ジャニーズ事務所が2日に開いた2度目の会見をめぐり、新会社の副社長に就任する井ノ原快彦氏のある発言がSNSで波紋を呼んでいる。専門家は「論点すり替えの行為」だと指摘している。
“子供も見ている”発言は「論点すり替え」
「なぜ拍手が起きたの?」「“子供も見てるから”って発言すごい違和感があった」
(「X」の投稿より)
それは、2時間に制限された会見が終盤を迎えた頃のことだった。「ちゃんと順番回して!」「司会がさばけよ!司会が!」と、質問ができずヒートアップした記者らに対し、井ノ原氏はこう呼びかけた。
この記事の画像(31枚)「ちょっと一言いいですか。やはりあの、こういう会見の場は全国に生放送で伝わっておりまして、小さな子供たち、自分にも子供がいます。ジャニーズJr.の子たちもいますし、それこそ被害者の皆さんが自分たちのことでこんなに揉めているのかっていうのは僕は見せたくないので、できる限りルールを守りながら、ルールを守っていく大人たちの姿をこの会見では見せていきたいって僕は思ってますので、どうか、どうか落ち着いて、お願いします」
井ノ原氏の“子供たちも見ているから、ルールを守って”という訴えに、一部の記者からは拍手が沸き起こったが、この発言にSNSでは異論が相次いだ。
「あなたの事務所が隠してきた子どもに対する犯罪で大変なことになっているのに落ち着きましょうってすごい違和感」
「子どもを盾にするなんて…」
(「X」の投稿より)
井ノ原氏の発言には、東京大学大学院総合文化研究科の斎藤幸平准教授も違和感を抱いたという。斎藤氏は「私が違和感を持ったのは、ルールを破った側がルールを語り、子供への性加害をした会社が、“子供のため”という立場を出して相手を非難すると。典型的な『トーンポリシング』と呼ばれる、論点すり替えの行為」と指摘する。
この会見は、294人もの記者らがつめかけた注目度の高いものだった。会見中、井ノ原氏は「落ち着いていきましょう」「1人1社1問という話があった以上、ちょっと皆さん冷静に」と、焦る記者らを何度もなだめた。そして、「先ほどご質問されたのを僕も聞いちゃったんですよ」と時にはユーモアを交え、スムーズな進行への協力を呼びかけた。
しかし斎藤氏は、「(会見を)2時間で制限したり、一問一答でそもそも聞きたいことをなかなかみんな聞けない、そういう状況を作り出しているのはジャニーズ側」だと指摘。「それにもかかわらず、『子供たちが見ているんですから』というような論点ずらしによって、あたかも一部の人たちが悪いかのような印象操作をするというのは非常に残念だった」と見解を述べた。
「ジャニーズ側に同調」した記者側にも問題
一方で、記者の側にも問題があったと斎藤氏は指摘する。
「驚いたのが、そこで(一部の)記者の方たちが拍手をして、『ルールを守れ』『そうだ、そうだ』とジャニーズ側に同調したことですね。記者の人たちがやはりこうしたルールをジャニーズ側が押し付けるのは、おかしいんじゃないか?一丸となって文句を言うべきだったと思う」
当日、会見場で取材をしたフジテレビの木村拓也アナウンサーは、「あの拍手の際は、私も異様な空気だなというのは感じた。私は拍手はしなかったが、ただ、前段の流れの中で、質問で当てられた人に対して遮るように他の記者が入ってしまったり、声を荒らげてしまったりすることもあり、そうした中であの拍手につながるような空気感というのはすでにできていたようにも感じた」と当時の状況を振り返る。
一方、住田裕子弁護士は、「記者会見というのは、真実を究明して、相手に意見を聞いて、それを正したり疑問点を突っ込んでいくという場ですから、それに対しては感情論で批判したり、糾弾してはいけない。井ノ原さんがなさったことは、私はやっぱり論点ずらしだったと思いますし、対決の構造がずれてきたなと思います。それでも、ジャニーズ事務所に対してひょっとしてメディア側も忖度している部分があるかなと、今回の拍手を見て思ってしまいました」と述べた。
(「イット!」10月4日放送より)