18日、とあるコンビニの店長が詐欺を防いで島根県警・松江署から感謝状を送られた。一見よくある光景だが、この店長の場合、感謝状の贈呈はなんと5度目。しかもこの方、お笑い芸人「かまいたち」の山内健司さんの弟だという。いかにして詐欺被害を防いだのか、またどのような思いが行動を駆り立てているのか、話を聞いた。

特殊詐欺を防いで感謝状5回!コンビニ店長は「かまいたち」山内・弟

山内剛さん:
(感謝状の贈呈)5回目ということなんですけども、詐欺を防ぐことができてよかったと思います。

これには警察も…。

警察官:
5度も(詐欺を)止めていただいている方は県下でもおられませんので。

この記事の画像(18枚)

一体、どんな人物なのか…?店長を務めるコンビニを訪ねてみると…。

山内剛さん
山内剛さん

山内さん:
“かまいたち”山内の弟です。

今や、超売れっ子のお笑いコンビ「かまいたち」山内健司さんの弟だという。確かに、よく似ている。

5回目の感謝状贈呈と聞いて「かまいたち」の2人もSNSで…

濱家隆一さん「多いて。笑 3ヶ月ぶり5度目の表彰。甲子園常連校か」
兄・山内健司さん「防ぎまくり 皆さん、詐欺には気をつけましょうね」

身内からもツッコミまくられる弟はいかにして、詐欺を防ぎまくったのか…?

特殊詐欺を防いだ方法とは

島根県松江市のコンビニで、山内剛さんが、はじめて特殊詐欺を防いだのは今から5年前だった。

いつもの通り勤務中に店内を見て歩いていると、プリペイドカードの棚の前で一人でやってきた高齢男性に声をかけられたという。

高齢男性客:
ちょっとすみません…電子マネーって、これでいいんですかね…?

剛店長:
いろいろ種類があるので、どちらがよろしかったですかね?

高齢男性客:
よくわからんのだけど、これに使いたいんだよね…。

と、言って見せられたのはメール画面だった。そこには…。

「ご利用料金の確認が取れておりません。本日中に、電子マネーで3万円を入金してください」の文字が。
「3万円…?」
剛さんはその金額に、ふと「特殊詐欺」という言葉が頭をよぎったという。

自分の店で詐欺なんて…と半信半疑も

犯人が被害者に対面することなく信頼させ振り込みや電子マネー情報の送信などでお金を騙し取るのは特殊詐欺の典型的な手口。

近年、その被害件数が増える一方というニュースを思い出した剛さんは、高齢男性客に心当たりがあるか尋ねてみると「いやぁ、よく分からない」と言う。

剛店長:
じゃあ、一回、警察に相談してみましょうか。もしかしたら、何かの間違いかもしれませんし。

高齢男性客:
そうなんだよねぇ、私もなんかおかしいなと思ってたんだけど…。

再現映像より(イメージ)
再現映像より(イメージ)

まさか、自分の店で詐欺なんて…と半信半疑だった剛さんだったが警察に電話すると警察は、すぐに来てくれた。

警察:
間違いない、これは詐欺です。よかったですね〜おじいちゃん。店長もお手柄でした!

この時、剛さんは思ったという。

剛店長:
(詐欺って)やっぱりニュースにはなるんですけど、僕のお店とかでそういうのがあるっていうのを最初知らなくて。実際初めて止めてから、やっぱり詐欺の被害に遭われる方って高齢の方が多くて、そういった方がお金を取られたりするっていうのが本当に残念でしょうがなかったんで…。

「絶対にこの店から詐欺被害は出さない」とスタッフにも声かけ教育

それ以来、地元に密着したコンビニの店長として「絶対にこの店から詐欺被害は出さない」と誓った剛さんは、アルバイトスタッフにも詐欺防止の声かけを呼びかけた。

再現映像より(イメージ)
再現映像より(イメージ)

剛店長:
お一人で、不安そうに電子マネーを購入されようとしている高齢者がいらっしゃいましたら、積極的に声をかけましょう!もし、自分たちで言いづらいようでしたら僕に言って下さい。この店では絶対に詐欺を防ぎましょう!

剛さんはアルバイトスタッフに、電子マネー売り場で、うろうろと悩んでる高齢の方がいたらまずは要チェックであること。高齢の方と電子マネーというセットが基本的に怪しいとみて、一度声かけをするよう話をしているという。

とは言え、中には「詐欺!?年寄だと思ってばかにしないで、とっとと売ればいい!」と言い、剛さんが「お客さま、万が一ということがありますから、一度、警察に相談されてみては…」と提案しても…。

高齢男性客:
何で買い物に来て警察呼ばれなきゃいけないんだ!もういい、他で買う!

