800種類を超える生き物を展示

東日本大震災で9割以上の生き物が死滅。絶望から復活を遂げた福島県いわき市の水族館で、生き物を見守り続ける一人の獣医を追った。

全国に誇る「常磐もの」が自慢の福島・いわき市小名浜。
港ににぎわいを取り戻そうと整備された「アクアマリンパーク」には、福島県の内外から年間180万人の観光客が訪れる。

800種類を超える生き物が展示されている「アクアマリンふくしま」。
2000年にオープンし、飼育が難しいとされるサンマやメヒカリの展示に、世界で初めて成功した。
生き物との触れ合い体験も人気を呼び、子どもたちの「自然への扉」を開いてきた。

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アクアマリンふくしま 獣医 平治隆さん:
誰(生き物)に(薬を)何錠あげるとか決めてあるので、僕じゃなくてもわかるようにしてあるんです

獣医の平治隆さん。
開館から20年、生き物たちの健康を守っている。

アクアマリンふくしま 獣医 平治隆さん:
9割方は飼育係なんですけれども。この子は、昔はベトッと寝られなくて、頭しかつけられなかったりしたんですけどね

家族か動物か…9年以上続く自問自答

トドやアザラシなどの飼育も担当する平さん。9年以上、自問自答し続けていることがある。

2011年3月11日、あの日小名浜を襲った大津波。
建物に大きな被害はなかったものの、全館で停電。
水の循環などができなくなり、9割以上の生き物が死んだ。

千葉県の実家に家族を避難させた平さんは、戻りのガソリンが手に入らず、生き残ったトドたちを別の水族館に移す作業に立ち会うことができなかった。

アクアマリンふくしま 獣医 平治隆さん:
(水族館の)獣医ってこともあったので、“その時”に家族を避難させることを優先してよかったのか、ここで動物たちをずっと見てる方がよかったのかっていうのは、いまだに結論が出ないですよね

震災と比べて「前向きに考えられる休館」

その後、懸命な復旧作業が行われ、震災から4カ月で再オープンを果たす。
しかし、福島第一原発事故の風評もあって思うように客足は戻らず、震災前の6割ほどにとどまる年が続いていた。

そして、開館20周年の準備を進めていた2020年…。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、閉ざされたゲート。
水族館から人々の笑顔や歓声が消えた。

しかし、平さんは「あの時とは状況は全く違う」と話す。

アクアマリンふくしま 獣医 平治隆さん:
震災の時は、もうどうしようもないという感じだったですけど。生き物を殺す可能性がある…(停電で)電気が来なくなるとか、水がなくなるとか、そういったところまでは、今のところまだ考えなくても済むということでは、(震災と比べて)前向きに考えられる休館だった

感染対策を行い1カ月ぶりの営業再開

2020年5月18日。アクアマリンふくしまは、1カ月ぶりに営業を再開。
感染予防のため、「密」を生みやすい体験イベントや餌やりの解説などは見合わせている。

それでも…。

訪れた人:
ゴマフアザラシとクラカケアザラシです。ポッチャリとしているところがかわいい

訪れた人:
派手な動物はいないですけど、こうやって実際に海に触れて体験できるところがいいかなと思います

アクアマリンふくしま 獣医 平治隆さん:
一番は、(生き物を)病気にしないってことですよね。病気にならなければ、獣医としての私の仕事は全くいらなくなるわけで、私がいないのが一番いいのかなと思いますけど

「生き物の健康を守り、その魅力を多くの人に感じてもらいたい」
幾多の困難の中、大切に育まれた多くの命が、きょうも訪れた人たちを優しく包み込む。

(福島テレビ)