内密出産などの課題をめぐって熊本市の大西市長、慈恵病院の蓮田理事長、2人のキーパーソンが10月、それぞれ海外の先進地を視察。
大西熊本市長はドイツに向かい、10月6日から7日にかけて内密出産を行った母子の情報を管理している「連邦機関」や「妊娠相談所」を回った。

ドイツは日本と違い一部にのみ名前を明かし、出産できる内密出産が法律で認められていて、“先進地”に向かい、何を見てきたのか、大西熊本市長に話を聞いた。

大西熊本市長がドイツで内密出産視察

ドイツのNGO団体が運営する妊娠相談所では、ここでの相談を経て出産した女性にコウノトリのぬいぐるみがプレゼントとして渡される。

プレゼントとして渡されるコウノトリのぬいぐるみ
プレゼントとして渡されるコウノトリのぬいぐるみ
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ドイツでもコウノトリは赤ちゃんのシンボルだそうだ。

カウンセリングの部屋はオフィスではなく「おうち」
カウンセリングの部屋はオフィスではなく「おうち」

大西一史熊本市長:
ドイツでも(相談の)主流は面接でなくまずメールや電話。必要なら面接をしたりする。温かい雰囲気のおうちです。お菓子や飲み物が置いてあったり、カウンセリングの部屋も家庭的な感じ

ドイツでは法律で「人口4万人に1人以上の相談員を配置」することが規定されており、「妊娠相談所」が官民合わせて1,600カ所以上設置されている。

大西熊本市長や熊本市の担当職員が訪れた妊娠相談所「プロフェミナ」はNGO団体が運営。2022年1年間に6,093人のカウンセリングを行ったということだ。

熊本市担当職員:
特別養子縁組が成立したあとも、養親や子どもとずっと関係を続けて相談に乗っているところが日本と違う丁寧な支援だと思った

大西一史熊本市長:
その人の心の葛藤に寄り添っていた。私も見ていてカウンセリングの様子が目に浮かぶような感じで参考になった。スキルアップのためには(熊本市も)職員の研修などをもっと深めていかないといけない

性教育でも違い年齢に応じ具体的な教育

ドイツには、子どもたちへの性教育に使われるパンフレットがある。

避妊具の使い方などを具体的に記載している性教育に使われるパンフレット
避妊具の使い方などを具体的に記載している性教育に使われるパンフレット

日本の義務教育の中では「妊娠の経過は扱わない」とされているが、ドイツでは年齢に応じて避妊具の使い方なども具体的に教えている。

大西一史熊本市長:
命の大切さとか友情とかパートナーシップとか、断る勇気、自分で性のことを決めることが若いうちから大事だと教えていることによって、例えば望まない妊娠につながらないように教育されていると思った

内密出産を法制化のドイツ情報管理は?

一方、ドイツの国家機関「連邦家族・市民社会局」では、内密出産を行った母と子に関する情報を保管している。

左が「出自証明書」右が仮名を記載する封筒
左が「出自証明書」右が仮名を記載する封筒

封筒の中に収めるのは母親の実名、生年月日と住所を記したもの、これが「出自証明書」だ。封筒の表には母親の仮名と子どもの生年月日などを記入する。

ドイツの国家機関「連邦家族・市民社会局」との意見交換の様子
ドイツの国家機関「連邦家族・市民社会局」との意見交換の様子

大西一史熊本市長:
日本では匿名ではいろいろな行政サービスが受けられなかったりしますよね。ドイツではそれをクリアするために仮名をつけて救急搬送とか病院での対応とか出自証明書とか、行政支援や手続きは仮名で全て行うことがあって、これは同じように運用すれば日本でも行政手続きができていくのではと思う

大西熊本市長「公的機関での情報管理を」

日本では内密出産は法制化されていないため、これまで14例の情報は厚労省が2022年に示したガイドラインに沿って病院、つまり慈恵病院が保管している。

大西一史熊本市長:
医療機関による身元情報の管理というより公的機関での管理(が望ましい)。こういったドイツの事例を参考に国や関係機関とも協議しながら、より良いあり方を探っていきたい

今回の海外視察で大西熊本市長はドイツの妊娠相談所の「垣根の低さ」など、寄り添う姿勢について研修を重ね職員のスキルアップにつなげたいと話す。

フランスを訪問した慈恵病院の蓮田理事長の先進地視察については以下の記事で紹介。
「日本は30年ぐらい後を行っている」慈恵病院の理事長が匿名出産を法制化のフランスを視察…「心」の重要性実感

テレビ熊本
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