9月初旬、岡山県北で一人で登山をしていた50代の男性が遭難し、死亡した。登山経験が豊富だったという男性はなぜ遭難したのか。現場を検証した。

登山アプリの情報を基に捜索

岡山・津山市と鳥取県にまたがる三原山。山頂は「マッコウ」と呼ばれ、眺めがよい事で知られている。

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9月3日、「マッコウに行く」と家族に告げて家を出た総社市の59歳の男性が行方不明となった。男性の車は、津山市内の県道に残されていた。

2日後、山頂近くで男性のスマホとつえを発見。不明から4日後、車とは逆の方向で男性が見つかり、死亡が確認された。

津山警察署・延藤和己地域課長:
草木が生い茂り、捜索は困難だった。登山アプリの位置情報を基に捜索を続けた

男性の歩みは、GPSで位置を記録する「登山アプリ」に残されていた。アプリには「みまもり機能」があり、家族などが位置情報を共有することができる。

男性の足取りを追跡

毎週のように登山していたという経験豊富な男性が、なぜ遭難したのか。現地に詳しい小椋さんに案内してもらい、その足取りをたどった。

県道に車を止めた男性は、林業の作業用に作られた道から、山に入ったとみられる。この道をしばらく歩くと、大量の流木があった。

線状降水帯による大雨で流れてきた流木
線状降水帯による大雨で流れてきた流木

ーー木、大丈夫ですか?

小椋健治さん:
大丈夫ですよ。この間の台風で谷から流れてきた。かなりの水が出たので

作業用の車も入る道だが、8月の台風7号で線状降水帯が発生し、至る所が流木に遮られていた。

そして、車のあった場所から5km弱。

ーーここから道は?

小椋健治さん:
道はないです。県境を目指して行ったら、この登山道に当たる予定です

県境まで約200メートル、道なき道を行く。帰りに迷わないよう、ピンクのリボンを印につけていく。

県境は山の稜線(りょうせん)にある。少し視界が開けるが、やはり道がないことに変わりはない。

三原山は登山の上級者向けで、より難しい岡山県側から登る人は少ないそうだ。登山道があるのは鳥取県側。アプリを頼みの綱に、合流点を探す。

しばらく歩くと、案内板を発見。どうやら鳥取県からの登山道に合流したようだ。

しかし道とは名ばかりで、線状降水帯の影響もあってか、行く手を何度も遮られる。気づけば道を外れることも何度かあった。すると…。

小椋健治さん:
ここが道のはず

男性のスマホが見つかった場所に着いた。根曲竹と呼ばれるささがびっしりと生え、行く手を阻む。登山アプリに残された位置情報によると、男性は、このやぶをしばらくさまよった後、スマホを落としたと見られている。

小椋健治さん:
こんな所、よく捜索隊が歩いたな

何かの理由でやぶの中に入ってしまったのか。

さらにやぶの中を歩くと、標高1,115メートル。三原山の山頂、マッコウへ到着した。スマホを落とした男性がこの景色を見たのか、確認することはできない。そして男性は、どのように下山を試みたのだろうか。

亡くなったのは行方不明の直後か

意識のない男性が見つかったのは車とは逆方向、マッコウから北東へ約2km離れた場所だった。男性は谷底の沢で見つかった。

今回その場所には行かなかったが、そこに続く谷は、数10メートル下を見下ろす切り立った崖で、足を踏み外す恐怖を感じた。

小椋健治さん:
山の中はかなり荒れていた。人が来ないと道も荒れる

たった一人で頂上のマッコウを目指した男性。スマホを落とし、不安が増す中、何を思い、どのような行動を取ったのか。亡くなったのは、行方不明になった直後と見られている。

スマホを落とした後の男性は、車と逆の方向に歩いていた。位置が確認できなかったからなのか、あるいは、あえて鳥取県側に下りようとしたのかは、定かではない。

警察庁の統計によると、キャンプブームもあって、登山をする人は増えている一方、2022年度の山での遭難は件数、遭難者数ともに過去最多だという。

(岡山放送)

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