いま、日本各地の海で深刻な問題となっている「磯焼け(いそやけ)」。ウニが大量発生して海藻を食べ尽くすことで、生態系や漁業への影響が懸念されている。

こうした中、富山・氷見市の高校生がウニを捕獲し、商品化を目指してウニを育てる取り組みに挑戦し、県内外から注目されている。

世界中で問題となっている「磯焼け」

年間の来館者数は約150万人と、国内屈指の人気を誇るサンシャイン水族館。ここで注目されていたのが、SDGs週間(9月19日〜25日)に合わせて展示されていた、氷見市で進むユニークな取り組みを紹介する水槽だ。

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水槽の中にいたのは、氷見市から運ばれた「ウニ」と「トマト」。ウニがトマトを食べる様子に、見に来た人も「これ、野菜を食べてるの?刺さってるように見える。かわいい」と驚いていた。

展示されているのは高級食材ではなく、厄介者の「ムラサキウニ」。このウニが大量に発生することで、魚のすみかとなる藻場を食べ尽くし、漁業にも影響が出る「磯焼け」が世界中で問題となっている。

ウニは「駆除しても次から次とやってくるので、磯焼けの対策は難しい」のだという。身が少なくて食べられないムラサキウニは各地で駆除されているが、繁殖力も強く駆除に限界も…。

磯焼けの原因となるウニの商品化へ

このウニを採取して「商品化」しようと栽培に挑戦しているのが、氷見高校・海洋科学科で磯焼け問題を研究する生徒たちだ。

生徒たちによる捕獲と栽培は2022年の4月に始まった。ウニの採取は週に1度、生徒9人で約1時間かけて行う。1時間だけでも採取した数はなんと200匹。「きょうは少ない方」だという。

このウニを栽培するためエサにしているのが小松菜やトマト。全て規格外の廃棄予定となっていた野菜で、地元の農家から譲り受けた。エサや味の違いによる成長速度を確認しながら、商品化を目指して研究が続いている。

この日は高岡市のレストランで、プロの料理人による栽培したウニの試食が行われた。

料理人:
甘い。トマトを食べたウニは甘い。デザートでも使えそうな気がする。ソースにしても磯臭さが抜けているから、面白いかな

料理人も納得の味。ただ、実入りの量にはまだ改善の余地があり、安定した出荷量を維持できるかも今後の課題。商品化へは、もうあと一歩だ。

駆除活動の前進に期待

氷見高校のプロジェクトは磯焼けを減らすだけではなく、新たな水産資源として効果的な活用方法であると県内外から注目されている。

サンシャイン水族館企画担当・山辺英夫さん:
地域一体でこういった課題解決に取り組もうとする姿勢が素晴らしい

サンシャイン水族館でウニの生態や磯焼けについて紹介するイベントが始まると、子どもから大人まで大勢の人が集まった。

訪れた人からは、「高校生が自発的にやっているのはすごい。素晴らしい」「富山だけではなく全国の海で同じような問題が発生している。そういうところで役立つ取り組みをどんどんやってほしい」など期待の声が寄せられた。

氷見高校海洋科学科・斉藤迪樂さん:
質問もたくさんしてくれて、興味を持ってくれる人がたくさんいてうれしかった

氷見高校海洋科学科・三野光琉さん:
商品化するためにたくさん工夫して、全国の人に広まってもらえれば

サンシャイン水族館企画担当・山辺英夫さん:
若い世代が率先し、自分事と捉えてアクションを起こすのが素晴らしい。「経済」として地域ビジネスに乗ると立証されれば、駆除に対する意識も変わり、関係人口も増える。非常に期待できる取り組み。これからも応援したい

ウニは今後、味わいや収穫量についてさらに研究を重ね、飲食店への提供を目指したいという。

(富山テレビ)

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