今年は台風の上陸が少なかったことから、窓のサッシ周りをあまり気にしなかったかもしれない。

実は強い雨風のとき、室内の窓のサッシ周りが雨水でぬれたりすることがある。窓を閉めたはずなのに気付いたら、下枠に水がたまっていたりするのだ。

これはなぜ起きるのだろう。まだまだこの季節、風が強い日には横なぐりの雨になる日もあるはず。トラブルにつながる可能性はあるのか。一般社団法人日本サッシ協会の担当者に聞くと、意外な注意点がわかった。

不具合ではないが室内にあふれると話は別

――強い雨風のとき内側のサッシに水がたまるのはなぜ?

サッシは可動する「戸」、周りのフレームである「枠」で構成されています。戸が閉まっている場合も下枠に雨水がたまることがありますが、これは商品の特性(水をためる構造)で不具合ではありません。

暴風時には、室外の雨水は風の圧力に押され、サッシの下枠にたまっていきます。たまった雨水は一定の高さになると重力で押し返す力が働きます。この押し返す力で室外からの浸水を防ぐバランスをとり、水密性(雨を伴う風が吹いた時の室内浸水を防ぐ性能)を確保するのです。暴風が収まると室外の圧力が小さくなり、下枠内にたまった水は徐々に自然排水されていきます。

一般的なサッシの仕組み。※画像の左側が屋外、右側が屋内(提供:一般社団法人日本サッシ協会)
一般的なサッシの仕組み。※画像の左側が屋外、右側が屋内(提供:一般社団法人日本サッシ協会)
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――では、サッシに雨水がたまるのは悪いことではない? 

サッシの水密性は、JIS(日本産業規格)による試験法と性能等級が定められています。その性能基準は等級ごとに定めた風圧で水を噴霧したとき、サッシ枠から室内側(サッシ枠から内側)へ水があふれ出したり、流れ出したりしないことを規定しています。つまり、降雨時に下枠内へ水がたまっても室内へあふれ出したり、流れ出したりしていなければ、水密性能を確保できているといえます。

水の重力で浸水を防ぐバランスを取っているという(提供:一般社団法人日本サッシ協会)
水の重力で浸水を防ぐバランスを取っているという(提供:一般社団法人日本サッシ協会)

――室内に「流れ出る」「あふれる」のはどんな要因で起きる?

戸をしっかり閉めていない、窓のクレセントやハンドルを施錠していないと、水密性が確保できません。特に注意してほしいのが、下枠のレール部分です。ごみや砂、落ち葉などが堆積していると、下枠内の深さが浅くなり、水があふれてしまうことがあります。

トラブルを未然に防ぐ3つのポイント

――サッシから雨水があふれると、どんな影響が出る?

室内側に雨水があふれると、床や内装等が部分的に濡れてしまいます。その状態が続くと、住宅内装の汚損(変色やカビの発生など)や構造材の腐朽をまねき、建物の耐久性を損なうおそれがあります。

室内側に水が吹き込んだときの対処法(提供:一般社団法人日本サッシ協会)
室内側に水が吹き込んだときの対処法(提供:一般社団法人日本サッシ協会)

――あふれたとき応急措置としてできることは?

あふれだしが起きた場合は、応急策としてサッシの下枠と戸の間にタオルや布を置いて、雨水が継続してサッシ枠から内側の室内へ浸水しないよう対応ください。

サッシ下枠の汚れは早めの清掃を(画像はイメージ)
サッシ下枠の汚れは早めの清掃を(画像はイメージ)

――サッシ周りのトラブルを防ぐポイントは?

3つあります。1つ目は戸を枠へしっかり閉めてクレセントとハンドルを施錠することです。家には多くの窓があるので、戸を閉めたつもりでも、クレセントだけが施錠されていない、最後までしっかり掛かっていないことがあります。

2つめは、サッシ下枠のレール部分に堆積したほこりや砂を取り除く清掃です。清掃は、掃除機のノズルでほこりを吸い取るか、割りばしなど細い棒状のものに布を巻いて取り除く方法があります。強い雨風の前に行うことをお勧めします。

窓用シャッターの取り付けもお勧めという(画像はイメージ)
窓用シャッターの取り付けもお勧めという(画像はイメージ)

――3つめのポイントは?

3つめは、窓用シャッターの取り付けです。水密性能を持つサッシとシャッターを併用すると、シャッターを閉めることで、外からの雨水浸入をさらに抑制できます。強風による飛来物から窓ガラスを守ることもできますので、暴風雨や台風への対策としては特にお勧めします。

雨風が落ち着いたらサッシ周りの確認を

――強い雨風の後、サッシ周りで確認してほしいところは?

室内側のサッシ周りの壁で浸潤している、ぬれている場所がないか確認してください。サッシ上部の壁がぬれているなら、サッシ以外の場所から漏水している可能性があります。壁が濡れていても、時間が経過すると乾いてしまうので、ぬれた場所や状況を覚えておくと、補修する際に原因を確認するための有用な情報として役立ちます。早めに確認してほしいです。

開閉や施錠がしっかりできるか確認を(画像はイメージ)
開閉や施錠がしっかりできるか確認を(画像はイメージ)

――このほか、注意点してほしいことはある?

台風など強い雨風のあとは、窓やドアの開閉がしっかりできるか、ガラスにひび割れがないかなどを確認ください。もし開閉がしっかりできない、ガラスがひび割れしていた場合は補修や交換が必要ですので、建築会社や工務店、管理会社へご相談ください。



強い雨風のとき、サッシの下枠に水がたまるのは構造上の仕様だが、施錠がしっかりできない、汚れがたまっている状態だと、室内側に水があふれてしまうことがあるようだ。よくぬれる場所があるなら、状態を確認するといいかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。