オリックスが追加点をあげリードを広げた。阪神に嫌な空気が流れた。

しかし8回、けがから復帰したばかりの湯浅投手が第4戦に続いて見事なピッチングを見せ、阪神に流れを引き寄せた。その裏、森下選手の逆転タイムリーなどで一挙6得点。そのまま阪神が6対2で逆転勝利。

阪神に2つのエラーが出て、オリックスが2点目をあげたときには、オリックスの流れかと思われたが、どう見ていたのか?

福留孝介さん:
7回の1点で、オリックスとしてはちょっと気持ちに余裕ができてしまった。『1対0』とか『0対0』って緊迫感があって、ピッチャーも引き締まるんです。ちょっとした1点、しかも相手のミスからの1点なので、気持ちに余裕ができた瞬間が8回裏(の阪神の逆転につながった)。自ら打って得点したのと、相手のミスでもらったのとで雰囲気は変わりますね

湯浅投手の好投についてはどう思われたのか?

福留孝介さん:
1日の第4戦で湯浅投手が出ると誰も予想していなかったです。出てきた時に球場の声援がすごかったんですよ。これは分からないですけど、岡田監督はあの声援を聞いて、嫌な流れを切るために第5戦の8回、湯浅でいってもらって、球場全体で盛り上がることをちょっと期待したのかなという気はしています。短期決戦で、いい流れがある(選手だ)と使いたくなりますね

福留孝介さん:
僕は第5戦の解説をしていて、オリックス、8回もう1回、 田嶋投手が投げるのがいいと思っていました。阪神側としては、田嶋投手が投げる方が嫌だったんです。打てていない流れの時、ピッチャーが変わると打線としては気持ちが楽になります。その意味で、田嶋投手がもう1イニングいけたらと思いました。 オリックスとしては田嶋投手はCSの時もイニングの途中で代わっていました。途中で代わると、ランナーを残したところで代わられるので、中継ぎの投手は大変なんです。中継ぎの負担を考えて、中嶋監督としては、8回頭から田嶋投手を代えて中継ぎにしたのかなという気はしないでもないですけど

8回裏「切り替えて打席に立った森下選手は大したものです」 

そして8回裏の阪神、鮮やかな攻撃だったが、虎のルーキー・森下選手はなぜ打てたのか。

それまで3打席ヒットがなく、前の回にエラーがあって、森下選手の心理面はどんな状態だったのか?

福留孝介さん:
僕であればへこみます。切り替えて打席に立てた、気持ちを乗せて打席に立てたっていうのは大したもんだなと思います。僕には無理です

森下選手が打った場面、ピッチャーの宇田川投手はかなり低めに投げた。ポイントはもっと前にあったと福留さんは言う。

福留孝介さん:
宇田川投手は基本的にまっすぐとフォーク(落ちる球)なんです。1日の第4戦では、阪神のバッターは高めで速いまっすぐのボールを振らされているんです。 森下選手は、高めを振らされたくないということと、フォークの可能性もあって、目線を下げているんです。あと2ストライクに追い込まれている分、全力ではなく、拾いにいってるんです。高いところはバッターは詰まりやすいんですけど、低いところは腕が伸びて距離が出やすいんです。そうするとボールが飛びやすいです。バッテリーとしてはたぶん、高めの球で空振りか打ち上げさせたかった。でも森下選手は目線を下げて、高めには反応せず、素直に下の方に来たボールに対して、一番腕が伸びるところで拾いました

福留孝介さん:
宇田川投手はあそこで、抑えたい、強く投げたいという思いで、少しだけボールが引っ掛かりました。あとバッテリーとして、森下選手の打席の間、フォークボールが一度もワンバウンドしていないんですよ。ワンバンするフォークを投げられない。キャッチャーはまっすぐで勝負しなきゃいけないという判断だったんですけど、それで低い所にいってしまった感じだと思います。あの一球をフォークでいっていたら当たっていないかもしれません。次の大山選手の時にワンバンのフォークを投げて、大山選手が空振りしていました。 あとオリックスは1日の第4戦で(キャッチャーがボールを後ろにそらしてしまう)パスボールを2つしていて、チームとして(パスボールの危険が高いフォークを投げられないという考えが)頭にあった

第6戦、そして第7戦はどうなる?

今後の展望について第6戦の予告先発が発表されている。

阪神は村上頌樹投手、オリックスは山本由伸投手ということで第1戦と同じ組み合わせになった。第1戦で阪神打線が山本投手を攻略し、山本投手は6回途中7失点となった。

福留孝介さん:
山本投手、CSも日本シリーズ第1戦も状態良くないです。実際に見まして、スピードガンの表示は150キロ台が出ていますけど、打者としてはそこまで速く感じていないと思います。ファールにならないといけないボールが、前に飛んでいます。ボールがシュート回転していて、シュート回転のボールは普通のまっすぐより弱いんです。まっすぐの状態が良くないので、変化球に頼りたいんですけど、前回の登板ではカーブが全く入りませんでした。実績のある投手なので立て直してくるとは思います

第6戦でオリックスが勝ち、第7戦までもつれ込んだ場合の先発は、オリックスは宮城大弥投手、阪神はポストシーズンでまだ投げていない青柳晃洋投手が投げるのではないかと予想されている。

第7戦をどう見ているのか?

福留孝介さん:
オリックスの宮城投手は間違いないと思います。阪神の青柳投手はクエスチョンがつきます。僕としては伊藤将司投手があるんじゃないかと思っています。最後の総力戦なので、いける投手が全員で行くと思います

福留さんに聞く ズバリ日本一はどちら?

視聴者からこんな質問が届いた。

「日本シリーズを見ると胸が苦しい。どうしたらいいですか?」

福留孝介さん:
大きく深呼吸してください。自分がプレーしているように思うから苦しくなる。ちょっとゆっくりしてください

佐藤輝明選手の調子はどうだろうか?

福留孝介さん:
良くないです。大きいのを打ちたいという思いがちょっと強い。シーズンの時もありましたけど、その傾向が強いかなと思います。器用ではなく、しっかりと振りたいタイプの打者なので、ある程度“諦め”が大事。もういいやと諦めた方が結果が好転することがあります。僕はしょっちゅう諦めていました。自分が打たなくても誰かが打ってくれるだろうぐらいの気持ちでいいと思います

そして聞きたいのが、阪神とオリックス、日本一になるのはどちらか。

福留孝介さん:
今の状況だと3勝の阪神となりますが、でも本拠地にオリックスは帰るので、今どっちとも言えないです。オリックスの2連勝も十分あると思います。オリックスは投手がそろっています

まだまだ目が離せない、白熱の日本シリーズ・関西ダービー。最後まで注目したい。

 (関西テレビ「newsランナー」 2023年11月3日放送)

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