36人が犠牲となった京都アニメーション放火殺人事件の裁判員裁判で20日、遺族が直接、青葉被告に質問した。遺族からの問いかけに対し、初めて青葉被告は謝罪の言葉を口にした。

「きちっと前に立って、青葉被告の目も顔も見て、聞いていこうと思う」

事件で犠牲になった寺脇晶子さんの夫は20日、法廷に入る前に、法廷で初めて青葉被告と向き合い、事件について心境を語ってくれた。

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寺脇(池田)晶子さんの夫:
裁判に参加しようと思ったのは晶子に報告せなあかん、なんでこんなことになってしまったのか

晶子さんは、人気アニメ作品「涼宮ハルヒの憂鬱」のキャラクターデザインを手がけるなど、京アニを代表するアニメーターだ。

事件の後、小学生の長男が布団の中に隠れて泣いている日もあったが、きょうまで2人で支え合って過ごしてきた。

寺脇(池田)晶子さんの夫は、裁判所に向かう車の中で、質問に臨む気持ちをこう語った。

寺脇(池田)晶子さんの夫:
まだ自分で気持ちの整理もすることが難しいような子供に、これだけ過酷な試練をあなたは与えたんだよって。(青葉被告が)したことによって、どんなことになるのかって、分かってた?反省してるの?って

これまでの裁判で青葉被告は「京アニに小説を盗用されたほか、京アニの小説コンクールに落選したことで恨みを募らせた」と説明。”闇の人物”が裏で糸をひいていたと話すなど、時には理解しがたい考えを法廷で語ってきた。

弁護側は動機について、「“闇の人物”と京アニが一体となって、自分をからかう嫌がらせをした」として、妄想の影響があったと無罪などを主張。

一方、検察側は「妄想を募らせ、筋違いの恨みによる復讐(ふくしゅう)」として完全責任能力があったと主張している。

寺脇(池田)晶子さんの夫:
今の(青葉被告の)印象としては本当に思い込みとか、筋違いな話ばかりしているから、すごく身勝手な方だなって。きちっと前に立って、青葉被告の目を見て、顔も見て、聞いていこうと思う

法廷で初めて謝罪の言葉

そして、20日正午ごろ、遺族たちによる被告人質問が始まった。検察官の横に立ち、大きくため息を吐いた寺脇晶子さんの夫は声を震わせながら青葉被告に問いかけた。

寺脇(池田)晶子さんの夫:
私は涼宮ハルヒの憂鬱などで総作画監督、キャラクターデザインをしていた池田(本名:寺脇)晶子の夫です。あなたはコンビニや派遣で働いている時、うまくいかない時に親族、友人に人生相談できる人はいましたか?

青葉真司被告:
えーっと、基本的にはおりません。自分で起こった物事は自分で片付ける方針でなっていました

これまでの被告人質問と変わらず、淡々と答える青葉被告。

寺脇(池田)晶子さんの夫:
池田晶子は今回の事件のターゲットでしたか?

青葉真司被告:
うーん

寺脇(池田)晶子さんの夫:
池田晶子がいることはご存じでしたか?

青葉真司被告:
作画監督として務めている認識はありましたが、ターゲットとして厳密に誰というより、京アニ全体を狙う認識。誰か個人という認識はありませんでした

寺脇晶子さんの夫は最後に声を詰まらせながら、こう質問した。

寺脇(池田)晶子さんの夫:
事件前に放火殺人をする対象者に家族、特に…特に子供がいる事は知っていましたか?

少し間を空けて、青葉被告は「申し訳ございません。そこまで考えなかったのが、自分の考えであると思います」と答えた。青葉被告は、遺族からの問いかけに、法廷で初めて謝罪の言葉を口にした。

一方で、別の遺族の代理人から「被害者の立場には立たなかったのか」と質問されると、青葉被告は「京都アニメーションは(小説を)パクったりしたことに何も感じず、良心の呵責(かしゃく)はないのか」と反論した。

今後の裁判では、青葉被告の精神鑑定をした2人の医師の証人尋問も予定していて、責任能力をどう判断していくのか注目される。

(関西テレビ「newsランナー」2023年9月20日放送)

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