鹿児島市の中心地、天文館のいづろ通りに店舗を構える「スーパーハルタ」。江戸時代に呉服店から始まり、2025年で創業176年を迎える老舗スーパーが、オーガニック商品の取り扱いとSNS戦略で新たな進化を遂げている。

25分間続く社長の熱い朝礼

午前8時半、スーパーハルタの一日は春田晃秀社長の朝礼から始まる。前日の売り上げなどの連絡事項の後も、社長の話は止まらない。

「今もうスローフード、日本はメジャーではありませんが、世界的にはかなりメジャーな大きな大きな運動となっています」

従業員が商品の陳列を続ける中、社長の熱い思いはマイクを通して店内に流れ続ける。この日は約25分間に及んだ。

ある従業員は「忙しくて途中途中でしか聞けない部分もあるが、勉強にはなる」と話す。別の従業員に「朝礼ではない」と尋ねると「これは...社長の思いを語っているだけ」との答えが返ってきた。

スーパーハルタ・春田晃秀社長
スーパーハルタ・春田晃秀社長
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オーガニック商品への転換—その背景にある家族の経験

かつては県内に10店舗以上を展開していたスーパーハルタ。しかし大手スーパーとの競争に勝てず、現在はいづろ店1店舗のみとなっている。

そんな中、6代目となる春田晃秀社長が約10年前から力を入れ始めたのがオーガニック商品だ。その背景には、社長自身の家族の経験があった。

「私の妹が免疫障害で命を落とした。私もアレルギーがひどかった。私の弟もアレルギーがひどくて。これだけ医療が進歩しているのに、これだけ病気が増えてきたのは食べ物が原因だと私は思っている」

春田社長は「大切な人の健康と命を守る食品スーパーでありたい」という思いを胸に、オーガニック商品の拡充に取り組んできた。

農家から直接仕入れる約100種類の野菜と果物

スーパーハルタの生鮮食品の仕入れ方法も独自路線だ。卸売業者などを介さず、約100種類の野菜や果物を農家から直接仕入れている。

「地元のローカルスーパーならではの取り組みとして、情報を聞いたらすぐ農家に行って『どういう栽培の仕方をしていますか?農薬、化学肥料、土作りどうされていますか?』と、生産者の思いを聞いて『じゃあやりましょう』と(契約する)」と春田社長は説明する。

この独自の品揃えは客にも好評だ。「珍しい食材がいっぱいある」「子供の健康も考えて食生活を意識するようになった」という声が聞かれる。

約100種類の野菜や果物を農家から直接仕入れている
約100種類の野菜や果物を農家から直接仕入れている

インスタライブ「ハルタショッピング」で全国から注目

オーガニックスーパーとしての認知度を高め、さらなる飛躍のきっかけとなったのがSNS戦略だ。

毎週水曜日の閉店後、午後8時から約1時間、インスタグラムでライブ配信を行う「ハルタショッピング」。春田社長自らが店で取り扱うおすすめ商品を紹介する。

「短鼻豚のウインナー!本当に肉のおいしさがわかるウインナーです!」「この脂が甘いんです!」と商品を実食しながら熱く語る姿に、視聴者からは「食べてみたい」「買ってみたい」といったコメントが寄せられる。

全国から注目されている「ハルタショッピング」
全国から注目されている「ハルタショッピング」

社長自身は「忙しい中でガーッとやっている感じがして...もうちょっとちゃんと構成作らないとね」と笑うが、この戦略は大きな成果を上げている。インスタグラムのフォロワー数はこの1年で10万人以上増加した。

春田社長は「おとといも大阪から来た、北海道から来た、イタリアから、オーストリアから来たとか。思いを形にして発信することで、全国からハルタに買い物に来てくれる。観光の起点になったりもしている」と手応えを感じている。

配信スタッフとの呼吸もバッチリだ
配信スタッフとの呼吸もバッチリだ

「食の大切さ」を鹿児島から全国、世界へ

春田社長の今後の目標は明確だ。「正しい『食』を伝えると同時に鹿児島の素晴らしい食材を全国、世界に発信したい。私も含めて従業員がしっかり勉強して、『食の大切さ』を発信できるのがハルタの強みだと思っている」

オーガニック商品の充実とSNSによる情報発信。食の大切さを鹿児島から全国に伝える老舗スーパーの挑戦は今後も続く。

(動画で見る:「フォロワー数10万人超 名物社長が手がけるオーガニックスーパーの秘密」

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