木の家具に囲まれた落ち着いた空間。コロナ過以降、スローライフ的な住まいへの関心が高まっている。広島の木製家具製作者と空間デザイナーが「心地よい空間での生活」をテーマにコラボ展示会を広島市の百貨店で開いている。
釘を使わず木を組んだ“さしもの”家具
木目の美しさが際立つ棚。広島県産の栗の木で作られている。
この記事の画像(24枚)この家具には、見た目の美しさ以外にも大きな特徴がある。
さしものかぐたかはし・高橋雄二さん:
「つまみ」ではなく「握り」なのです。握って引くという感じにしたい。
高橋さん:
離れてみると丸い棒に見えるけど、握ってみると手掛かりがちゃんとあるようになっている
記者:
引っ掛かりますね。しっかり握れますね。
高橋さん:
ちょっとしたことなのです
広島県熊野町に工房を持つ高橋雄二さんは、飛騨高山で洋風家具の技術を学び、その後、京都で指物(さしもの)と呼ばれる木工技術を学んだ。
「指物」とは釘を使わずに木材を組み、その組み手を見せない細工を施した木工品のこと。
高橋さん:
洋家具を作るのですが、日本の考え方や技術を自分なりに咀嚼(そしゃく)して、自分が扱いたい暮らしの家具を作りたい
高橋さんの作品が展示販売されるイベントの前日、会場の空間をデザインしているのは石村由紀子さん。
石村さんは、40年前に奈良県でカフェと雑貨の店をオープン。その後、全国で次々と空間デザインを手がけてきた。
「空間デザイナー」という職業もなく、カフェという概念もはっきりとしない時代から活動してきたが、いつの間にか、石村さんは空間デザインのパイオニアと呼ばれるようになる。
くるみの木主宰・石村由紀子さん:
喜んでもらうことが全ての一番なのです。家に友達が来て喜んだり、夫が喜んだり、人を喜ばすことと、自分の目を喜ばすことと。心地いいということは、そういうところからくると思う
木の家具と植物の空間がコラボ
2人が初めてコラボして開催するイベント。
石村さん:
高橋君の家具がメインなので、”指物(さしもの)”という本物の木の家具と寄り添うものと思ったら、緑とか枝ものとか、そういうイメージです
オープンぎりぎりまで、お客の目線で見つめ、納得いくまで何度でもやり直す。
石村さん:
自分がお客なんだと思う。店主でもあり、自分が一番のお客なのかもしれません
迎えたイベント初日。会場は季節の草木があしらわれた空間に仕上がった。
高橋さんの家具には、見た目の美しさにも仕掛けがある。
高橋さん:
正面の木目はつなげていたりとかしてます。
客:
そこですよね。高橋さんのすごいところは。一見ちょっと見逃しそうなところがきちんと美的にしてある
皿や食器など、その他の商品も人気がある。
客:
すごくいいですね。わくわくします。来てよかった
百貨店の一角に誕生した「心地よい」空間には、プロたちが仕掛ける様々な工夫と妥協を許さない熱い思いが詰まっている。
このような木に囲まれた落ち着いた空間が徐々に広がりを見せている。
この展示会「さしものかぐたかはし×くるみの木」は広島三越で10月10日(火)まで。
(テレビ新広島)