中東・イスラエルとパレスチナ自治区のガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの戦闘で、多くの死者が出ている。ガザ地区にもイスラエル軍の報復とみられる空爆があり、ミサイル攻撃など、報復の応酬が続いている状況だ。
イスラエルとハマスが戦争状態に
中東のイスラエルと、パレスチナ自治区のガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの戦闘で、双方の死者は1100人を超えた。
この記事の画像(13枚)地元メディアによると、ハマスが7日から行っているイスラエルへの大規模攻撃で、少なくとも700人が死亡、100人以上が人質として連れ去られたという。
特にガザ地区周辺の音楽祭では約260人が殺害されるなど、多くの人が集まるイベントが狙われた可能性がある。これに対し、イスラエル側は報復の空爆を続けていて、これまでにパレスチナ側の死者は413人に上った。双方の死者は合わせて1100人を超え、中には外国人の犠牲者も多く含まれている。
タイ政府は、ハマスによる攻撃でタイ人12人が死亡したと発表。さらに、アメリカ当局はアメリカ人数人が死亡したとしている。
こうした中、イスラエル・テルアビブ空港では、ハマスによる攻撃の恐れがあるとして、アメリカン航空やエールフランスなど欧米や中国のいくつかの大手航空会社が9日の欠航を決めた。
記者:
これからイスラエルのテルアビブ空港に飛ぶ予定だったのですが、ハマスの攻撃予告があったということで、隣の国ヨルダンのアンマン空港に急きょ変更して、陸路でイスラエルに入ることにしました。
状況が悪化する中、アメリカのオースティン国防長官は8日、声明を出し、最新鋭の原子力空母ジェラルドフォードを中核とする空母打撃群を派遣すると発表した。
外務省によると、イスラエルやガザ地区には1200人余りの日本人が在留していて、情勢の悪化が懸念される。
ハマスの戦闘員がフェンスを破壊
このハマスによる「異例の奇襲」について、取材センター室長の立石がお伝えする。
これまでとは性質の異なる大きな衝突、アメリカやロシアといった大国を巻き込み、日本も他人事ではいられない状況となっている。
9日夕方時点での最新情報では、イスラエル側で死者は700人以上、負傷者も2100人以上となっている。一方、報復攻撃を受けたガザ地区で死者は413人と、2300人以上の負傷者が出ている。
外務省によると、イスラエル及び西岸、ガザ地区などには約1200人の日本人が在留している。そして、ハマスはイスラエルの兵士や市民を連れ去り100人以上を人質としていると主張している。
この「ハマス」はパレスチナ・ガザ地区を実効支配する武装組織で、イスラム国家の樹立を目指してイスラエルと対立している。欧米では「テロ組織」と認定されていて、非常に緊張が高まっている。
今回の攻撃については、その内容に加えて様々な映像がSNSなどで公開され、世界中に衝撃を与えている。
ハマスの戦闘員が、イスラエル側との境界を破壊して侵入した際のものとみられる映像も公開された。これまでも双方の衝突はあったが、地上からハマスの戦闘員がフェンスなどを壊して入ってくるというのは極めて異例だ。
フェンスを重機で壊してイスラエル側の戦闘車両を占拠して歓喜の声を上げているような映像もある。その他にも、バイクで入ってくる部隊の映像など、かなり詳細な映像が出てきている。
さらに、ハマス側はイスラエル国内で開催されていたトランス系ダンスミュージックの音楽フェスを襲撃。人質として女の人が連れ去られていくところなどが克明に記されている。この会場では、約260人の参加者が亡くなったという情報が入っている。
人々が踊っていたところが襲われたということで、パリの劇場テロやイギリスでのアリアナグランデのコンサート爆破などを思い起こすような、大規模なもので、死者には外国人も多く含まれているとみられている。
一方、ガザ地区にもイスラエル軍の報復とみられる空爆があり、互いにミサイル攻撃などでの、報復の応酬が続いている状況だ。
パレスチナ問題の背景に“2つの悲劇”
今回の件で気になるのは「イスラエル側は今回の攻撃を全く予測できなかったのか」という点だ。この点について、国際取材部・江藤デスクがお伝えする。
イスラエルは50年前の10月のユダヤ教の祝日にも、周辺のアラブ諸国から奇襲攻撃を受け、結果的にシナイ半島の一部を失った「第4次中東戦争」の苦い経験がある。
これを機にイスラエルは、情報機関「モサド」などを徹底的に強化し、周辺のアラブ諸国の武器の輸送や、軍やテロリストなどの情報を集めて動向を事前に察知するなど、一定の成果を上げてきた。
そのモサドをもってしても、裏をかかれたのは大きい。
ハマスは民間人の人質を取っているようだが、これは今後の行方にも大きく関わるものだろうか。
イスラム組織ハマスによる攻撃でタイ人11人が連れ去られたほか、メキシコ人2人が連れ去られたなど、各国の外務省などから様々な情報がこれまでに入っている。
今後、ハマス側はイスラエルの報復攻撃に対し、人質を人間の盾に使う恐れもある。各国の人質をめぐり、今後のイスラエル軍の動向に世界が注目している。
このイスラエルとパレスチナ自治区の問題は、非常に複雑で長期に渡って問題となっている。
まず、パレスチナ問題のそもそもの根源は「2つの悲劇」にあると言われている。
一つ目は、「イスラエル建国」を巡る話だ。ユダヤ人は、長い歴史の中で世界に離散し、迫害を受けやっとの思いで1948年にイスラエルを建国した。
ユダヤ人としては、二度と迫害の歴史を作りたくない。そうした一つの悲劇がある。
二つ目は、その結果、パレスチナに住んでいた人が「イスラエル建国」によって故郷を追われたことだ。今パレスチナ人が住む「ガザ地区」はイスラエルの占領下で、人口に対して土地がかなり狭く、日本の種子島ほどの面積に約200万人ものパレスチナ人が住んでいる。人口密度が非常に高くなり、劣悪な住環境も指摘されている。
この「2つの悲劇」が歴史的にはあってその後も対立・紛争が絶えなかった。
ハマスは”アラブ諸国からの疎外感”から武力行使か
では、今「ハマス」がイスラエルを攻撃しているのは、どうしてなのだろうか。
これには、大きく2つの見方がある。
一つめは、7月にイスラエル軍がパレスチナ自治区の難民キャンプを攻撃し、パレスチナ人200人以上が亡くなったことだ。この時ハマスは強く反発した。
そしてもう一つは、最近イスラエルが、サウジアラビアなどのアラブ諸国と関係を正常化しようとしていることだ。
アメリカはイスラエルとサウジアラビアの関係正常化を後押しし、防衛条約締結などを見返りに、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化を進めている。
こうした状況にハマスは「自分たちはアラブ諸国から見捨てられるのではないか」、つまり「パレスチナ問題が置き去りにされているのではないか」という反発から牽制して攻撃している、という見方だ。
今後どうなるのか、地上戦に発展するシナリオもあるのだろうか。
8日のワシントンポストの記事では、24~48時間以内に、イスラエル軍による地上侵攻の可能性を指摘している。ただ、今回ハマス側は100人規模の人質をとっている。そこにはイスラエル人も含まれれば、他の国の人も含まれる。
そういう中でどういう攻撃ができるのか、どういう交渉ができるのか、特殊部隊が先に入れるのではないかという見方もあるが、非常に厳しい状況だ。
(「イット!」 10月9日放送より)