東京電力・福島第一原発の1号機から3号機には、溶け落ちた燃料いわゆる「燃料デブリ」が約880トンあると推計され、この取り出しは廃炉作業の中で最も難しい作業になる。2024年3月末までに2号機の燃料デブリを試験的に取り出す予定で、これに向けて格納容器の扉を開ける作業を行った。しかし扉の入口付近は堆積物で覆われていることが分かり、新たな対応を検討しなければならないという。

格納容器内はどうなっている?

経済産業省の木野正登参事官に案内してもらったのは、福島第一原発・5号機の原子炉格納容器の中。2023年度、燃料デブリの試験的な取り出しが計画されている2号機とほぼ同じ構造だ。

デブリ取り出しが行われる2号機とほぼ同じ構想の5号機で説明
デブリ取り出しが行われる2号機とほぼ同じ構想の5号機で説明
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経済産業省・木野正登参事官:1・2・3号機、燃料デブリがこういった筒を伝って溶け落ちて、床の一番底まで燃料デブリが落ちています。この辺のグレーチングも脱落してるんですけど、グレーチングの間にも、デブリがこびりついたりしています。

一番底まで溶け落ちてこびりついているという
一番底まで溶け落ちてこびりついているという

約880トンの燃料デブリ

内部調査に大きな進展があったのが、2019年。ロボットでつまみあげられる小石のような、燃料デブリと見られる堆積物が初めて確認された。

画像提供:東京電力 燃料デブリとみられる堆積物
画像提供:東京電力 燃料デブリとみられる堆積物

福島第一原発の1号機から3号機には、燃料デブリが約880トンあると推計され、まずは2号機でロボットによる試験的な取り出しが行われる計画。

まずは2号機で試験的に燃料デブリの取り出しを行う
まずは2号機で試験的に燃料デブリの取り出しを行う

遅れる作業…またしても難題が

しかし、ロボットの開発の遅れなどで2年にわたり二度の延期。2023年度中の取り出し開始へ、10月には格納容器の内部に繋がる扉が全て開放された。しかし、ロボットの投入を遮る形で詰まっていた堆積物。思わぬ壁が立ちふさがった。

画像提供:東京電力 開放された2号機原子炉格納容器の扉 堆積物がふさぐ
画像提供:東京電力 開放された2号機原子炉格納容器の扉 堆積物がふさぐ

経済産業省の木野参事官は「半分よりちょっと上くらいまでケーブル類が詰まってますけど、あれらが溶けて固まっているのではないか」と話す。

5号機で説明 ケーブル類など溶けて固まっているのでは
5号機で説明 ケーブル類など溶けて固まっているのでは

ウォータージェットで吹き飛ばすなどの方法が検討されているが、ロボットが入るスペースを確保できない可能性があり、東京電力は別のロボットに切り替えることも検討している。

開発されたロボットアームも使用できない可能性
開発されたロボットアームも使用できない可能性

見て分かった作業の難しさ

現地取材をした福島テレビの石山美奈子記者は「燃料デブリが一帯に落ちているとなると、今通ってきた道を見るだけでも、かなり取り出しは厳しい状態だと思う」という。

左・石山美奈子記者  右・経済省木野参事官
左・石山美奈子記者  右・経済省木野参事官

経済産業省の木野参事官は「1号機はようやく調査ができた段階。どうやってアクセスするんだ、どうやって取り出すんだということを、これから考えていかないといけない」と話す。

1号機はようやく調査ができた段階
1号機はようやく調査ができた段階

「今タンクで埋め尽くされている第一原発の敷地を、デブリの保管施設とか、デブリ取り出しの訓練施設とか様々な施設を作っていかないと廃炉が円滑に進まない。そのための処理水の処分である」と改めて話した。

廃炉作業を進めるためにも処理水の処分を進めなくてはならない
廃炉作業を進めるためにも処理水の処分を進めなくてはならない

数グラムが「廃炉の本丸」の入り口に

燃料デブリは極めて高い放射線の「発信源」で、人は近づけず全容も見えていない。試験的な取り出しは、水素爆発を免れた2号機から始まり、取り出す量は数グラムとなる計画。ただこのわずかな量の分析が、将来的なすべての燃料デブリ取り出しへの足掛かりになる可能性がある。そのためにもタンクを減らすための処理水の放出は着実に、安全に進めなければいけない。

わずか数グラムでも大きな足掛かりに
わずか数グラムでも大きな足掛かりに

国と東京電力が、事故後30年から40年後の完了を目指す廃炉作業。「安全に着実に」が大前提となるなか、まもなく12年8カ月が経過する。

(福島テレビ)

福島テレビ
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