と、出て言ってしまう高齢の客もいるという。

それでも剛さんは、アルバイトスタッフには、声掛けすることにより、怒られたとしてもそれはもう仕方がないことなので気にしないようにと話しているということで、剛さんから教えを受けたスタッフも表彰されている。

これまで、防いだ詐欺およそ10件。その証である5枚の感謝状は、山内家の居間に並んでいる。

コンビニ店長としての覚醒

数々の詐欺に対処し多くの客を助けてきた剛さん。実は、はじめからコンビニの店長になりたかった訳ではないという。

剛店長:
兄さんは、最初からお笑いやりたいっていう感じで言っていたので。その中で僕が何も考えてないので、ちょっと負い目というか…なんかできることないかなって思ったのはありました。

人生の目標を“お笑い芸人”と決めていた兄と、やりたいことも見つからずなんとなく、専門学校に通っていた自分。そんな負い目を感じながらはじめたのがコンビニのバイトだった。流されるまま社員に誘われ、いつしか店長にまでなった。

再現映像より(イメージ)
再現映像より(イメージ)

剛店長:
最初に配属されたのが地元の近所のコンビニエンスストアで、そこで店長としてやっていくうちに、地域の人と触れ合ったり、お店やるのってなんか楽しいなって思うようになって。

特殊詐欺を防ぐ戦いは 詐欺犯とのいたちごっこ

そんな時、遭遇したのが店の商品を使われた特殊詐欺だった。

 「やっと好きになりはじめた仕事…。声をかけてくれるお客さん…。そんな職場に、犯罪を持ち込むやつは許せない。」

しかし、詐欺の手口は、次々と巧妙になっている。
2年前、5000円の電子マネーを購入したがる高齢女性客がいたため何に使うのか聞いてみると。

高齢女性客:
いや…あの…、早く払わないと、皆さんにご迷惑を掛けるので…。

携帯のメールを見せてもらうと…。

再現映像より(イメージ)
再現映像より(イメージ)

「6億円の当選金につきましては、あなた様の入金がないと、全員の当選が無効になります。」との内容が。

剛店長:
いわゆる手口として巧妙だなって思ったのは、メールでそのお客さんのところに当選金が当たりました。数人に当たって、そのうちの1人に選ばれました。それを受け取るには、こういう(電子マネーの)カードで支払いが必要です、っていう案内が来ていて、それだけなら普通なんですけど、複数人の(当選者の)内の1人から、“私はもう払ったんで、あなたも払ってください”みたいな。“じゃないとみんなが受け取れないんです”みたいなメールが来ているのを見て。

剛店長:
自分が支払わないと他の人がもらえないからっていうことで、心配になって支払いに来られたっていうお話しで…。

この悪質版のメールの場合、本文の詐欺メールだけでなく、他の当選人を装った複数の人物からもメールが届くのがポイントだ。

そのプレッシャーに耐えられず、女性は切羽詰まったようになったため、「それはちょっと違う、詐欺だ」と話をして、警察にも話をするよう説得し警察を呼んだという。

まさに、特殊詐欺を防ぐ戦いは悪知恵を駆使してくる詐欺犯とのいたちごっこだ。

兄を尊敬している 僕は僕のできることをやってゆく

しかし、こうしたいくつもの戦いを経て、10月18日、ついに5回目の感謝状を贈られた剛さん。

そんな、弟のことをお兄さんはどう思っているのか?

剛店長:
(感謝状のことは)一応、今回みたいに僕がテレビに出るときは、ごめんちょっと出るんで、何かあるかもっていう話はLINEの方でしています。そうしたら今回、“出過ぎやろ”と、ちょっとツッコミ入ったんですけど、啓発活動ということでいいことだとは言ってたので、怒ることはないと思います。

では逆に、そんな剛さんにかつて負い目を感じたお兄さんについて聞いてみると…。

剛店長:
僕は正直、兄は尊敬しているので、なんて言うんですか、今、これだけ売れてますけど、ここに来るまでの努力は知っているので……僕は僕で、できることをやっていこうかなと思っています。

僕は僕のできることをやってゆく…。道は違えど、今日も山内兄弟はそれぞれの人生を戦っている。
(「Mr.サンデー」10月22日放送より)