100歳を目前に控えながら、今なお高さ約3メートルのモニュメント制作に向き合う彫刻家がいる。文化勲章受章者で鹿児島市在住の中村晋也さん(99歳)だ。新作のテーマは、江戸時代から約300年にわたって禁じられた浄土真宗の信仰「かくれ念仏」。2026年に迎える禁教解除150年の節目に向け、中村さんの魂が込められた作品がいま、静かに形をなしつつある。
アトリエで向き合う、99歳の「使命」
鹿児島市内にある中村さんのアトリエ。真剣な表情でノミを動かすその姿に、年齢を感じさせる気配はない。
新作は大きな手のひらが合わさり、その下に生まれた空間の中に念仏を唱える人々を表現した作品だ。高さ約3メートル、幅約1.8メートル、奥行き約1メートルという大型モニュメントで、約2年前から制作が続いている。

依頼したのは西本願寺鹿児島別院。2026年が浄土真宗の禁教解除から150年の節目にあたることから、この歴史的な意義を刻む作品として中村さんに制作を依頼した。
「かくれ念仏」とは何か
鹿児島では江戸時代から約300年にわたり、浄土真宗の信仰が禁じられていた。禁教下においても信仰を捨てなかった「かくれ門徒」の人々は、洞窟などに身を潜めながら念仏を唱え続けた。その洞窟は今も県内各地に残されており、地域の歴史と信仰の深さを静かに物語っている。

新作はこの歴史的背景を題材にしており、信仰を守り続けた人々の姿を力強く表現している。
「若き薩摩の群像」から「釈迦八相像」へ、半世紀を超えた軌跡
中村さんはこれまで、JR鹿児島中央駅前に設置された「若き薩摩の群像」をはじめ、2023年に奈良県の薬師寺に奉納された「釈迦八相像」など、ダイナミックなモニュメントを数多く手がけてきた。

今から12年前、作品制作への情熱についてこう語っていた。
「使命ですよね。僕がこれをしなかったら当分やる人はいないんじゃないか」
その言葉は、今も色あせていない。
「自分の足跡だから。いいも悪いも」
作品とは何かを問われた中村さんは、こう答えた。
「自分の足跡だから。いいも悪いも」

「でも、私がこの仕事を自分の生涯の仕事として選んだことは間違いではなかった」
これからも作品を作り続けるかという問いには、迷いなく言葉が返ってきた。
「そうでしょうね。それがなかったら中村晋也という人間はいない」
100歳を迎えてなお「自分がやらなければ誰がやるか」という気概を持ち続ける中村さんにとって、制作とは生そのものだ。

10月下旬、鹿児島別院でお披露目へ
作品は富山県で鋳造が行われ、完成後は2026年10月下旬に西本願寺鹿児島別院で正式にお披露目される予定だ。
約300年にわたる禁教の歴史と、それでも信仰を守り続けた人々の姿。その記憶を、99歳の彫刻家が渾身の力で石と金属に刻み込もうとしている。鹿児島の地に深く根ざした歴史が、中村晋也という人間の手を通じて、新たな形で後世へと受け継がれようとしている。
【動画で見る▶今年100歳 彫刻家・中村晋也(99) 飽くなき制作意欲と作品にかける思い】
