「読書の秋」、本が恋しくなる季節だ。島根・大田市の世界遺産「石見銀山」。その中で、往時の街並みが残る大森町に、ユニークな図書館が登場し、話題となっている。
商家だった古民家を改修した図書館のコンセプトは「まちを楽しくするライブラリー」。運営するのは大学生だ。本だけではなく、人との出会いも生まれるユニークな図書館をJALふるさと応援隊の牧内健将さんが取材した。
著名人の「人生に影響を与えた本」並ぶ
大田市大森町。世界遺産「石見銀山」の街並みを歩いていくと、牧内さんが趣のある建物の存在に気がついた。
この記事の画像(13枚)築200年以上と言われるかつての商家「松原家住宅」だ。2023年、“リノベーション”によって、この古民家に新たな命が吹き込まれた。
「まちを楽しくするライブラリー」と書かれたのれんをくぐると、和の雰囲気が感じられる内部に、たくさんの本がきれいに並べられていた。天井が低い和室にそびえる、ユニークな形の本棚は「行燈(あんどん)」をイメージしてデザインされたという。
棚には、島根・松江市出身の俳優・佐野史郎さんら著名人が選んだ「人生に影響を与えた本」が並んでいた。島根県にゆかりのある人などの「レコメンド」をきっかけに、300冊以上の本と出会うことができる。
JALふるさと応援隊・牧内健将さん:
その人が、この本から何を感じたのだろうって、想像しながら選ぶ楽しさがありますね
石見銀山の坑道モチーフの絵本コーナー
さらに、絵本コーナーもユニークだ。
さまざまな本が、トンネルのような棚に並ぶ「えほんのどうくつ」。「どんどん奥に進んで行きたくなる」と、牧内さんも興味をひかれた本棚のモチーフは、かつて銀が採掘された「石見銀山」の坑道だ。個性豊かな絵本が200冊以上並んでいる。
このライブラリーでは本の貸し出しはしていないが、本を手に取り、館内の好きなところで自由に読むことができる。仕事や勉強に使える“コワーキングスペース”、さらにカフェも併設され、地元の素材を使ったスイーツを楽しむこともできる複合施設になっている。
そして、夕方になると、子どもたちの「ただいま」がライブラリーにこだまする。下校した子どもたちが、まるで家に帰るようにここを訪れ、にぎやかな笑い声に包まれる。従来の図書館の静寂なイメージとは正反対だ。
“学びの場”+“まちを楽しく”する拠点に
ユニークなこのライブラリーは、島根県立大学のサテライトキャンパスとして開設され、木曜から日曜に一般開放されている。運営スタッフも学生たちだ。
島根県立大学・竹内彩乃さん:
運営していく上で、知識だったり、どういう観点で経営していかないといけないのか、また、商品を作っていく上で、お客さまの意見をどれぐらい取り入れて、どれぐらい実現できるか考えながらするのが勉強になっています
商家だったこの建物は長年空き家になっていたが、石見銀山に拠点を置く義肢装具メーカー「中村ブレイス」が買い取り改修。島根県立大と連携し、「学生たちの学びの場所」に生まれ変わった。
島根県立大学企画調整課・近藤秀行さん:
自分のやったことが、一般の方にダイレクトに影響を与えるので、失敗や成功のリアクションが生に感じられる
まさに、生きた経験のできる「学びの場」だ。先ほどの著名人の「レコメンド」を依頼したのも、すべて学生たちだ。名前は「図書館」だが、観光客や地域の住民が本をきっかけにさまざまなものに出会う場になっている。
観光客:
本を読めるからいいし、畳がいい。本屋さんに行ったら、表紙が見えなくて手に取らないタイプの本も、こういう風に見えると手に取りやすい
本をきっかけに人が集まる仕掛けがふんだんに施されたユニークなライブラリー。本と人、人と人がつながり、“まちを楽しく”する拠点として、石見銀山・大森町にとって欠かせない場になっている。
(TSKさんいん中央テレビ)