静岡県警察本部によると特殊詐欺の発生件数は近年増加傾向にあり、2022年度の被害額の合計は9億円を超えた。中でも投資詐欺に関する相談が全国的に増えているという。詐欺の手口や対策について被害者や弁護士の話を基に検証した。

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相次ぐ投資詐欺被害 全国的に相談急増

2023年9月。静岡県警は、金融商取引業に必要な登録を受けずに投資の助言をしたとして男女2人を逮捕した。2人はSNSを使って「1週間に2万円払えば投資の助言をする」などと勧誘し、100人以上から計1500万円余りを集めていたとみられている。

このうち男については女性(60代)に投資話を持ち掛け、200万円をだまし取ったとして再逮捕された。警察によると男は“億トレーダー”をかたり「俺が代わりに運用する」などと女性を信じ込ませていたという。同様の手口で被害にあったのは約50人。被害額が約3億円にのぼる。

詐欺被害に関する相談を年間100件以上受けている藤井鉄平 弁護士によると投資詐欺に関する相談は年代を問わず増えていて、最近では「ロマンス詐欺に投資詐欺を絡めてくるパターン」もあるそうで「2人が結婚した後の費用を稼ぐために良い投資案件がある」などと持ち掛けられるという。

また、SNSなどで投資に触れる機会が増えた大学生をはじめとする若者が「他の友達がやっているから安心」「友達が上手くいっているから自分もやってみよう」と安易な気持ちで儲け話を鵜呑みにし、被害にあうケースも多いそうだ。

2023年4月から6月に金融庁に寄せられた投資詐欺の相談件数を見てみると、前年同時期と比較して200件以上も増えている。

時間をかけ…被害者に聞く詐欺の手口

前出の“億トレーダー”をかたる男に200万円をだまし取られた女性に話を聞くことができた。

女性もきっかけはSNSだった。「ビリー」を名乗る“凄腕の10億トレーダー”が講師をするので「投資をやってみないか?」と募集があったという。

被害にあった女性
被害にあった女性

家族が病気を患っていた女性。治療費の足しになればと投資に興味を持ちグループに参加したそうだ。そして、SNSを通じて「ビリー」なる人物と連絡を取り合うようになった。

投資に関する詳しい知識を持っていただけでなく、「ビリー」を信じるに至った出来事があったという。それが証券会社の口座だ。何かの拍子に映り込んでいた口座は「金額がすごく、億はいっていた」。

そして女性が「ビリー」を信頼し始めた頃、あるメッセージが届いた。以下、やり取りを再現する。

女性:家族のことで時間と体力がありません
ビリー:こっちで動かしてあげる方がいいんじゃない?
ビリー:銀行に預けているくらいなら、ビリーに任し

提案を何度か断った女性。しかし最終的には200万円を振り込み、運用を任せてしまったという。その後、家族の手術費用が必要になったため、預けた金についてたずねると…。

女性:運用の調子はどうですか?
ビリー:まあ、ボチボチ
女性:家族の手術が決まったので元金だけでも返してほしいです
ビリー:わかった

しかし、これが「ビリー」との最後のやり取りとなった。連絡が途絶えたことで女性は詐欺であることに気づき、「長い時間をかけて信用させられた。ひどいなと思うが、だまされた自分もバカだった」と後悔を口にする。

女性によれば、同じSNSのグループに入っていた誰もが「ビリー」を信じ、なかば「絶対的な存在」になっていたとのことだ。このことから察するに、ある種のマインドコントロールのような現象が起きていたのかもしれない。

詐欺被害にあわないために

藤森弁護士は大前提として「おいしい話はない」と断言する。その上で振り込みを求められた際には「口座を確認することが重要」と説く。個人名義の口座や実在するかわからない企業名義の口座には注意が必要だ。なお、預金保険機構のホームページでは、すべてではないものの過去に詐欺で使用された口座を確認することが出来る。

さらに最近では「自動音声」による詐欺が横行している。具体的には「電気代が未払いのため停電になる。至急対応を」と言った音声が流れ、指示通りに操作すると警察や検察を名乗る人物につながり、助ける“ふり”をして最終的には通帳やキャッシュカードをだまし取るという手口だ。

こうした詐欺とみられる自動音声電話は2023年7月以降に急増していて、9月末までに全国で4000件以上も確認されている。

真偽を見極める判断力と、ふと立ち止まる冷静さが重要だ。

(テレビ静岡)

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