2017年にデビューしたJR西日本の豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」。“走るホテル”をコンセプトに山陰・山陽を周遊、乗車すること自体が旅の目的となる、日本を代表する「クルーズトレイン」のひとつだ。

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「瑞風」のツアーには途中、列車を降りて沿線の歴史や文化、美しい風景に触れる「立ち寄り観光」が用意されている。

その新たな「立ち寄り観光」の目的地に島根・大田市が加わることになった。

乗客が訪れるのは2024年秋のツアーからだが、人気列車による波及効果に、地元では早くも期待が高まっている。

「石見銀山遺跡」を立ち寄り観光地に追加

2017年に運行が始まった「トワイライトエクスプレス瑞風」は定員34人、専用車両で大阪・京都から山陽・山陰エリアを周遊する。

西日本各地の“埋もれた魅力”を掘り起こし、新たな旅の体験を提供するのも「瑞風」のコンセプトで、列車を降りて専用バスで沿線の見どころをめぐる「立ち寄り観光」も用意されている。

これまでのツアーでスポットが当てられた山陰の「隠れた観光地」は、「瑞風」効果に沸いた。
こうした中、10月12日、「瑞風」の列車長らが大田市を訪れ、新たな立ち寄り観光先に、大田市が加わることを楫野市長や地元の観光関係者に伝えた。

JR西日本「瑞風列車長」・亀井麻未さん:
大田市を訪問することができることになり、本当に光栄に思っている

2024年秋から、山口・下関駅から京都駅を目指す1泊2日の「山陰上りコース」に、出雲大社に代わる「立ち寄り観光」の目的地になった。

乗客は、温泉津(ゆのつ)駅で列車を降り、専用バスで地元・温泉津温泉や世界遺産「石見銀山遺跡」をめぐる。

JR西日本・佐伯祥一山陰支社長:
(このエリアは)日本の原風景で魅力もあり、“知る人ぞ知る”取り組みもあり、旅の質的な向上に資すると思ったので決定した

「瑞風」の旅の魅力を保つため、JRは定期的に立ち寄り観光の内容を見直していて、今回、ツアーの受け入れに特に熱意を示してきた大田市が選ばれた。

瑞風への思いが実を結んだ“おもてなし”

「瑞風」誘致へ、特に熱い思いを持っていたキーパーソンの一人が温泉津の町にいる。

温泉街の共同浴場「薬師湯」を管理する内藤陽子さんだ。

「薬師湯」を管理する内藤陽子代表
「薬師湯」を管理する内藤陽子代表

薬師湯・内藤陽子代表:
私たちの思いを伝えたいので、「瑞風」色の緑とゴールドで作っています

「瑞風」カラーの手作りののぼり旗を手に、内藤さんは今回の「立ち寄り観光地」追加を誰よりも喜んだ。

これまでも、「瑞風」は行き違いのため温泉津駅に停車。温泉津町では、内藤さんを先頭に地域を挙げて「瑞風」を出迎え、見送ってきた。

わずか5分の停車時間に見せた熱心な「おもてなし」が実を結んだ形だ。

薬師湯・内藤陽子代表:
(立ち寄り観光地になったことで)改めて、自分たちの地域の魅力や色々なことに気づき直して、今まで守ってきたものを未来につなげるきっかけになれば

“瑞風効果”で持続可能な観光地へ

「瑞風」の料金は、最も安いプランで36万5,000円と高額だが、チケットは今も抽選販売となっている。

その倍率は、運行開始直後には及ばないものの、2023年10月から12月の販売分で7.2倍と、依然“狭き門”だ。

そんな“特別な旅”の立ち寄り先に選ばれた島根県内の地域では、「瑞風」ならでは効果を感じていた。

雲南市広域観光・インバウンド推進室 桑原真由美室長:
雲南市を回って、「雲南市っていいところだな」と、またもう1回、自分で来てくれるお客さんもいる

現在のツアーで「立ち寄り観光地」になっている島根・雲南市。日本古来の製鉄法「たたら製鉄」や「出雲神話」に登場するヤマタノオロチ伝説ゆかりの地としてPRを図っているが、全国的に認知度が高い観光地とは必ずしも言えないのが実情だ。

それが「瑞風」の「立ち寄り観光」に組み込まれたことで、「たたら」にちなむスポットの認知度も上がり、一定の効果を感じている。

大田市・楫野市長:
「瑞風」の定員は少ないが、情報発信力は素晴らしいものがあると思う。(旅の体験を)お伝えいただいて、これがまた口コミで広がっていく、そういった形が良いのではないかと思っています

一過性ではない「持続可能な」観光地へ、「瑞風」の効果に期待を寄せた。

具体的なツアーの内容の検討はこれからだが、乗客の期待に応える「もてなし」をどのように用意できるかが、埋もれた観光地に“風”を呼び込むカギになりそうだ。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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