午後9時、新宿・歌舞伎町の一角にある大久保公園周辺。建物の角に、何かを待っているかのように数人の女性が立っています。これは、“売春の客待ち”をする女性です。
この記事の画像(28枚)その中の一人に、男性が近づき声をかけます。
「青少年を守る父母の連絡協議会」スタッフ:
今、ちょうど(男性が)声かけてます。(女性は)ほとんど目を見ないようにして、話してますね。お金の条件とか全部聞いて、聞いてから目を合わせて話すみたいなところは、あると思います。
男女は少し話をした後、男性が離れていきました。
「青少年を守る父母の連絡協議会」スタッフ:
多分条件が合わなかった。あっ、いまも、また新しく話しかけてますね。やっぱり携帯のほうを見てますね。
中には、わずか20分の間に、13人もの男性に声をかけられる女性も。
こうした売春目的で客待ちする女性たちを対象に、今年7月に立ち上がった、日本駆け込み寺の「青少年を守る父母の連絡協議会」では、週3回見回りを行っているといいます。
「めざまし8」はその見回りに同行、歌舞伎町の“今”を取材しました。
売春目的の客待ちが急増
今年になってから急増したという、売春目的で客待ちする女性たち。9月までに80人が売春防止法違反の現行犯で逮捕されました。
さらに、大久保公園のすぐ側にあるトー横エリアでは、夜11時以降に外出していた13歳から18歳までの中高生ら42人を補導。その中には、新潟県から来ていた女子高校生もいたといいます。
トー横エリアでの補導件数は今年の9月末時点で、コロナ禍前の2019年に比べて約7倍に増えています。
見回りを行う「青少年を守る父母の連絡協議会」のスタッフは、女性たちに、「駆け込み寺って知っていますか?」「困ったらいつでも来てください」と積極的に声をかけていきます。
客待ちをしているとみられる女性の中には、大きなキャリーバッグを持った人も。
スタッフ:いつから来られたんですか?
客待ちする女性:今日ではないですけど…。
スタッフ:最近ですか?
客待ちする女性:1年前ぐらい。
スタッフ:そうなんですね、これに荷物を入れている感じ?
客待ちする女性:そうですね。
スタッフ:どこらへんから来はったんですか?
客待ちする女性:もともとは関東の人だけど、いろいろ。
スタッフ:東京都ではない県から、そうなんですね。私は関西から来ました。
客待ちする女性:関西は難波の方とか住んでた。
スタッフ:泊まる所とか今日はあるんですか?
客待ちする女性:一応は。
スタッフ:そうなんですね、ホテルとか?
客待ちする女性:とか。
スタッフ:よかったです、風邪ひかんように、はい、してくださいね。
声がけしながら配っていたのはポケットティッシュ。気軽に立ち寄ってもらうため、「充電できます」や「トイレ貸します」と記されていました。
1週間で数百万…多額の借金抱え
大久保公園の目の前にある日本駆け込み寺の「青少年を守る父母の連絡協議会」には、飛び込みで相談に来る女性もいるといいます。
理事を務める玄秀盛氏に、見回りを始めた理由を聞いてみると。
玄秀盛 理事:
4月8日にコロナ禍が明けてきたと、マスク取れたと。(その後)爆発的に増えたのと、爆発的に上半期に来たのがホストの相談、家族からの。うちはもともと家族からの相談が多いから。
7月20日の立ち上げまでに約40件から50件の問い合わせ、約20家族ぐらいは相談にゆうに来ている。これはもう半端じゃない数字だなと。
玄氏によると、売春の客待ちをする女性が増えた背景には、「貧困」と「ホストクラブなどによる借金」があるといいます。
見せてくれたのは、「青伝(あおでん)」と呼ばれる手書きの伝票。ホストクラブなどで会計を後で支払う約束をした際、覚え書きとして渡されるいわゆる“ツケの伝票”です。伝票に書かれている金額は、約160万円。
――ものすごく大きな額ですが、収入印紙などは?
