近年多様化する出会いの形。中でも「婚活アプリ」の利用者は増えている。スマホ1台で異性と出会うことができるが危険も潜む。婚活アプリで知り会った男性からお金をだまし取られたという女性が鹿児島テレビの取材に応じ、その胸の内を打ち明けた。

両親の介護が終わり 第2の人生を歩むため

「絶対許せない。とにかくお金を返してほしい」と怒りをあらわにして語る、鹿児島県内に住む50代の女性。7年前に夫と離婚し、その後同居していた介護が必要だった両親も他界。このタイミングで婚活アプリを始めた。

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女性は「介護が終わって時間ができて『私はこれから一人なんだな』という寂しい気持ちもあって…」と話す。

第2の人生を歩むため、友人に勧められて始めた婚活アプリで出会ったのが、銀行で働くという50代の男性だった。

「笑顔だったので、好感が持てた。最初会った時に『結婚を前提に付き合ってほしい』と言われた」と振り返る。

初めて会った時に「結婚を前提に付き合ってほしい」と言われ
初めて会った時に「結婚を前提に付き合ってほしい」と言われ

そこから2人の交際がスタート。「両親を亡くした寂しさが一番大きかった」と感じていた女性にとって、この男性と過ごす時間は「誰かと話ができる。悩みを打ち明けられる」と感じ、孤独を忘れることができるかけがえのないものだった。

「私は助けられたと思った」と感じたが、交際が始まってから1カ月もたたないうちに、男性からある話を持ちかけられた。

約2年半で2000万円以上を渡す

女性:
「法人の担当だから金額が大きい。何千万、何億のノルマがある」と言っていた。ノルマ達成のため200万を預金してもらえないかと

結婚すると思っていた女性は、男性を信じ200万円を預けた。するとノルマのほかにも「身内枠で高い金利の預金プランがあるから預金してほしい」「銀行のお金が合わなくて手出しをしないといけなくなった。足りない分を貸してほしい」と、男性の要求は徐々にエスカレートしていった。

男性は銀行名入りのグッズを持っていたという
男性は銀行名入りのグッズを持っていたという

男性の持ち物には銀行名が入ったステッカーが貼ってあり、メモ帳やペンなどのグッズも持っていたことから男性を信じ込んでいた女性。約2年半で13回にわたり2,000万円以上の現金を手渡した。しかし、ある日…。

女性:
連絡が取れなくなって電話しても出ないし、LINEもブロックされ、着信も拒否された

不審に思った女性は男性のことを知っているという人を尋ねた。すると…。

女性:
知り合いに「銀行員なんですよね?」って聞いたら「違いますよ」って。「実は詐欺師ですよ」と言われて…ショックで声も出ない

鹿児島テレビの記者が銀行に問い合わせたところ…
鹿児島テレビの記者が銀行に問い合わせたところ…

男性が勤めていると話した銀行に鹿児島テレビの記者が問い合わせたところ、同じ名前の人物は在籍していなかった。同様の事例が複数報告されていたこともあり、この銀行でもウェブサイトなどで注意を呼びかけている。

「アプリが広がるほど紛れ込む犯罪が増える」

鹿児島県警によると「結婚詐欺」としての統計はないものの、SNSやアプリでの出会いをきっかけとした詐欺に関する相談は、2021年1月以降、十数件確認されている。

詐欺事件にくわしい心理学の専門家はその背景を次のように話す。

立正大学 西田公昭教授:
婚活アプリができる前までは、ごく狭いコミュニティでの出会いしかなかった。なかなかチャンスが恵まれなかったが、婚活アプリができたおかげで幅広くマッチングが可能になった。広がれば広がるほどその中に紛れ込む犯罪が当然増えてきている

その上で西田教授は、アプリなどを介した出会いで次の点に注意を促す。

立正大学 西田公昭教授:
アプリの出会いだと自分に都合の悪い情報は隠すし、うそをつくという可能性を見ていないといけない。普通の恋愛のような感じで始めてはダメ。ちゃんと相手を確かめることから始めないといけない。被害に遭っている人は大抵経験がなくて「初めてでした」みたいな人が多い。そこにある“わな”として、なりすましがいかに簡単であるかということに気づきにくい。相手のいいところばかりを見て信じようと思う、信じたい気持ちもある。なぜかと言うと結婚したいから

今回取材に応じた女性は「とにかくお金を返してほしい。今までの被害者に、本当に謝罪しろと言いたい。こんなに人を苦しめて生活していくなんて絶対に許せない」と語った。

結婚詐欺のような犯罪は恋愛感情につけ込むことから、被害者も恥ずかしさや諦めで泣き寝入りするケースもあるという。女性は警察に被害届を提出していて、現在捜査が進められている。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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