内密出産などの課題をめぐって熊本市の大西一史市長、慈恵病院の蓮田健理事長、2人のキーパーソンが10月、それぞれ海外の先進地を視察。蓮田理事長はフランスに行き、10月9日から13日にかけて出産関連の情報を管理する「国の専門機関」や「養子縁組機関」「産科病院」「妊娠葛藤相談窓口」などを視察した。
フランスでは「匿名出産」と呼ばれる、内密出産と同様の出産が法律で認められていて“先進地”に向かい何を見てきたのか、蓮田理事長に話を聞いた。
「匿名出産」法制化のフランスを視察
これまでに14例の「内密出産」を明らかにしている慈恵病院の蓮田健理事長は、フランスを視察した。

慈恵病院・蓮田健理事長:
(フランスでは)命や健康が優先で、赤ちゃんやお母さんのその後の人生のより良い手だてを探っている感じだった

1793年から内密出産と同様の出産を法制化しているフランスで、蓮田理事長は産科病院を訪問した。
赤ちゃんや母親の「心のケア」を重要視
フランスで重要視されているのは心理士による、赤ちゃんや母親の「心のケア」だ。

慈恵病院・蓮田健理事長:
フランスのドクターと同じ見解だったのは、不安を抱えている妊婦はおなかが小さく引っ込んでいる。ところが、安心してくるとおなかが出てくる

慈恵病院・蓮田真琴新生児相談室長:
母親が妊娠を認めていないから、自分(赤ちゃん)が迷惑にならないように、後ろの方にへばりついて存在を隠している

慈恵病院で相談室長を務めている妻の真琴さんは、内密出産を希望する母親たちへの接し方についてこれまで確信が持てなかったものの、相談室の中で手探りで実践してきた。その手探りでの実践が間違いじゃなかったことに安心していた。
慈恵病院・蓮田真琴新生児相談室長:
(内密出産希望などで)慈恵病院に来たら隠さなくていいので安心して「元気に産んであげたい」と思って赤ちゃんに声をかけてあげられるように、お母さんたちに接していたが、それが間違いじゃなかったと分かってうれしかった

慈恵病院・蓮田健理事長:
ゆりかごに預けられた赤ちゃん、内密出産の赤ちゃん、特別養子縁組前提で名前は明かすけど育てられない赤ちゃんの中には、抱っこすると体が硬い子がいる。安心するとだんだん体が柔らかくなる。フランスでは当たり前の話で、心理学の専門家が入ることで、早くから“調子の悪い赤ちゃん”と表現していて、フランスからすると「そんなことも知らないんですか」という話だったので
安全な出産に母子の心のケアの大切さ
子どもや女性をめぐる福祉が充実しているフランスから学んだのは制度の仕組みだけでなく、形のない「心」を大切にすることの重要性だった。

慈恵病院・蓮田健理事長:
重い課題を持ち帰ってしまった難しさはあるが、そこはフランスが200年前からやっていることを急速に縮めていかないといけないし。(日本は)感覚的に30年くらい後を行っている

慈恵病院の蓮田理事長は取り組んでいる「安全な出産」に加え、今後さらに母子の心のケアを大切にしていきたいと語った。
ドイツを訪問した熊本市の大西市長の先進地視察については以下の記事で紹介。
内密出産法制化のドイツを熊本市長視察 匿名でも行政サービスを受けられるヒントに 妊娠相談や性教育でも日本との違い
(テレビ熊本)