玄秀盛 理事:
なんにもないよ。売り掛けやから。
実はこの「青伝」が路上で売春する女性たちと、大きく関わっているというのです。
10月20日には、歌舞伎町のメンズコンセプトカフェの経営者らが無許可で接待行為をした疑いで逮捕。
今、ホストクラブやメンズコンセプトカフェをめぐり、少女が男性従業員らに高額な料金を支払うことが問題となっています。
今年に入ってから、警視庁には約100件の相談が寄せられており、これは2022年の倍以上です。
玄秀盛 理事:
1週間で280万、300万近い子いましたよね。たった1週間。20歳やそこらの子が200万は、とても払われへんわね。そしたら、手っ取り早くじゃないけど、最初は、恐る恐る風俗のほうに。
例えば、ここで立っている子なんか、大体40分で1万5000円ですよね。時給1万5000円のフリーランスやと。だから、6人とれば9万円になると、そういう計算で成り立ってる。
母親が語る、売春をしても減らない借金の実情
「青少年を守る父母の連絡協議会」に寄せられる相談には、多額の借金を抱えた娘の母親からの相談も相次いでいます。
中には、たとえ売春でいくら稼いでも、借金は減ることはないという実情も。
娘が風俗で働く母親:
半年以上たっても、相変わらず数百万の借金、1000万近いっていうのは変わらない。
娘はそれなりに風俗というものすごく稼いで、数百万返しているけども。彼氏(ホスト)本人に渡しているので、その勘定がどうなっているか…。
借金の総額を把握できていないため、「いくら返済しても終わらない」という母親。
玄秀盛 理事:
(金額が)分かったら正規にこっちで弁護士入れるから、話をして明細を見て、きちっとそれが、公序良俗に反していないかとか、暴利をむさぼってないかとか、本人の確認と、ほんでいままで返済した分もあるから、そういうのをみんな(ホストから)出してもらうと、出してくれと、それでどれだけ残っているんだときちっと。ただし、絶対、娘さんはホストにかかったらいかんわな。
娘が風俗で働く母親:
それが一番、心配な事で、一番コントロールできないんですね。
玄秀盛 理事:
いっぺんほんまに連れておいでや、それで対応の仕方を娘さんに教えるから。
今後、娘を交えての三者面談を約束。
さらに、母親が見せてくれたのは、娘の部屋に残されていたというメモ書きの写真でした。
日によってバラバラの金額が書かれていますが、これは借金の金額ではないといいます。
娘が風俗で働く母親:
娘が風俗をして一日に稼いだ金額です。日暮里とか鶯谷の方の風俗に勤めて、日当を稼いでたようなんです。一日に6万円、1万5000円、4万5000円、3万円稼いだっていうのを、結構この辺は子細にメモってるんですよ。
――なぜ娘さんはホストクラブにはまってしまったんですか?
娘が風俗で働く母親:
出会い系で知り合った。最初はホストとは知らなかった、言われなかった。店に行って実際、彼がホストだということを知って、驚いたけども「私は職業なんかで彼を差別しない」と。
――娘さんがそんなことにはまるなんて想像もしていなかった?
娘が風俗で働く母親:
もちろんです。うちも大事に育てたつもりです。女子高、女子大って大事に育ててきたんですけど、それがあだになったと思いますけど、それを言ったら、もうもう本当に押しつぶされちゃうんで…。
玄氏「手を差し伸べる環境作りが必要」
玄氏によると、人間関係や環境に適応できず仕事を辞め、貧困に悩む女性が手を染めてしまうケースもあるという「路上売春」。
相談に訪れた母親の中には、「公的機関に相談しても、『18歳で成人を迎えているため自己責任』と言われ、何も動いてくれない」と話す人も。
玄氏は、「法的には成人とみなされても18歳~20歳はまだまだ未熟。手を差し伸べる環境作りが必要」だと訴えています。
(めざまし8 10月23日放送)