福島第一原発の処理水の海洋放出を巡り、中国が日本産の水産物を全面禁輸とするなど反発を強める中、福岡でもさまざまな影響が出始めている。

「国産の上質な魚を国内で消費したい」

福岡市中央区の飲食店「ごはんや飯すけ」は、九州を中心とした全国各地の旬の魚を刺し身や煮魚などで提供している。ここにも想定外の影響が…。

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ごはんや飯すけ・三宅悠介代表:
これが島根のアカムツですね。高級魚でスーパーにも並ばない

この日の仕入れは、玄界灘のカマスに島根のアカムツ、そして長崎のイシダイだ。アカムツは「白身のトロ」とも呼ばれる高級魚で、アカムツを使ったこの日の定食は3,800円。
これまで、なかなか入ってこなかった高級魚が店に並ぶようになったのは、中国の禁輸措置が影響している。

ごはんや飯すけ・三宅悠介代表:
アカムツとかアマダイとかタチウオとかも、中国とか香港とかが「高値でいいものを持って行く」という話は聞いていた。ずっと高くて、うちもあまり取り扱いができない状況が続いていて…

この店を経営する三宅さんは、国産の上質な魚を国内で消費したいと考えている。国外向けに価格が上がり続けていた中、今回の中国の禁輸措置を機に、国内での魚の消費拡大につながればと話す。

ごはんや飯すけ・三宅悠介代表:
国内のいい魚を皆さんに料理して提供したいというのが本音ですね。国内にもっと魚が流通して、消費量が増えればいいなと思いますね

水産の売り上げが6~7割ダウン

一方、深刻なのが輸出業者への影響だ。福岡市博多区の「九州農水産物直販」は、2015年の設立以来、香港、中国、台湾などのアジア各国に九州の農水産物などを輸出してきた。

九州農水産物直販・小田保社長:
ひと月に800万円から1,000万円が大体、水産の売り上げなんですが、今年度に入ってから月に200万から300万というふうに、大体6~7割ダウンというような状況になっています

この会社では、大分産のブリカマや広島産のカキなどを主に香港に輸出している。

香港政府は、日本の10都県からの水産物の輸入を禁止していて、この中に福岡は含まれていないが、香港人スタッフによると「日本産」そのものへの不安が広がっていると話す。

九州農水産物直販のチャン・シセイさん:
香港のメディアでは“処理水”ではなくて、“汚染水”って言っているので、香港の市民は毎日それを見てネガティブなイメージがある。多分、しばらく香港では日本の水産物への懸念が続くと思う

福岡から近い中国・香港は巨大な需要

日本の水産物の2022年の輸出額を見ると、1位は中国で871億円、2位は香港の754億円で合わせて全体の4割以上を占めていて、禁輸措置は日本経済にとって大きな打撃となっている。

会社では、今後、シンガポールやタイなどに新たな販路を築いていく考えだが、やはり福岡から距離的にも近い中国、香港の市場はメリットが大きいというのが実情のようだ。

九州農水産物直販・小田保社長:
そこに巨大な需要があるわけですから、中国、香港の需要というのは、その生鮮品を扱う者にとっては、もう、それは最大の魅力です。2024年2月10日の春節に向けて、需要はさらに上がっていきますので、それに間に合うように落としどころを見つけて、輸入が解禁になるように政府には進めていってほしい

影響が広がり続けている処理水放出に伴う中国の禁輸措置。日本の水産資源と関連する事業をいかにして守っていくか、外交戦略と同時進行で実効性の高い施策が求められている。

(テレビ西日本)

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