宮崎・日南市の外浦湾で磯焼けの原因となるウニを駆除し、海藻を再生させ、豊かな海を取り戻す取り組みが行われている。海の砂漠化と言われる「磯焼け」を防ぐ活動を取材した。 

ダイビングの経験生かし「ガンガゼ」の駆除へ

海底で不気味に光る青色の斑点。鋭く長いトゲを持つウニの一種「ガンガゼ」だ。近年、このガンガゼが日南市南郷の外浦湾で増殖している。

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外浦漁業共同組合・黒岩大夢さん:
岩の隙間に隠れる形でガンガゼが大量に発生しておりまして、藻場が発生しない状況になっている。

ガンガゼは一般的に食用とされるムラサキウニなどと比べて身が少なくトゲに毒があることから、漁の対象とならず放置されてきた。その結果、ガンガゼが増え海藻を食べ尽くし、磯焼けが広範囲で起きている。

外浦漁業共同組合・黒岩大夢さん:
生物の多様性がなくなる。ガンガゼ一強みたいになってしまうと漁獲に影響しますね

この問題を解決するために立ち上がったのが、地元でダイビングセンターを営む吉田茂さんだ。スキューバダイビングの経験を生かしガンガゼの駆除に乗り出した。

SeaQueenオーナー・吉田茂さん:
潜るたびに海藻がいないことを次第に強く思うようになってきた。このままじゃ海藻がなくなって海じゃなくなる

吉田さんは2022年10月、ガンガゼの駆除を外浦漁協に提案。宮崎県の許可を受け、ボランティアで駆除を始めた。2023年4月、このプロジェクトは国の補助を受けて正式に事業化、毎月1回駆除活動を行っている。この日の駆除にはダイビングセンターの常連客2人も参加した。

常連客・中村洋介さん:
ダイビングをしているので、海の環境が少しでも良くなったほうがいいなという思いもあって手伝わせていただいている

常連客・鳥井秀雄さん:
外浦の海というのはいろんな魚にも出会わせてもらった思い出が詰まっているところなので、ぜひ協力させていただきたいと

駆除しても駆除しても…しかし、海の中では徐々に変化も

今回は水深5メートルから7メートルの海底、約1,800平方メートルで駆除活動。

捕獲したガンガゼはいったんカゴに集め、数を確認した後、海底で粉砕する。

――きょうはどのくらい?

SeaQueenオーナー・吉田茂さん:
多いですね。今の時間(40分間)で80個ぐらい取れている

捕獲の様子は県に報告するため、毎回水中カメラで撮影している。

SeaQueenオーナー・吉田茂さん:
あれだけ駆除してるのにまだ結構いる。駆除しても駆除してもまた…。でも少しは少なくなってきた

駆除を始めて約10カ月。まだ海藻が生えるなど目に見える成果は出ていないが、海の中では変化も見られるようになった。

SeaQueenオーナー・吉田茂さん:
魚の数は当初より増えてきた。ガンガゼは生命力が高いのでコツコツととにかく駆除していってあきらめないでいかないと

「豊かな海」を目指して

地道な駆除活動を続ける吉田さんに漁協も期待を寄せている。

外浦漁業共同組合・黒岩大夢さん:
本当に大助かりなんです。ベテランのダイバーにやってもらえるのはすごく効率も良い。ガンガゼは今嫌われ者扱いだが、根絶やしにするわけではなく、互いにバランスよくやっていくのが一番

SeaQueenオーナー・吉田茂さん:
たぶんほっとけば、もっと悪くなる。今を何とか維持できるか、少しでも改善するような形になったらいい。藻場が回復すると魚・稚魚とかそういうのも集まってくるから、それを食べる魚がいて、「豊かな海だね」と言われるような海に近づいてくれると良いと思う

吉田さんは今後も駆除を続けながら、2024年からは海藻の植え付けなどもしていきたいという。豊かな海を取り戻すための地道な努力は続く。

(テレビ宮崎)

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